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ちょっとエッチ(無自覚)で可愛い後輩アンソロジー  作者: 釧路太郎
麻雀をする後輩と俺

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最終話

 南二局十本場、俺の親番はまだまだ続く。

「どうします。まだ続けたいですか?」

 俺の二人の点棒を取り切ってから毎回確認しているのだが、二人から終了したいという言葉が出てくることは無かった。

「俺から役満を二回あがっても勝てないと思うんですけど、まだ続ける意味ありますか?」

 平本課長と横尾君が市川さんを狙い撃ちしていたのを利用して俺は二人の捨て牌を予想して待っていただけなのだが、その戦法は面白いほどはまっていた。点数が開けば開くほど二人は高めを狙っていったようなのだが、そうなってくるとますます狙いが容易になっていったのである。

「もうすぐ閉店時間になるんですけど、まだ続けますか?」

「そうか、閉店時間なら仕方ないな。横尾君もここいらでやめて帰ることにしようか」

「そうですね。閉店時間なら仕方ないですよ。なんだか今日はついてない一日だったのかもな」

「今日はこれくらいで中止という事にしておこうか。近いうちにまた仕切り直しと行こうじゃないか」

「あの、それってこの点数のまま続きをやるって事ですか?」

 市川さんの質問に対して平本課長は困った表情を浮かべていたのだが、それを誤魔化すためなのか石川君と三木君が早口で喚きだしていた。

「今回は閉店時間だから中止なんで再試合って事ですよね」

「そうだな。再試合なら最初から仕切り直しだからこの半荘は成立せずで点数も最初からだよな」

「ですよね。この勝負は無効になったんだから記録も残らないですしね」

「ちょっと待ってくださいって。私はちゃんとこの点数を残しておきますよ。再試合をするって言うんだったらこの点数からはじめないとおかしいですよ」

 お互いの言い分は理解出来るのだが、正直に言ってしまえば俺はどっちでもいいのだ。南場に入ってからは俺しか上がっていなかったにもかかわらず、俺があがるたびに市川さんは自分の麻雀に自信を持っていっていたのが目に見えていた。市川さんが自分に自信を持ってくれたことの方が勝利にこだわるよりも価値があると思えたのからだ。

「ねえ、齋藤さんも再試合をするんだったらこの点数で続けますよね?」

「いや、俺はどっちでもいいよ。再試合をするかどうかもわからないし」

「でも、こんなに点数があるのに途中でやめるなんてもったいないですって」

「別にいいよ。もう一度戦ったって同じような結果になるだけだからさ。それが東場か南場かの違いでしかないからね」

「凄い自身ですけど、その自信ってどこから出てくるんですか?」

「どこからって、この結果がそれを物語ってるってだけの話だよ」


 平本課長たちは俺達よりも先に清算を済ませると足早に店を出て行った。俺達が外に出た時にはタクシーも止まっていなかったので四人全員が別々のタクシーに乗っていってしまったのだろう。何とも迷惑な話だ。

「タクシーいないですね。このまま朝まで二人で何かしますか?」

「いや、今日は帰ろうかと思うよ。あがり続けられたとはいえあれだけ打つと疲れちゃったからね」

「それにしても凄かったですよね。どうしてあんなにあがれたんですか?」

「ああ、アレはね、市川さんを餌にしてただけだよ。あの二人が市川さんをひっかけてあがろうとしてたから裏をかいたってだけの話だよ」

「ええ、それって私を囮にしてたって事じゃないですか。だから、斎藤さんは普通に打てって私に言ってたんですね。ちょっと酷くないですか」

「でもさ、そうのお陰で勝てたでしょ。それならいいじゃない」

「勝てたには勝てたですけど、私も結局マイナスのままだったじゃないですか。どうせ二人で勝つんだったら二人ともプラスの方が良かったですよ」

「市川さんがプラスになるには最初にあがっておかないと俺の親が終わってたからな。そうなるとあれだけ親で連荘出来なかったって事だよ」

「それはそうかもしれないですけど、それでも私を囮にするなんてひどい先輩ですよ齋藤さんは」

「まあまあ、そう怒らないでよ。近いうちに何かおごるからさ。それで機嫌直してね」

「うーん、奢ってくれるものにもよりますね。でも、あんまり高いものも悪いし、難しいな」

「俺に出来る範囲だったらにしてね」

「もちろんですよ。私もその辺はわきまえてますからね。じゃあ、これから私にマッサージしてください。長時間麻雀をやって体がバキバキになっちゃったんですよ。私の事を気持ち良くしてくれたら齋藤さんの事も気持ち良くしてあげますから、それでどうですか?」

「さすがにそれは良くないと思うよ。それにさ、マッサージをする場所だって無いでしょ。そういうのじゃなくてご飯とかで良いと思うんだけど」

「もう、そういうのは男としてカッコ悪いですよ。私は今疲れてるんです。だから、マッサージしてくださいよ。ね、マッサージしてくれるだけでいいですから。それ以上は何も望みませんよ」

「そうは言うけどさ、さすがにそういうのは良くないと思うんだよ。だからさ、他のことにした方がいいと思うんだけど」

「もう、私がソレで良いって言うんですから、斎藤さんは逃げないでください。さっきの麻雀の時みたいに強気で来てくださいよ」

「それは課長と横尾君相手に勝とうとしてたからであって」

「じゃあ、これからは私相手に勝とうとしてください。それなら強気になれますよね。いつまでも弱気じゃダメですからね」

 市川さんは俺の手を引いて駅とは反対方向へと向かっていった。とっくに終電も行ってしまっているのだが駅に行けばまだタクシーは捕まえられるだろう。市川さんはそんな事は気にせずに俺の手を引いて空室と書かれたホテルの中へと入って行った。


「さあ、これからお互いにマッサージで勝負ですね。私は負けませんからね」

 つい先ほど見せた表情と同じように自信に満ちている市川さんが俺の目を真っすぐに見ていた。俺はその真っすぐすぎる瞳を直視することも出来ず、何となく良さそうな部屋を選んでそこへと向かうことにした。

 外の時とは違い、優しく繋がれた市川さんの手はほんの少し冷たかったのだが、それが思いのほか気持ち良く感じていたのだった。

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