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眩しき廣がる向こう側の現實  作者: 雛宇いはみ
第四章:期待と責任感
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#20. 新たなる脅威

 「そ、そんな……馬鹿な……」


 私が屋敷を離れてからもしばらくセサウキティウ町の中で飛び回っている。その時この町の異変に気づいた。突然騒がしくなったと思って、空へ飛んで見下ろしてみたら、そこには巨大な女の子(・・・・・・)の姿を目撃した。彼女は前日の麻理味(まりみ)と同じように町を襲って暴れている。


 「なんでこんなことに……」


 彼女は私と……というより麻理味と同じような日本人っぽい黒髪女の子だ。しかも今着ている服は豪華そうな赤い花模様の和服の着物。可愛らしい日本風の服装と子供っぽく整った顔で、日本人形みたい。いや、サイズ的には人形ではないけどね。


 もしスケールを無視して体型だけ見れば多分麻理味より少し小柄で幼く見える。麻理味と同じくらい美少女だ。


 身長は恐らく14-15メートルくらいで、麻理味の時の半分だな。それでも普通の人間の10倍くらいで、圧倒的な存在であることに変わりはない。


 こんなチートな存在、もしかしなくても彼女は私(麻理味)と同じプレイヤー? つまり現実世界からこの世界へログインしてきた人間だよね。


 恐らく麻理味の仲間? 同類? 麻理味と同じように、この子も楽しそうに笑いながら人間を(つか)まって潰したり踏んだり建物を壊したりしているし。


 とにかくこのままでは人がいっぱい死んで町が全滅してしまう。できるだけ早く彼女を止めないと。


 せっかく復活した町なのに、また(おそ)われるなんて。許せない。私は絶対何とかしてこの町を守る。


 「ほら、やめなさい!」


 彼女も日本人なら今の私の言葉が通じるはずだと思って、私は彼女の頭の近くの少し上まで飛んで叫んでみた。


 「おい、よめろってば!」


 しかしどうやら今の私の体が小さすぎた所為(せい)で声も小さくて、全然聞こえてもらえないようだ。


 それに彼女が町を壊すことで夢中になっている所為(せい)でもあるか、私が彼女の巨大な目の前に飛んで手を振ってもまったく気づいてもらえないみたい。


 やっぱりそれは無理はないか。なぜなら私は10分の1サイズの妖精で、彼女10サイズの巨人だ。彼女から見れば私はただ100分の1サイズで、1センチくらいしかないだろう。そして私から見れば彼女はとんでもなく巨大で超高層建築物みたいな感じで(すさ)まじい。


 もし彼女の指先に挟まれたら私は虫螻(むしけら)みたいにすぐ潰されそうだ。そんなこと想像すると怖気付(おちけづ)いてきた。


 そんな巨体に圧倒されて私は自分のちっぽけさを実感してしまった。本当に怖くて仕方ない。それでもなんかしないと。


 耳元で叫んだらどうだろう? もしかして聞こえるかもしれない。自分の体より大きい耳なんて洞窟みたいにおっかない感じだろうけどそうするしかない。


 「おい、聞こえているか!」


 私が彼女の巨大な耳が自分の視界のほとんど全てになったというところまで近づいてきて叫んだ。本当にすごい光景だけど、感動する余裕なんてなくて……。


 「……ギャッ!!!」


 その時巨大な何かがものすごい速度で私にぶつかって、ものすごい痛みを感じながら私の体が遠くに飛ばされてこの場から去っていく。


 「あっ……!」


 私の体はようやく地面にぶつかって、転がって、やっと止まった。しかしこの体のあっちこっちが破れそうな感覚はして、痛みもそれなりに生じた。やっぱりこんな体は生身みたいに普通に痛みを感じるみたい。巨人だった時は自分にダメージを与える存在なんてなくて無敵だと思っていたけど、こんな小さい体で弱くて脆くて傷つきやすい。


 幸い今ぶつかった地面は(どろ)みたいに柔らかくなっているようで、ダメージは減少して致命的ではないようだ。それでも多分今骨が何箇所も折れたようで、上手(うま)く動けない体になっている。それに泥だらけで気持ち悪い。


 この体、もう駄目かも。本来なら死ぬ覚悟程度だろうけど、今の体はただの(かり)()め……仮想世界のキャラクターみたいなもので、ログアウトしたらすぐ元の無傷(むきず)の体に戻れて心配することなんかないとわかっているから私は今ある程度平然でいられる。痛みだってこんな重傷のわりには意外と軽めで正気(しょうき)を失うほどではない。


 さっき一瞬のことで何が起きたか理解できるには時間がかかったけど、私にぶつかった巨大なものはあの巨人の手だと何となくわかった。多分彼女はやっと私の存在を少し感じたけど虫とかだと勘違いして思いっきり手で()(ぱた)いただろう。


 そして私の体が落ちたのは町の中の公園らしい。ここは本来なら人が通る場所で、私が人間に見つけられる危険性あるだろうけど、今みんなが巨人から逃げることで頭いっぱいで小さな妖精を構う余裕はないだろう。だからしばらくここで横になっても安心できるかもしれない。


 でもそんなことより、あの巨人の女の子を止めないと……。


 しかしサイズは違いすぎて話にならない。妖精のサイズでログインしたのは間違いだろうか? でもそもそも私はこんな巨人と遭遇するなんて思いもしなかったし。


 とにかく今の体はもう動けない。動けてもこんな小さい体はどうしようもないだろう。だったらまずログアウトしてまた新しい体でログインするしかない。


 そう思って私『ログアウト』と念じてみた。






 「よし、戻ってきたね!」


 気が付いたら周りの光景は部屋の中になった。最初に現実世界に来た時と同じ感じだ。でも今回私は自分の意思でログアウトできた。


 それにしても、思った通り現実世界に戻ったら傷や汚れがさっぱり消えて、体が元に戻って普通に動けるようになったね。なんかすごい。


 でも今は感動する余裕はないよね。とりあえずまたすぐ新しい体でログインしないと。


 「体のサイズを……。よし」


 さっきと同じ大きさでログインしてもどうしようもないとわかっているから、私は体のスケールを0.1から昨日と同じ20倍に変えた。


 他の設定はどうでもいいだろう。急いでいるからあまり考える時間がないし。場所もさっきログアウトした場所のままでいい。


 「行くぞ!」


急展開ですが、また巨人の話になりましたね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 妖精サイズと巨人サイズのサイズ差がしっかり描かれてますね! [一言] 10倍サイズの女の子に対して20倍サイズで会いに行くんですね。主人公の方が大きいパターン、楽しみです!
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