6/7
少女の心が語るエピローグ。
最後に見たのは、彼の泣きそうな笑顔だった。
あの日と同じように、不器用で、優しくて、
私の名前をそっと呼ぶ声。
あれから何度も思い出した。
彼と見上げた夜空や、こっそり笑い合った秘密や、
触れられなかった指先が少し震えたこと。
私は、消えたわけじゃない。
風のように、空気の隙間に潜んでいるだけ。
彼が悲しいとき、心の奥がきゅっと痛む。
彼が笑ったとき、胸のどこかがくすぐったくなる。
私はもう言葉を持たないけれど、
彼が日々選ぶ「優しさ」に宿っていられる。
彼が夢を見るたびに、
物語の端っこでそっと灯りを点ける。
迷わないように。
ひとりじゃないと気づけるように。
もし彼がいつか、
誰かと出会い、恋をして笑っていたとしても、
私はそれを妬まない。
彼が幸せでいることこそが、
私が望んだ未来だから。
それでもときどき、思う。
どこかで、もう一度。
あの星降る夜のように。
生きていく彼の背中を押しながら
私は永遠に、彼の心の奥にいる。
会いたいなんて言わない。
触れてなどお願いしない。
ただ、知っていてほしい。
私は彼の物語に、今もそっと寄り添っている。
彼が前を向くたびに、静かに羽ばたいている。
ずっと。




