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⚜️ 43:晒し首

「村ガ見エマシタ!」


 フィオリ村を出て5時間も経った頃だろうか、やっとのことでピエトラ村が見えてきた。


「ん……? 村の入口が物々しいな……モエ、何が見える?」


「門の両端に、2人の大男。そして門には、マナトゥムの頭が置かれています」


「マッ、マナトゥムの頭だと……!?」


 モエの言葉に、私たちの足取りが早くなる。村の入口に辿り着くと、モエの言う通り、青目のマナトゥムの頭が晒されていた。少し斜めに傾いたその頭は、光を無くした青いひとつ目のせいか、壊れたオモチャのように見える。



「お、王家の紋章……? あなたがたは、アーシェル様ご一行でございますか……?」


 門を守るように立っていた男たちは、馬車の紋章を見てその場に膝をついた。


「ああ、そうだ。そ……それより、そのマナトゥムの頭はどうしたんだ……?」


「や、やはり、こいつもマナトゥムなのですか……? 5日前だったでしょうか、こいつはたった一体で、我がピエトラ村に襲いかかったのです。そこで、村の若者が奴を退治しました。——ここに首を晒しているのは、我らに歯向かうなという意思表明です」


 私たちはマナトゥムを退治したというその言葉に、顔を見合わせた。ジルハートの一撃を耐えたマナトゥムを、倒した者がいるというのか。


「ところで、アーシェル様。私たちは、心からあなた方を歓迎したいと思っております。——しかし、気になることが一つ。そこにいるのはもしや、マナトゥムでは……?」


 男の一人が、モエを指さして言った。


「あ、ああ……そうだ。だがこいつは僕が作ったマナトゥムで、マナを抜き取って不動化させることが出来る。——リリア、頼めるか」


 私は頷いてモエの胸に手を当てると、モエはジルハートにぐったりと倒れ込んだ。ジルハートは動かなくなったモエを、馬車に運び入れていく。


 モエをアーシェルが作ったという嘘は、エイルが考えたものだ。アーシェルは嘘はつきたくないと駄々をこねたが、この状況を見るとエイルの提案は正しかったように思える。



***



「あの、青目……ああ、僕たちはあのマナトゥムを青目と呼んでいるんだ。奴をどうやって倒したんだ?」


 私たちはいま、ピエトラの集会所に来ている。もてなしは不要とアーシェルは伝えたが、周りの賑やかさをみると、何かしらの用意をしてくれているように思える。


「私どもの村には、アルクとイリスという双子の使い手がおります。彼らが力を合わせて、青目とやらを倒してくれました」


「アルクとイリス……」


「——知っているのか? エイル」


「ええ……白祈院の魔法研究会に、何度か顔を出してくれていた方々です。お二方とも、聡明かつ正義感の強い男性と女性です」


「ほう……そうなのか。それにしても、あの青目を倒すとは凄いな。是非、会って話をしたい。彼らを呼んでもらうことは出来るだろうか?」


 アーシェルのその言葉に、ピエトラの村人たちは一様に表情を暗くした。


「そ……それが、そのアルクたちは……」


「ま、待て、アルクだけでも呼んでくる。——アーシェル様、しばしお待ちを」


 意見を述べようとした若い男を抑え、隣の男が席をたった。


 アルクだけを呼んでくる……? 一体、どういうことなのだろうか。



***



「私がアルクと申します。この度は、我がピエトラの村にも足をお運びいただき、深く感謝申し上げます」


 筋骨隆々の身体に包帯を巻いた男が、アーシェルの前で(こうべ)を垂れた。歳は20代半ばくらいだろうか。


「ああ、療養中だったのか……それは、申し訳ないことをした。——もしかして、イリスという女性も怪我を負っているのか?」


「いえ……イリスは……イリスは今回の戦いで、命を落としました」


 それを聞いたアルフィナは、ハッと大きく息を吸い、両手で口を抑えた。


「イ、イリスさんが……?」


「——白祈院のエイル様ですね。イリスは魔法研究会に行くのを、いつも楽しみにしておりました。不得手だった回復系の魔法も、少しずつ使えるようになった矢先だというのに……」


 アルクは肩を震わせながら、そう言った。固く握りしめた拳に、大粒の涙がポタポタと落ちる。



「僕たちは今回、フィオリ村から6名の者をここに連れてきた。フィオリ村もマナトゥムに襲われて、この6名以外は全員殺されてしまったからだ」


 ピエトラの村人たちは、瞬きを忘れたようにアーシェルを見た。フィオリ村に起きた惨劇を、今知ったのだろう。


「もしこの村にアルクとイリスがいなかったら、同じような惨劇が起きていたに違いない。キミたちがどう戦ったのかを、僕は知らない。だ……だがきっと、命をかけて村のために戦ってくれたのだと思う」


 アーシェルの肩が震えている。だが、しっかりと伝えなくてはいけない。そんなアーシェルの気持ちは、声に表れていた。


「ぼ……僕がいくらキミたちに敬意を表しても、彼女の命は返ってこない……だけど言わせて欲しい、僕は一人の人間として、仲間を守ったキミたちに最大の敬意を表したいと」


 アーシェルは、まっすぐにピエトラの村民たちを見て言った。


 目にいっぱいの涙を溢れさせながら。

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