スキンシップが好きなのか?
なんということでしょう。
席替えをしてから幾分か経って、まさかの風が隣に来た。
「あんた凄いな」
「えへへ、頑張った」
席を色々代わってもらった子は何故か私と風をみてサムズアップしている。
なんならウインクが付いてきた。
普通嫌じゃないか?
「席が変わってしまったことは仕方ない」
過ぎたことは掘り返さない。帰ってこないからだ。
学校という空間にVARが導入されれば話は違ってくるのかもしれないけれど、そこまでの監視社会では無いので意味の無いことなのだ。
「じゃあ、くっつけるね」
「あー、そうね」
風のとこを嫌っていたら抗議のひとつはしていたかもしれないけど、そういう訳じゃないので受け入れる。
私は寛容だ。
ガッシャン!!
机同士をくっつけるにしてはやたら力の籠った引っつけ方で、机の上の教科書達が本日二度目の退場をしてしまった。
バサハザと開いて落ちていった教科書たち。
抗議の一つでもした方がいいのかもしれないと過ぎった。
「えへへ、ごめんごめん気持ちが高ぶって」
何に対してそんなに嬉しかったのかピンとこないけど、風の反対側に落ちた教科書達をわざわざ拾ってくれる。
それ自体はいいんだけど、わたしの膝の上からとる必要は無いと思うの。
結構無理な体勢で教科書達を乱雑に机に置いて風は力尽き様に私の膝に体重を乗せる。
私のイッヌが膝に乗ってきた時くらいの重さ。
「近いね」
「近いな。寄りすぎ」
くるっと向き直ってそう言うけど、今は授業中だ。
また今度にしてもらおう。
軽くパシッと叩いてから持ち上げる。
「おっと、ごめんなさい」
「嫌に素直ね」
「嫌われたくは無いからさ」
「この程度で一々嫌ってたらいつか殺しちゃいそう」
冗談交じりに笑いながら言ったのに、ガタガタと怯えられた。
「いや、アリか?」
ブツブツ言った末に何かを可決したようだ。
あまり愉快な事じゃなさそうで、私は真面目に学生らしく、務めて黒板と教師だけを見るのだった。
横からの視線はきっと、空にUFOでも飛んでいるからだろう。きっとそうだ。