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眩しき廣がる向こう側の現實  作者: 雛宇いはみ
第四章:期待と責任感
26/30

✫26. 推しの巨人ちゃん

今回もまた救われた女性の視点となります。

 あたしはロサㇻフィ。今はもう22歳。去年怪獣に(おそ)われたところをある『可愛い巨人の女の子』に命を救われた。


 今もう1年経ったけど、あの巨人ちゃんの整った美しい顔と一緒に水浴びした時の全裸の姿はあたしの頭の中にはっきりしている。


 最初に会った時あんなでかい生き物を見てあたしはすごく怖かったけど、巨人ちゃんと一緒に一日中過ごしていたら、巨人だって普通の女の子とは変わらないな、とわかってきた。まあ、体は普通の女の子よりずっとでかいけどね。


 しかし今日突然もう一人の巨人の女の子はあたしの住んでいるサウヒュデヌイ町に現れて、町を(おそ)って建物を壊して人を虐殺し始めた。


 あたしを助けた巨人ちゃんと同じようにこの巨人も可愛らしい黒髪少女だけど、巨人ちゃんと違って残酷で人に危害を加える存在だった。しかもサイズは巨人ちゃんより更にでかくて、あたしの目算では恐らく身長は70メートルを越えている。多分巨人ちゃんの2倍以上だ。


 この町は高い壁に囲まれている。普段これは怪獣などの襲撃から町を守るためにあるものだけど、巨人の前では完全に無力で役に立たない。巨人が足を上げるだけでちょいと壁を越えられてしまうから。


 彼女は町に入ってから楽しそうに暴れてきた。あんなサイズ差で彼女を止められる人間なんているはずもなく、どうしようもなくただ自分の町が巨大な侵略者に(おか)されていくところを見ていくことしかできない。町が全滅するのも時間の問題だ。


 彼女の破壊はすごく早くてもうすぐあたしのいるところまで進撃して来るだろう。逃げたいとしてもどこに逃げるかわからない。もう間に合わない。


 そんな絶体絶命の状況で死を覚悟している時に、やっと巨人ちゃんが現れてきた。


 なぜか今回は去年といろいろ違うように見える。たとえば着ている服とか。髪の色も黒から水色になって、しかも背中に翼が付いていて、なんかまるで妖精みたい。それでも顔とサイズはあの時と同じだから間違いなくあの時の巨人ちゃんだと思う。どうやら彼女は町を守るために来たようで、現れた途端あの大巨人と敵対し始めた。やっぱり巨人の中にもいい巨人と悪い巨人がいるってことかな?


 しかしやっぱり巨人ちゃんより侵略者の大巨人の方がずっと大きくて、巨人ちゃんが戦おうとしたらすぐ反撃されて地面に倒れてしまった。


 偶然にも巨人ちゃんが倒れた先にはあたしのいるところの近くだから、あたしは彼女に近づいて歩く。それがどれくらい危険だとわかっていても。


 だって、あたしはずっと彼女に会いたかったんだもの。まさか本当にまた会えるとは。しかも今回もあたしを助けてくれている。だったらあたしも逃げないと決めた。


 だけど意外なことが起きた。いきなり巨人ちゃんはあたしの体を鷲掴(わしづか)みにしてすぐ立ち上がった。


 あれだけ優しかった巨人ちゃんがあたしにあんな乱暴なことをするなんて……。それだけでもあたしはすごく驚いてわけわからなくてパニックになったけど、次に展開は更にショックだった。なぜか彼女はあたしのドレスを無理やり脱がして、あたしは町の中で全裸になってしまった。巨人ちゃんならすでに全て見られているから今更別にいいけどやっぱりこんなところでは恥ずかしい。


 なんで巨人ちゃんはこんなことを? またあたしの裸を見たいのか? っていう気分ではなさそう。やっぱり全然理解できない。


 そして彼女の次の行動は益々(ますます)驚いた。何と彼女はあたしを大巨人とキス(・・)させた。いや、それは『キス』と呼ぶべきかわからないけどね。巨人にとってただ(くちびる)の一部だとしてもあたしにとっては全身だから。


 何のために? これもやっぱり全然わけがわからない。


 大巨人の大きくて形のいい(くちびる)にあたしの体がくっついたが、あれはただ一瞬だけで、結局すぐ引き離された。


 あの(くちびる)は意外と柔らかくて気持ちよかったな。と思ったけど、やっぱり『怖い』という気持ちの方が大きい。もう少ししたらあたしはあんな巨大な口の中に入って食われてしまうかもしれない。そんなこと想像するだけでも……。もう考えたくない。


 無理やり大巨人とキス(?)させられた後、巨人ちゃんはまた地面に倒れた。彼女の手の中に(にぎ)られていたあたしはすごく苦しかったけど、結局無事だった。巨人ちゃんはあの時こんなちっぽけなあたしが手の中で潰さないように気をつけてくれたみたい。


 その後巨人ちゃんは謝りたいような顔であたしを見つめた。さっきやったことを後悔したのか? よくわからないけど彼女の今の行動はどうやら何かの理由だろう。あたしを怖がらせるつもりはないだろう? そう考えるとあたしは別に気にしないよ。結局無事だし。


 てかあたし、全裸だけど!?


 恥ずかしそうな仕草(しぐさ)をしたあたしを見て巨人ちゃんも慌ててあたしを自分のドレスのポケットの中に入れた。


 彼女の着ているこのドレスはなんか薄くてすごく柔らかくて気持ちいい。こんな服はなんか外出着(がいしゅつぎ)よりも寝る時に着る服っぽい。こんな服を着る今の巨人ちゃんは実は巨人より天使のように見えるね。翼も持っていて実際に空も飛べるし。


 その後あたしをポケットの中に入れたまま、巨人ちゃんは大巨人としばらく何かお話をしていたようだ。あたしの知っている言語じゃないから、内容は全然理解できないけど、やっぱりこの2人の巨人は同じ言語を使って話は通じるようだ。これは何語? 『巨人語』と呼ぶべきかな?


 何となく話が終わった後、巨人の攻撃が完全止まったとわかった。あたしがポケットの中から解放された時には大巨人がすでにいなくなった。


 その後巨人ちゃんはあたしに新しい服を探して無事な場所まで連れてきてくれた。そして他の生き残りを探したり、瓦礫(がれき)から救出したり、壊された部分の町の片付けをしたりしてくれた後、巨人ちゃんも町から去っていった。


 結局彼女たち巨人は何者か、何をしたいのか、あたしも町の人たちも知るすべはなく、ただ起きたことをそのまま記録して歴史に残すことしかできない。巨人の存在について諸説あり謎がいっぱいで明らかでないことが多いのだ。


 でもあたしが2度もあの巨人ちゃんに救ってもらったのも事実で、辛い思いもしたけど、やっぱりあたしは巨人ちゃんのことが……。


 もう会えないかと思っていたのに、たった一年おきでまた会えるなんて……。そういえば『二度あることは三度ある』というのだからまた彼女に会えるのかな? あたしが危険な目に遭ったらまた助けに来てくれるのかな?


 そう思って期待していたけど、残念ながら結局あれから巨人ちゃんはもうあたしの前に現れることはなくなった。


新作を投稿しました。

『妖精に恋して結婚するボクは、女子高生だったと思い出しちゃった』

https://ncode.syosetu.com/n4976im/


名前の通り妖精の話なので、これも『サイズ差』をテーマにする物語です。恋愛ものでほのぼの。ちなみに妖精は大きくなれます。


短い物語ですがこんな話に興味があったらこの作品もよろしくお願いします。

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