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眩しき廣がる向こう側の現實  作者: 雛宇いはみ
第五章:憧憬と親近感
27/30

✧27. 残酷な天使の序開き

今回からしばらく恵美沙(えみさ)(20話から登場した和服美少女)視点となります。だから当然残酷描写は多め。


この物語はフィクションです。ドSな()のつもりで書いていますが、作者自身は別にこういう趣味ではありません。本当ですよ……。

 あたしの名前は眩河(まぶがわ)恵美沙(えみさ)。15歳で高校1年生。とても小柄で身長は144センチしかない弱くてちっぽけな女の子だ。みんな可愛いと褒めてくれてそれはいいけど、あたしは自分のちっちゃさと無力さに悔しくて仕方がない。


 こんなあたしは実はあまり誰にも言えない秘密……というより趣味? を持っている。それは……。


 「えへっ!」


 あたしは、神社の境内(けいだい)草叢(くさむら)を歩いている長さ20センチくらいの蚯蚓(ミミズ)を踏んで()(つぶ)した。


 別に虫が嫌いとか、気持ち悪いとか、そういう理由ではない。むしろすごく気持ちいい!


 「虫螻(むしけら)ども(もろ)いのね」


 自分の足によってもはや元の形が残っていない(かつ)て生き物だったものを見てあたしは満足に笑った。


 普段あたしみたいな女の子は虫が嫌いなはずだよね? でもあたしは虫が好きだ。もちろん、抱きしめたいとか可愛がりたいとか、そういう意味ではなく、踏み潰す時の感覚が好きって言う意味よ。


 虫だけでなく、鳥も栗鼠(りす)も小さくて弱くてあたしに抵抗することができなくて簡単に潰される小動物たちもだ。


 そう。あたしは小さくて弱い生き物を虐待したりメチャクチャにしたりすることが大好きなんだ。


 なんでこういう趣味になったのか明らかではなく気づいたらこうなっているけど、多分元々あたしは小さくて弱くて(いじ)められっ子だからかな。


 人間としてあたしは小さいけど、この世界にはあたしよりちっぽけな小動物がいっぱいいる。最初はただの八つ当たりで(いじ)めてみただけで、いつの間にか癖になってもうやめることなんてできない。


 実は動物ではなく、もし小さくて(いじ)めても文句言えない人間がいたらちょっと遊んでみたいけど無理だよね。あたしより小さな子供もいるけど、さすがに手出しするわけにはいかないだろう。


 それにただ大人と子供のサイズ差だけじゃ物足りない気がする。遊ぶならやっぱり手のひらサイズくらいはちょうどいいかな。


 ただ、人形みたいに意思がなくてただ固くて動けないものはあまり楽しくないね。抵抗しようとする相手の方が(いじ)甲斐(がい)があって気持ちいいから。いくら足掻(あが)いてもあたしに手応(てごた)えすることができなくてただ苦しんで(もだ)えるだけ。そんな様子を見るのは最高な気分だ。だって自分が強くて無敵と感じさせてくれるから。


 本来ただ小さくて弱い女の子のあたしが実は最強であるという感覚を味わえることは何よりの快感だ。


 日常生活であたしは時々自分なんてちっぽけで脆弱(ぜいじゃく)であると思い知らせられる場面と向き合うこともあるんだよね。例えば高いところに手が届かない時とか、自分で重たいものを運べない時とか、周りの人とぶつかっただけで突き飛ばされちゃう時とか、何より大きな相手に向かって力で勝てなくて笑われる時とか。


 そんな時ストレスが()まって何かの方法でストレス解消をしなければ何もやる気がない。だから虫や小動物との遊びはあたしにとっての救いでもある。趣味に打ち込むのは一番のストレス解消だよね。


 ただまあもちろん、あたしもこれは悪趣味だという自覚があるから、当然あまり誰にでも(おお)っぴらに言えない。家族の人にもあたしの趣味のことまだバレていないはずだ。


 ちなみにあたしの家は今あたしが立っているこの神社だ。境内(けいだい)ではいつも虫がうじゃうじゃしている。それはすごく都合がいい。あたしは今みたいにいつも家の手伝いという大義名分(たいぎめいぶん)境内(けいだい)を掃除しながら虫と遊んで(をぎゃくさつして)いるし。いつも仕事の時に着ている和服も気に()っているし。これは天職かも。……なんてね。


 家族でも知らないこんなあたしの本性(ほんしょう)だけど、ある人はよく知っている。あたしは自分の全てを彼女に明かしたから。彼女ならこんなことを知った上で理解してあたしと仲良くしてくれた。だからあたしにとってかけがえのない大切な存在になった。


 「恵美沙! ここにいたのね」


 ちょうど今その大切な彼女の声は神社の入り口から響いてきた。


 「あ、麻理味(まりみ)!」


 あたしは彼女の名前を口にした。廣實﨑(ひろみさき)麻理味(まりみ)。同い年であたしと同じ小柄だけど、身長150センチくらいあるからあたしよりましだろう。それに整った顔と可愛らしい黒髪ツインテールで周りの人の目を引くくらいものすごい美少女だ。


 そんな素敵な女の子はあたしのクラスメイトで親友……。いや、多分それだけではない。何かもっと特別な存在で……。


 「おっとっ!」


 こっちに歩いてくる途中突然目の前を飛蝗(バッタ)が飛びかかって、その瞬間麻理味はそれを鷲掴(わしづか)みにして、そしてこの場で楽しそうに指でその飛蝗(バッタ)をバラバラにして地面に投げ捨ててまた踏み(にじ)った。


 「この神社は相変わらず虫が多くて、私は好きよ」

 「そうね」


 そんなこと考える女の子はあたしと麻理味くらいだろうね。


 見ての通り、彼女はあたしと同類だ。いや、あたしより強度的だよね。


 麻理味みたいな美少女がこんな一面があるなんて誰も思いもしないだろう。もちろん、彼女自身も秘密にしている。だけどあたしだけは知っている。彼女があたしのことを知っているように。お互い2人だけの秘密をシェアしているからお互いのこと誰よりも理解している。


 そして特別な感情まで……。いや、それはあたしの方だけかもしれない。


 麻理味とは中学の頃からの付き合いだった。あの時から同じ学校で面識あったけど、仲良くなったきっかけは公園で虫とお遊びしているあたしが目撃されたことだった。最初は嫌がられるかと思ったけど、彼女は逆に笑って一緒にこのお遊びに付き合うことになった。しかも彼女のお遊びの手はあたしよりも激しくて、あたしはそんな彼女をつい見惚(みと)れてしまった。彼女の可愛い容姿ももちろんだけど、その容赦のない遊びぶりと、それに見合わない平気で楽しそうな笑顔(えがお)は一番あたしの気を引くものだ。


 あれからあたしたちはいつも一緒に遊ぶことになって、時々玩具(おもちゃ)を奪い合って喧嘩(けんか)したこともあるけど、2人の関係は大体良好で一緒にいるといつも楽しんでいた。


 遊び方もいろいろあって、麻理味は時々新しい面白いゲームに誘ってきて、今回も……。


 「それよりさ。私、すっごく面白いものを見つけたの」

 「何?」


 麻理味の顔は今なんか楽しそうで、興奮しているみたい。きっと何かものすごくいいものだろう。


 「恵美沙はVRやったことある?」

 「VR? 仮想現実のことね? 聞いたことはあるけどまだ」


 あたしはまだやったことないけど、最近VR技術が急速に発達してきて、今もうまるで異世界トリップみたいな感覚までできるようになったと聞いた。あたしも興味がなくはないけど、まだやるきっかけはなかった。それがどれくらい面白いものなのか知りもしなかった。


 「実は私のおじいさんの会社が開発した最先端のVRものがあってね。まだ一般公開していないけど、おじいさんのおかげで私は特別にね」

 「そうか。すごい」


 麻理味のおじいさんはIT業界でのすごく偉い人だと聞いたことがある。だから時々、見たことないすごそうなデバイスを麻理味が使っているところを見たことがある。


 「それでね。やってみたらすごく面白いものだよ! 予想以上にね。これが私の……私たちのような人のために作られたかと思えるくらい。恵美沙も気に()ってしまうはず。私と一緒にこれで遊ぼう!」


 麻理味は情熱的に語っている。


 「そこまですごいものなのか? ではあたしも是非」


 こうやってあたしは麻理味と一緒にVRの世界へ飛び込むことになった。






 だけどあの時のあたしたちは思いもしなかった。そこで取り返しがつかないことの発端(ほったん)になる、って。


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