表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/47

☾ 11:萌への告白

 萌に会うために、彼女との待ち合わせ場所に向かっている。 


 コスプレと呼ばれた服については、なんとか誤魔化せると思う。でも、赤い服の男を殴り飛ばした件は、どう説明すればいいだろう。格闘技の技術なんて、一朝一夕で身につくものじゃない。「実はこっそり練習してたの!」なんてのが、通用するとも思えないし。


 結局いい考えが浮かばないまま、待ち合わせ場所のレストランに着いてしまった。


「梨里杏!」


 小柄な女性が手を振って声をかけくれた。萌は写真で見ていた通り、とても愛らしい顔をしていた。


「ご、ごめんね、全然返事出来なくて」


「ううん、もういいよ。誕生日プレゼントとは別に、沖縄土産も持ってきたよ。さ、入ろう!」


 電話では少し怒っていたように感じた萌だったが、今は落ち着いたようだ。萌は、カラッとした笑顔でそう言ってくれた。


 私たちが入ったのは、広くて明るい、清潔感のあるレストランだった。こちらでは、ファミリーレストランと呼ばれているそうだ。テーブルひとつひとつに、大きなスマホのようなものが置いてある。どうやら、これで注文をするらしい。


「ホントは、もうちょっと雰囲気のあるお店がいいかなって思ったんだけどね。今日は話す内容的に、ガヤガヤしてる方がいいかなと思って」


 萌はそう言って、ニコッと微笑んだ。



***



 タブレットとやらで注文を終えて料理を待っていると、萌が例の動画を見せてきた。


「これ、ホント凄いよね。これが梨里杏だって気付いた時、めっちゃ驚いたもん。で、——やっぱ、使ったんでしょ?」


 そう言うと萌は顔を近づけて、小声で言った。「魔法を」と。


 い、いま……魔法って言った……? もしかして梨里杏は、萌に魔法を使えることを話していた……!?


「ご、ごめん萌……も、もう一度言ってくれる……?」


「もう……! 大きな声で言えないことって、分かってるくせに」


 萌は再び顔を近づけて言った。


「魔法を使ったんでしょ? 青い服の男の子が危ないと思って」と。


 萌は冗談で言っているんじゃない。彼女の雰囲気からも、本気で聞いているんだと伺い知れる。


「ご、ごめんね、萌。変なこと聞いちゃうけど、私が言ったんだよね? その……魔法を使えるって……」


 もちろん、魔法の部分は小声で言った。


「もう、何言ってんのよ……今日の梨里杏、ちょっと変だよ? ——見せてくれたじゃない、初めて2人で泊まりにいった旅先で。飛び切り大きな花火を」



***



「えーーーっ!!」


 大声を上げた萌に、多くの客が一斉に顔を向けた。萌は恥ずかしそうに、頬を赤らめる。


「い、いままでいた梨里杏とあなたが入れ替わったって……!? ちょ、ちょっと待って! 頭の整理が追いつかないんだけど!」


 萌は小声ながらも、興奮してそう言った。頭の中でグルグルと回る思考に追いつかないのだろう、忙しなく萌の視線が動いている。


 萌は梨里杏が魔法を使えると知っても、梨里杏を受け入れてくれていた。ならば、私と梨里杏が入れ替わったと知っても、受け入れてくれるんじゃないかと打ち明けたのだ。


「っていうか、し……信じてくれるの? 私の言ってること」


「梨里杏の言うこと、信じなかったことなんて一度もないでしょ? あっ、でも……今の梨里杏は、今までの梨里杏じゃないのか……なんだか、頭がこんがらがってきちゃった……」


 萌は少し寂しそうな笑みを浮かべ、そう答えた。


「そ、そうだね、今の私はここにいた梨里杏じゃない。それと、言いにくいんだけど……前の梨里杏には多分……多分だけど、もう会えることはないと思うの」


 そう言った瞬間、萌の表情がスッと変わった。


「あっちに行った梨里杏は、もちろん知ってたんだよね……? あなたと入れ替わっちゃうって事……そして、こっちには戻れなくなるかもしれないって事……」


 萌は私から視線を逸らさず、震える声でそう聞いた。


「う、ううん……それを知っていたのは、私と私の父だけ。こっちのお母さんも知らなかったことなの……」


「そ……それって、どうなの……?」


 萌の目に、みるみると涙が溢れていく。


「あ……あまりにも酷くない……? こっちの梨里杏の気持ちとか考えなかったの……!? 梨里杏のお母さんのことだって!!」


 萌はそう言うと、テーブルをバンッと叩いて席を立ってしまった。


 テーブルの上に、私へのプレゼントと沖縄土産を残したままで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ