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ちょっとエッチ(無自覚)で可愛い後輩アンソロジー  作者: 釧路太郎
根暗な女子と動画撮影
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第一話

「あの、変な事聞くかもしれませんが、部長って部長じゃなかったら毎回部活に来てないんですか?」

「たぶんそうだと思うよ。他のみんなみたいに月に数回出て終わりだと思うよ。正直に行っちゃえば、部活でやるよりも家に帰って好きなようにやった方が楽しいしね。時間にも縛られないんで好きなだけやれるってのもあるけど。でも、俺って友達少ないから部活以外でやった事ないかも」

「私も似たような感じです。でも、家族でやったりはしないんですか?」

「家族ではやったりしないね。みんなで集まってやるような時間も無いからな。俺の妹は今度受験で勉強ばっかりやってるんで家で遊んだりしたらキレられるんだよね」

「妹さんもうちの高校にくるんですか?」

「いや、違うとこに行くって言ってたな。ここに入るのにそんなに勉強しなくても大丈夫だろって気はしてるけどさ」

「そうなんですよね。私も勉強あまり好きじゃないからここに来たってのはあるかもしれないです。でも、ここに来なかったら部活で双六をやることなんて無かったと思うから良かったんじゃないかなって思ってますよ」

 日本人なら年に一度くらいは双六をやろうかなと思うことがあるかもしれないのだが、双六を日常的にやって部活として成立させてしまおうなんて普通は考えないだろう。双六の他にもボードゲームはたくさんあるのでアナログゲーム部でもいいのではないかと思っていたのだが、この部活の創設者である先々代の部長曰く

『アナログでもボードでもゲームと名前がついている部活は申請も通らなかったのだ。だが、年配の先生たちを説得する際に見本で渡した自作の双六が思いのほか好感触であり、双六部として活動することの許可を得たんだ』

 なんてことを言っていたのだ。先々代の部長も先代の部長も人を引き付けるトーク力なり想像力があったのだが、三代目の部長である俺にはそのどちらも備わっていないのだ。その結果が、今のように極一部の部員だけが活動に積極的で大半が面白半分で数回来て満足するような人ばかりなのだ。

 俺だって部長じゃなければ毎回活動に参加なんてしてないと思うし、双六なんて年末年始に少しできればいいと思っている。積極的に参加しようと思わない理由もわかるのだが、出来ることなら以前のように活気のある場に戻って欲しいという思いもあるにはあるのだ。ただ、俺にはそうするだけの力が無いというわけなのである。

「今日は何をやりますか?」

「竹下さんがやりたいのあるのならそれでいいけど、何かやりたいのある?」

「じゃあ、酒井さんが作ったアイドル体験のやつがいいです」

「酒井さんのやつね。良いよ、今日もそれをやろうか。それにしてもさ、竹下さんって酒井さんの作ったアイドル双六好きだよね」

「はい、私でもアイドルになれるのかなって思うとワクワクしちゃうんです。いつもトップアイドルにはなれないですけど、希望があるのは良いなって思っちゃうので」

「そうなんだよね。俺も結構な回数これをやってるけどさ、トップアイドルになったのだって二回くらいしかないからね。十回あるオーディションで全部六を出せとか普通は無理だもんね。もう少し緩くした方がいいと思うんだけどな」

「私は今のままの方がいいと思いますよ。アイドル活動とかわからないですけど、そんなに簡単にトップになれるほど甘くないと思いますからね」

「そりゃそうだけどさ、これはフィクションの話だから」

「それでもです」

 竹下さんは酒井さんが作ったアイドル体験双六を知ってからこの双六ばっかりやっているのだ。面倒くさがりの酒井さんが作ったこのゲームはイベントマスこそ多いものの、その全てはその時に振ったさいころの出目で決まってしまうのだ。積み重ねも何もないその場その場の運が試されるので戦略性も何も無い完全なる運頼りになっているのだが、そこが竹下さんを魅了してしまったようだ。

 竹下さんが普段どれくらい努力をしているのかなんて知らないのだが、俺が知っている一年生の中でも相当に運が悪い方だとは思う。本来ならもっといい高校に通えるくらいの実力があると思うのだが、中学二年生の時に大病を患った事がきっかけで成績も置いてしまったそうなのだ。今はもうほとんど治ったとのことなのだが、あまり激しい運動は避けるように言われているとのことで、竹下さんが走り回っているところを見た生徒はこの学校に存在しないのではないかと思うくらいに行動がゆっくりとしているのだ。

「今日こそは部長より上のランクのアイドルめざしますからね」

「俺も負けない様に頑張るよ。トップアイドルになれればいいんだけどね」

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