⚜️ 42:白磁
◤ 惨劇のあったフィオリ村を出発し、次の村ピエトラに向かうアーシェル一行。トラブル無く、無事に辿り着くことは出来るのだろうか…… ◢
先頭をエイルとアルフィナ、続いてジルハートとモエ、その後ろを私とアーシェルで列をなしている。さらに後ろには、フィオリ村の住人と2台の馬車が続く。
「うわー、高い! こんな高い肩車は初めて!」
ジルハートに肩車をされたルオルが声を上げる。
「ただの遊びじゃないぞ。悪いやつを見つけたら、すぐに俺たちに知らせるんだ。——分かったな、ルオル」
ルオルは「うん!」と、朗らかに返事をした。
「今度、皆にも話そうと思っているんだが、先にキミに聞かせておこうと思う。僕が現時点で把握している、マナトゥムのことだ」
アーシェルは大あくびをしながらそう言った。きっと、寝る時間も惜しんでマナトゥムについて調べているのだろう。
「まず、リリア。キミはどこまでマナトゥムのことを知っている? 白磁くらいは分かるのか?」
「い……一応、その辺りはお父様に聞いたかな。いにしえの文献にも載っている、前世界を滅ぼしたマナトゥムのことだよね? ——そう言えば、どうしてそのマナトゥムは白磁って呼ばれてるの?」
「名前の通り、真っ白な顔を持っていたからだ。僕も一度だけ見たことがあるが、白い陶磁器のように美しく、とても整った顔をしていた。それ故、冷酷に見えるというのは否めないがな。——そう言えば、モエの顔も真っ白だ。当時のエルデリア人は何らかの意図があって、顔を真っ白にしていたのかもしれないな」
そのモエは、前を行くルオルたちと楽しげに談笑している。あのモエの末裔が、世界を滅ぼしてしまったというのか……
「白磁って、実際にどこかで見つかっているの?」
「ああ。ここから遥か北方に、ノルズヘイムという地方がある。そこで大地震が起きた際、地下から大量の白磁が見つかったそうだ。だが、原型をとどめていたものは殆どなく、一部を除いて殆どが腐食していたらしい。——実は旧型マナトゥム同様、僕はこいつの身体も欲しかったんだ。流石にそれを言ったら、父上に叱られたけどね」
アーシェルはそう言ってクスクスと笑った。マナトゥムに関しては、本当に貪欲な人だ。
「そして、古の文献にはこう記されている——」
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白磁の仮面来たりて、命の灯火を摘む。
この地の息吹を啜り尽くし、創造主を喰らいし神々は、
自らの飢えによりて、星霜の化石と成り果てん。
人が神を創りし果て、待つは沈黙のみ。
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「マナトゥムが生みの親の人間を滅ぼしたって話だ。“この地の息吹”とは、マナのことを差していると言われている。マナを与えられずとも、自身で取り入れることが出来たらしいからな」
「も、もしかしてアーシェル、“創造主を喰らいし神々”って部分……」
「ああ……僕も今までは、白磁のことだけを差していると思っていた。だがもしかすると、ここに関しては先日戦った青目のことかもしれん」
そう言って、アーシェルは難しい顔で腕を組んだ。
「そして昨夜、僕は新たな発見をした。モエの部品の多くに、2045という数字が振られているんだ。——この番号、キミは何だと思う?」
「うーん……製造番号や、製造工場の番号とか?」
「僕も最初は同じように思っていた。だが、青目の部品と見比べていて気付いたんだ。——これはきっと、エルデリア歴だと」
「エルデリアの年号ってこと……?」
「そうだ。そして恐ろしいことに、青目に振られた番号は2047。——分かるか? 恐ろしいことの意味が」
「モエが作られてから、たった2年しか経っていないってこと……?」
「そうだ。しかも、青目が言った『マナトゥムによって作られたマナトゥム』という言葉が本当なら、青目は白磁によって作られた可能性が高い。となると……白磁はその間の2046年辺りに作られたということになる。——恐ろしくないか? 進化の速度が……?」
私たちの世界でも、シンギュラリティが起こると恐ろしい速度で技術が進化すると言われている。
前世界のエルデリア人は、マナトゥムの驚くべき進化のスピードを見誤り、滅んでしまったのかもしれない。




