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借金まみれ剣聖は、パーティーを追放されそうでされない~俺のクレカはとっくに限度額だ。リボ払いにしても、もう遅い!!~

作者: 霧原いと
掲載日:2025/09/21

「剣士レイクよ! 

 お前には今日でこの勇者パーティーをやめてもらう!!」


 町の酒場の一角で、勇者クリスの怒声が響いた。


「な、何故だ!?

 俺は世界一の剣士で、これまでの戦いにだって貢献してきたはずだ!」


 突然の追放宣言に愕然とした剣士レイクは、必死にその理由を問う。


「本当に……。

 本当に理由が分からないのか!?」


 勇者の後ろでは、二人の会話を仲間たちが見守っている。


 怒りの表情なのが、大戦士のカンサイ。

 呆れの表情なのが、大魔法使いのマジョリーナ。

 心配そうな表情なのが、大聖女のキラリである。


「はっきり言わないと分からないようだな」


 勇者はレイクの胸ぐらを乱暴につかんで、詰めよった。


「お前が……。

 仲間をマルチに勧誘したからだよおおおおっ!!!」


「違う!!!

  ネットワークビジネスだ!!!!」


「一緒だわ、この馬鹿!!!!」


 やれやれと頭を押さえるマジョリーナの隣をすり抜けて、聖女キラリがレイクを庇うように前へ出た。


「勇者さま、お待ちください!

 このビジネスは先進的なスキームで最高の未来にアジェンダする……」


「お前も洗脳済みかよ!

 なんでこのパーティーは知的負債二人も抱えてんだよ!!」


「ええ加減にせい!!」


 今まで黙っていた戦士カンサイも、堪えきれずに前へと進み出る。


「勇者パーティー宛に督促状が届いとるんや!

 給料差し押さえ命令ってなんやねん!

 自分、いったい幾ら借金しとるんや!!」


「リーフ会員からフラワー会員になるために、毎月100セットの奇跡の香水を売る必要があるんだ!!」


「せやから! 売れてへんから、自分で買い取って借金地獄なんやろが! 

 お馬鹿!!」


「俺のクレジットカードはとっくに限度額だ!

 リボ払いにしても、もう遅い!」


「やかましいわ!!」


「大丈夫です、大戦士さま!

 私のようにフルーツ会員まで昇格すれば、インセンティブで借金なんてすぐにペイ……」


「キラリは無駄に商才見せるのやめーや!

 だから、この馬鹿が勘違いするんや!!」


「はいはい、もう止め!」


 パンパン! と手を叩く音が響く。


 収拾がつかなくなってきた大騒ぎに、大魔法使いマジョリーナがようやく立ち上がったのだ。


「まず、レイク! 

 貴方は問題を起こすの、これで何回目なの?」


「えっ!? 2回……いや、3回目……?」


「どれのこと言うてるんや」


「俺の知る限り、マルチはこれで5回目。

 あとは情報商材に引っ掛かったのが4回、他には魔石掘りの副業、魔獣毛皮転売、それから幸福の壺……」


「勇者さま!

 あの幸福の壺の効果は本物でしたよ!!」


「ややこしくなるから、キラリはちょっと黙っとき!!」


「ええっ、そんなに失敗してた!?

 でも、どれも頑張れば、成功するチャンスは……!」


 ――バァン!!


 マジョリーナが冷たい笑顔を浮かべたまま、酒屋の机を殴り付けた。全員黙った。

 このパーティーで、彼女に逆らえる人間はいない。


「お、だ、ま、り!」


 マジョリーナは、腕組みをしたまま声を張り上げる。


「レイク! キラリ! 正座!!」


「ひいっ……!?」

「はいっ……!!」


 恐怖に促されて、レイクとキラリはその場で床に正座する。


「クリスも正座!!」


「なんで俺まで……!?」


「ついでよ!」


「理不尽!!」


 しかしマジョリーナに逆らうのが怖いので、クリスもそのまま正座した。


「いい? 私たちはね、勇者パーティーなのよ?

 ウィーアー勇者パーティー! オーケイ?」


「「「イエス!!」」」


「それが、やれ副業だ、やれ借金だと……。

 体裁が悪いったらありゃしない!!」


「め、面目ない……」


「次に問題を起こしたら、レイクはパーティー追放だって決めていたはずよ!

 ねえ、クリス?」


「そ、そうだそうだー!」


(あかん、完全に勇者が三下みたいになっとる……)


「つまり、これでレイクはパーティー脱退。慈悲は無し。

 それで良いわよね?」


 マジョリーナがそう言い放つと、レイクもキラリも、クリスまでもが黙り込んだ。


「……さあ、私たちはレイクなしでダンジョン攻略するための、作戦会議でも始めましょ!」


 マジョリーナが会話を促すような言葉をかけても、誰も話さない。


「……」


長く続いた沈黙の後、そろそろと挙手したのは勇者クリスだった。


「あ、あの、マジョリーナ……?」


「なにかしら、クリス?」


「確かにレイクは何回言っても学習しないし、俺もほとほと怒り心頭なんだが……。

 しかし考えてみれば、諸悪の根元は、詐偽まがいのマルチ組織の方じゃないだろうか!」


「……つまり?」


「つまり、その……。

 詐偽組織を叩き潰せば、今回の失態も、帳消しになるんじゃないだろうか……!!」


「クリス!!」


 クリスの言葉に、レイクが目を輝かせながら顔をあげた。


「なんという慈悲深いお心でしょう、勇者さま!!」


 キラリも感動したように目を潤ませている。


「「……」」


一方、マジョリーナとカンサイは、その一連のやりとりを、生温かい目で見つめている。


「そうと決まったら、行こう! 今すぐ行こう!!」


「うおおお、ありがとう、クリス!!

 やはり持つべきものは最高の仲間だ……!」


「私もお供いたしますわ!

 幹部であるシャイン会員の集会所も知っています!」


「でかした、キラリ!!」


 三人は、わちゃわちゃと酒場を出ていった。


 後に残されたマジョリーナとカンサイは、深いため息をつきながら、互いに肩をすくめあう。


「よくない、よくないでぇ。

 このやり取り、何回目やねん!」


「結局、クリスが甘やかすから、レイクもキラリも学習しないのよ!」


「借金は身内が肩代わりしても、繰り返されることが殆どや。

 みんなも、覚えといてな。

 大事な相手ほど、ときには突き放すことも必要なんやで」


「……誰に話してるのよ、カンサイ」


「なはは、ちょっとな!」


 そのとき、一度閉まったはずの酒場の扉がゆっくりと開いた。

 顔をひょっこり覗かせたのは、大聖女のキラリだ。


「あの……、お二人も、ご一緒してくださいませんか?

 やっぱり5人パーティーじゃないと、落ち着かなくって。それに、」


 キラリは清らかな笑みを浮かべながら告げた。


「神は仰っています。あの団体、相当に”貯め込んでいる”と」


「「……!!」」


 その言葉を聞いて、マジョリーナとカンサイの目の色が変わる。

 彼らは杖を持ち、グローブを握り締めた。


「はは、やっぱり仲間は大事やからなぁ! わいが助けてやらんとなぁ!!」


「さあ行くわよ!! 富も名誉も、全部回収してくれるわ!!」


「わーいっ! これでみんな、一緒ですねー!!」


 そうして、勇者パーティーは全員が酒場を後にした。


 彼らは後に魔王から世界を救うことになるのだが、それはまた別の話である。

この世界にはクレカもリボ払いもあるようです。

多分、魔法で、なんかいい感じにしてシステム構築しているんだと思います。

FXや仮想通貨も出そうとしたけど、流石に作者が正気に戻って思いとどまったようです。


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― 新着の感想 ―
なるほど…。引っかかる方が悪いのではなく、引っかかった事を無くせばいいのですね♫ ついでに、勿体無いからいろいろ有効活用してあげると… (^^)
なんて社会勉強になるお話! マジョリーナ姐さんがいないとどうなるんだ、この勇者パーティは(笑)。
プロローグ拝読させて頂きました。マジョリーナみたいな強気な女性が大好きなので沼りました。続きも読みたいのでブクマ、評価もさせて頂きました。これからも執筆頑張ってください!
2025/10/04 09:24 退会済み
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