【プロローグ】 その少女
空想に逃げるしかない、悲しい子のおはなし。
少女は午後の授業が好きだった。
程よい暖かさが眠気を誘うから。
少女はギターが好きだった。
掻き鳴らしている間は何も考えなくていいから。
少女は石ころが好きだった。
存在しつつも誰も気に留めないから。
少女は夜が好きだった。
自分の存在が溶けて無くなって行くから。
少女は空想が好きだった。
空想の中ではいつでも神様だったから。
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少女は一人が好きだった。
周りに気を遣わず無駄な思考をしなくて済むから。
少女は一人になりたかった。
神になりたかったから。
少女には友人がいた。
人との間に距離を作ることができなかったから。
少女は一人ではなかった。
何も考えずに生きていたから。
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今まで少女は空想の中で生きていた。
空想の中にいなければ疲れ切って死んでしまう。
これまでの少女は空想に生かされていた。
唯一の逃げ場がそこしかなかった。
少女を構成している物はまさしく空想であった。
空想が生活の一部になった時、少女は自分の存在価値を見出した。
この中には誰も入れなかった。入ることを許さなかった。
自分の心の中に侵入する存在は皆一様に敵だった。
今日も少女は空想の中に消えていった
どうしようもないよね。
逃げるしかないもんね。
卑怯な子。