⚜️ 14:凱旋
セリュージュ家の従者と共に、馬車で我が家へと戻ってきた。私は今、先に帰宅していたリアノスの部屋にいる。
「リリア、この度は本当によくやってくれた。最後の魔法なんて、私でも放てなかっただろう。本当に、想像以上だった……合格おめでとう。そして、ありがとう」
「自分でも驚いた……私があれほどの力を出せるだなんて……」
「それは、私の娘だからな。当然と言えば、当然だ。——ところで、上手くやり過ごせたか? 地球にいた梨里杏ではなく、リリア゠セリュージュとして」
「私……ジルハートに、お父様が私の魔力を開放してくれたと嘘をついたの……そしたらジルハートは、そのせいで私の記憶が無くなったんだって思い込んでしまって。そのおかげで、上手く乗り切れたのかなって思ってるけど……」
「なっ……なんていい流れなんだ……! お前はともかく、ジルハートもやってくれたな……いっ、いいぞ!! それでは早速、合格祝いと誕生日祝いをしよう! ディセル! 食事の用意を頼む!!」
リアノスはドアの向こうにいる、ディセルという側近に声をかけた。銀髪に丸メガネをかけた、とても人の良さそうなおじさんだ。
***
リアノスの部屋に、続々と料理が運ばれてくる。どうやら、食事もこの部屋でとるようだ。
「この部屋につくのはノラだけよい。深夜での移動等々、本当にご苦労だった。他のみんなは、今日は休んでくれ」
そう言われたディセルは、少し寂しそうな表情で頭を下げ、部屋を出ていった。代わりに部屋に入ってきたのは、ノラと呼ばれた老婆だった。
「——本当は彼らも、お前を祝福したいんだ。ディセルなんて、お前が合格したことを聞いて、泣いて喜んでいたからな。お前に伝えるべきことを全て伝えたら、彼らとも改めて祝う場を設けよう」
試験の時は死をも覚悟したが、それ以外は案外温かい世界なのかもしれない。リアノスも今、試験の合格と共に、私の誕生日も祝おうとしてくれている。
「さあ、お祝いのワインだ。ここに来た時、ワイングラスを持っていただろう? 梨奈と乾杯でもしていたのか?」
「ううん……本当は友達と乾杯する予定だったんだけど、なぜか一人になっちゃって……」
「そ、そうか……とにかく、二十歳の誕生日と今日の合格を祝おう! 乾杯!」
私とリアノスのワイングラスが、カチンと音を奏でた。
まっ……まずっ……
ワインってこんな味なの……? あまり甘くない、ぶどうジュースのようなものだと思ってたのに……
「そうそう、リリア。エルデリアについては、どのくらい知っている? 梨奈から少しくらいは話を聞いていたか?」
「ううん、全く……エルデリアについても、お父様についても、何一つ知らなかった。私のお父さんは、幼い頃に亡くなったって聞いていたから」
私がそう答えた時、ノラがジュースのようなものを私の前に置いた。彼女に視線をやると、小さなウインクを返してきた。
「そうか……なおさら、昨日こちらにやってきた時は驚いたことだろう……それはすまなかったな……」
リアノスはそう言って、私に頭を下げた。
それより、ノラというお婆さんはこの場にいて大丈夫なのだろうか。そう思いながら、彼女が持ってきてくれた飲み物に口をつけた。
美味しい……
地球で口にしたもので近いのは、マンゴーだろうか。どこまでも甘いのに、スッと口を抜ける清涼感。地球では口にしたことがない飲み物だ。
「どうです、リリア様? お口に合いますか?」
私は「とても」と返事をした。きっと、ワインが私の口に合わなかったことを、ノラはすぐに察したのだろう。
「そうだ、先にノラのことを紹介しておこう。梨奈がもう一人のリリアを産んだ時、引き上げてくれたのが、ここにいるノラだ」
「ちょ、ちょっと待って……お母さんは、エルデリアでも子どもを産んでいたってこと!?」
「ああ、そうだ。——それでは、そろそろ話していこうか。私と梨奈の出逢い、そしてお前たちがどのようにして生まれたかを」
リアノスはそう言うと、残っていたワインを一気に飲み干した。




