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ちょっとエッチ(無自覚)で可愛い後輩アンソロジー  作者: 釧路太郎
麻雀をする後輩と俺

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第七話

「明松さんと斎藤さんって昔からの知り合いって聞いてるんですけど、どんな関係だったんですか?」

「私は齋藤さんの事が好きで何度も告白してきたんだけどさ、全部断られたって関係かな。さっきも告白したんだけど、バッサリと切り捨てられちゃった」

「ええ、どうして齋藤さんは明松さんの事を振っちゃってるんですか?」

「いやいや、そんなのは嘘だって。そもそも告白なんてされてないし」

「そんな事ないですよ。私は何度も齋藤さんに告白してましたもん。さっきだって私の隣に座ってくれって言いましたし」

「それは言われたけど、別に変なことではないよね」

「でも、隣には座ってくれましたもん」

 吉川さんの質問に対して明松さんは思いもよらぬことを言いだしたのだが、俺は全くもって告白されたという意識は無かった。ただ隣に座って近況を報告し合っただけなのだが、それのどこに告白だどうだという事があったのだろうか。俺にはそんなことがあったかという事を思い出すことが出来なかった。

「あの、告白ってどんな感じの事を言ったんですか。ちょっと興味あるんですけど」

「恥ずかしいからあんまり言いたくないんだけど、私は齋藤さんにこの部屋に入っていいよってのと、立って待つんじゃなくて私の隣に座っていいよって言いました。もう、何変なこと言わせるのよ。思い出しただけで恥ずかしくなっちゃうじゃないですか」

「そうじゃなくて、どんな言葉で告白したのか教えてくださいよ。私は麻雀はよくわからないですけど、恋バナとか好きなんで聞きたいな」

「だから、部屋に入っていいよってのと隣に座ってって言ったんですって。本当に恥ずかしいんだけど」

「え、それって別に告白じゃなくて普通の事じゃないですか。それが告白になるんだったら私は齋藤さんに何回も告白してることになっちゃうんですけど」

 昔から明松さんは人と価値観が違っていたのだ。それはまるで生まれた星が違うのではないかと思ってしまうくらいに一般とはかけ離れたものだったのだが、麻雀プロになった今はその違いが上手いこと活かされている場面も多くなっていたと思う。だが、それは麻雀の勝負の場に限っての話であって、日常生活においてはただただ周りを混乱させることになっているようだ。麻雀においてもセオリーにない事をサラリをやってのけるので対戦相手を大いに混乱させることもあるようなのだが、それ以上に日々の暮らしは周りが大変そうだと思ってしまうのだった。

「よくわからないですけど、明松さんって本当に変わってますよね。ちょっと変わってるなとは思ってましたけど、斎藤さんが関わると本当におかしい人になるんだなって」

「ねえ、私はおかしい人じゃないんだけど。それって、オーナーが言ってたの?」

「いや、叔父さんからは詳しく聞いてないんでそうだったんだって思っただけだし、別に悪いことじゃないと思いますけど」

「あとでオーナーに文句言っておかないと」

 明松さんは周りに聞こえないくらいの声量で何か文句を言っていたようなのだが、雀卓の音がそれらを全てかき消していた。久しぶりに全自動卓で麻雀をやっていて思ったのだが、結構音が大きいものなんだな。

「じゃあ、斎藤さんが私に負けたら私の告白に答えてもらうって約束でいいですね?」

「いや、なんでそんな約束をしないといけないんだよ。そもそも、この麻雀って市川さんの特訓なんだよね?」

「そうですよ。特訓ですよ。でも、それと私と斎藤さんの勝負には関係ないですよね?」

「関係ないとかじゃなくてさ、特訓なのにそういうの持ち込まれたら特訓にならないと思うんだけど」

「別にいいんじゃないですか。負けたら付き合えとかじゃないんですし、真剣に戦ってる二人と一緒の方が市川さんも特訓になると思いますよ。ね、市川さんもその方がいいよね?」

「え、どうなんだろう。でも、真剣勝負をしている二人を見るのは勉強になるかも。私はその条件でもいいと思いますよ」

「じゃあ決まりですね。いつもみたいに変な感じに逃げちゃダメですからね」

「俺は変な感じに逃げた事なんて何も無いけど」

「決まったんでもう変えられませんからね。負けた後に冗談でしたは通用しないですからね」

 明松さんが提示してきた勝利条件というのはあまりにも偏りがありすぎるものであった。

 特訓であるという事と吉川さんがいまいち麻雀のルールを覚えていないという事もあって全て東風戦で行われることになった。それはまだいい。素人の吉川さんと何となく麻雀が出来る市川さんではスピード重視でバンバン上がりを目指すタイプの明松さんと戦うには半荘は長すぎると思うのだ。親が一巡するたびに点数を回復させなければマイナスになる可能性が高すぎる。実際にプロを相手のトーナメントでも親番で何度も連荘して相手を飛ばしている事さえあったのだ。

 問題の勝利条件なのだが、俺が明松さんより点数が低いと負けになる。それは何の問題も無いのだが、市川さんと吉川さんが飛んでも俺の負けになるというのは厳しすぎるのではないかと思う。俺があがって二人を飛ばしても負けになってしまうし、二人を飛ばさないように立ち回ってしまうと明松さんよりも点数が上になる可能性は限りなくゼロに近くなってしまうのではないだろうか。こんな条件は飲めるはずもないのだが、吉川さんも市川さんも面白そうだという理由だけでこの条件を飲んでしまったのだ。

 ここまでくると、この状況に持ち込むためのプランだったのではないかと思えて仕方ないのだが、明松さんが計画通りに何かを達成出来たことなんてないと思うのでその可能性は低いと思う。そんなに器用であればもっと活躍していてもおかしくないと思うくらいのポテンシャルはあると思うからな。

「異論はないようなのでこのルールで勝負ですね。斎藤さんには恨みは無いですが、ちょっとだけ後悔してもらう事になりますよ」

「いや、異論しかないけど。こんな不公平なルールで勝負に負けて告白されても断ると思うけど」

「え、断るとか聞いてないんですけど。そもそも告白する前にそんなこと言うのは無しだと思いますよ。そういう精神攻撃は男らしくないと思うんですけど」

 何だろう。俺は何も悪くないはずなのに悪者扱いされているようにしか思えない。勝っても負けても得るものが何もない戦いになりそうなのだが、こうなってしまっては当初の目的通りに市川さんが強くなるように特訓するしかないな。

「まあ、明松プロに勝てばいいだけの話だし、ちょっと本気で行かせてもらいますか」

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