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「もし、あの瞬間をやり直せるなら」
そんな後悔から生まれた短編です。
“償い”とは何なのかを、自分なりに考えながら書きました。
雨の夜。
電車内。
会社員の男・真司(35)は、
酔った男に絡まれていた。
「さっきから舌打ちしてんじゃねぇよ」
疲れていた。
仕事も家庭も限界だった。
最初は無視していた真司も、
胸ぐらを掴まれた瞬間、
ポケットの折りたたみナイフを出してしまう。
次の瞬間。
刺していた。
車内の悲鳴。
血。
倒れる男。
真司はその場で崩れる。
―――
取調室。
真司は震えながら繰り返す。
「殺したかったわけじゃないんです…」
「あんなつもりじゃ…」
深夜。
護送の待機中、
突然停電する。
そして、
誰もいないはずの部屋に、
黒いコートの男が座っている。
年齢不詳。
静かな声。
「後悔してるか?」
真司はうなずく。
男は言う。
「なら、一日やる」
「24時間以内に、お前が“誰かに殺されれば”」
「時間は刺す前に戻る」
真司は顔を上げる。
「……本当に?」
「ただし、自殺は無効だ」
男は笑う。
「人は、自分では裁けない」
停電が戻る。
気づけば男はいない。
―――
翌朝。
真司は駅のホームに立っていた。
事件当日の朝。
手には、まだ血の付いていないナイフ。
時計を見る。
【残り23時間52分】
真司は泣き崩れる。
「戻った……!」
―――
最初は簡単だと思っていた。
誰かを怒らせればいい。
―――
通勤電車。
真司はわざと大柄な男にぶつかる。
「なんだテメェ」
真司は叫ぶ。
「殺せよ!!」
車内、静まり返る。
男は顔をしかめる。
「……気持ち悪」
別の乗客が駅員を呼ぶ。
真司は逃げる。
―――
昼。
反社事務所の前。
真司はドアを蹴る。
「おい!!」
「誰でもいいから俺を殺せ!!」
中の男たちは呆然。
リーダー格がため息をつく。
「最近こういう動画配信系多いから」
「関わるな」
スマホを向けられる。
真司は追い出される。
―――
夕方。
コンビニ。
闇バイトの強盗に遭遇。
刃物を持った若者。
客たちは悲鳴。
真司は逆に近づく。
「刺せ!!」
「早く!!」
若者は混乱する。
「は……?」
「いいから!!」
真司は若者のナイフを自分の胸へ押し当てる。
だが若者は怯え、
ナイフを捨てて逃げる。
残るのは、
床に転がる刃物と、
周囲のドン引きした視線。
―――
夜。
残り58分。
真司はようやく、
被害者の住所へ向かう。
古いマンション。
ドア横には、
小さな表札。
【高梨】
真司は震える手でインターホンを押す。
出てきたのは、
被害者の兄。
真司を見る。
真司は土下座する。
「お願いします」
「俺を殺してください」
兄は顔をしかめる。
真司は全部話す。
時間が戻ったこと。
殺されれば、
弟が死なずに済むこと。
兄は黙って聞いている。
真司は包丁を差し出す。
「お願いします……」
「俺が死ねば……」
兄はゆっくり包丁を取る。
真司は目を閉じる。
涙が落ちる。
これで終わる。
やり直せる。
すると。
カラン。
包丁が床に落ちる音。
兄が静かに言う。
「お前みたいになるくらいなら」
「弟に会えなくてもいい」
真司、顔を上げる。
兄:
「人を殺した奴が」
「“殺されて救われる”理由を作るな」
時計。
【00:00】
同時に、
真司のスマホが鳴る。
ニュース速報。
『○○駅で男性刺殺事件』
『通勤電車内トラブルか』
真司の呼吸が止まる。
世界が、
確定した。
―――
マンションを出た真司。
雨。
遠くの横断歩道。
黒いコートの男が立っている。
男は少し笑う。
「残念だったな」
真司:
「……どうすればよかったんだ」
男は答える。
「さあな」
「でもお前、
“死ぬこと”ばかり考えてた」
青信号。
人波の中へ男は消える。
真司は、
雨の中に立ち尽くす。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
「死ねば解決するのか?」というテーマを、自分なりに“世にも奇妙な物語”風の空気感で描いてみました。
少しでも印象に残ってもらえたら嬉しいです。




