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ショートショート6月~

縁結び

作者: たかさば

「フム、君はこの人が嫌いだというのかね。」


「ええ、とても嫌いです。」


「それはなぜ。」


「見ていてとても腹が立つからです。」


「なぜ見るのだね。」


「嫌いだから目に付いて仕方がないのです。」


「目に付くとは?」


「なぜかたくさんの人の中で、この人だけが私の視界に残るのです。」


「他の人とは違う存在であるというのかね。」


「明らかに不愉快を感じます。」


「なぜ不愉快を感じると思うのかね。」


「ただ不愉快なのです。」


「理由もなく不愉快なのかね。」


「ええ、ですから・・・。」


「では、君はこの人と語り合わねばなるまい。」


「そんなおぞましいことできません!」


「なぜ不愉快に感じてしまうのか、確認すべきである。」


「嫌がらせは止めて下さい!」


「嫌がらせなのかどうかは、話し合ってから決めなさい。」


「こんな侮辱は初めてだ!辞退する!」


「人の縁というものは、辞退するものではないのだよ。」


「いやだ!!こんな縁は結びたくない!!」


「もう結んだ、覚悟して出会いなさい。」


「い―――や―――だ――――――!!!」




ああ、思い出したわ。

神が結んだ縁のこと。


神ってのは本当にね、自己満足の塊なんだよ。


あいつらは勝手な思い込みで勝手な押し付けをしやがる。


おかげでほら。

僕のとなりにうざい奴。


何をしてても目に入ってきて、

何をしてても声が聞こえてきて、

何をしてても動きが気になる。


こんなにだいっ嫌いな奴なのに、縁が切れずに70年。


毎日けんかして毎日仕方がねえと許して来て。


それは愛ゆえにだと思ってきたけれども。


あっさりお迎えに来た天使がばらしやがった。

神のご縁、無事に完遂できてよかったですだとよ。


完遂だと?


僕は不愉快で不愉快でどうしようもなかったよ!!!


僕が良かれと思ったことを全部受け入れる「自分のない」ところも!

僕がだめだろうと思って全部断るのを受け入れる「自分の弱さ」も!


全部全部俺ありきの、ずるい人生を送ったこいつが憎くてならない。

全部全部俺ありきの、他人任せの人生を送ったこいつが憎くてならない。

全部全部俺ありきの、自分を蔑ろにした人生を送ったこいつが憎くてならない。


縁が切れるこの瞬間に、すべて思い出したよ。


僕はやっぱり、こいつが嫌いだ。

もう縁など、結ぶつもりはない。

僕は次は一人で生きていく。


人の人生を背負うなんて真っ平だ。

人の人生に干渉するなんて真っ平だ。




「やあ、結んだ縁はどうだった?」


「とんでもないことしてくれましたね、大変でしたよ。」


「それで何が分かったんだい。」


「とても相性が悪かったと分かりました。」


「たとえばどんな。」


「すべてを受け入れることが不愉快でした。」


「それは逆に相性がいいんじゃないのかな?」


「どうしてそうなるんですか!」


「君のすべてを認めてくれる人だったんじゃないのかね。」


「認める弱さが気に入らなかったのです、僕はもう縁を望みません。」


「相手は君との縁を再び望んでいるようだよ。」


「あいつは自分の人生を誰かに丸投げしたいだけなんですよ。」


「それでは縁は結ばないでおくよ、いいんだね。」


「いいんです。」




ああ、思い出した、思い出したよ!

神が結ばなかった縁って奴。


神ってのは本当にね、自己満足の塊なんだって。


あいつらはホントに勝手な思い込みで勝手な押し付けをしやがる。


おかげでほら。

僕はずっと一人ぼっち。

孤独に耐えて、孤独な人生を終えた。


あっさりお迎えに来た天使がばらしやがった。

神のご縁、無事に完遂できてよかったですだとよ。


完遂だと?


僕は寂しくて寂しくて仕方がなかったよ!



「やあ、結ばなかった縁はどうだった?」


「とんでもないことしてくれましたね、大変でしたよ。」


「それで何が分かったんだい。」


「縁がないととても孤独だと分かりました。」


「縁がなくたって出会うことはできるというのに。」


「誰とも出会いませんでしたよ?!」


「自分で孤立しておいて、その責任を私に擦り付けるのかね。」


「あんたが縁を結ばなかったからじゃないか!」


「なぜ自分で縁を結びに行かなかったんだい。」


「誰も結んでなどくれなかったよ!」


「結びたいと願った人はいたじゃないか、君が縁結びを断った人が。」


「あいつはだめだ!自分勝手すぎる!」


「君は自分勝手だとは思わないのかね。」


「僕は自分の意思を前に出しているだけであって!」


「自分の意思を前に出した時に寄り添ってくれた人を君は拒んだね。」


「寄り添う?僕にもたれかかっていただけだ!」


「では君は具体的にどんな人と縁が結びたいんだい。」


「僕と同じ考えを持って、同じように前を向き、落ち込んだときには励ましてくれるような人です。」


「ふうむ、よし分かった。」


「今度こそお願いしますよ!」




ああ、思い出した、思い出したよ!思い出しちまったよ!!!

神が結んだ縁って奴。


神ってのは本当にね、自己満足の塊なんだって。


あいつらはホントに勝手な思い込みで勝手な押し付けをしやがる。


おかげでほら。

僕はずっと一人ぼっち。

孤独に耐えて、孤独な人生を終えた。


あっさりお迎えに来た天使がばらしやがった。

神のご縁、無事に完遂できてよかったですだとよ。


完遂だと?


僕は寂しくて寂しくて仕方がなかったよ!



「やあ、結んだ縁はどうだった?」


「とんでもないことしてくれましたね、大変でしたよ。」


「それで何が分かったんだい。」


「縁を結んだところで気持ちを通わせ続けることは難しいことが分かりました。」


「それで君はどうしたいんだい。」


「今度こそは僕に寄り添ってくれる人をお願いします。」


「縁結びを断った人ではだめなのかい。」


「あいつはだめだ、自分をもてない。自分のない奴は魅力がない。」


「自分で見つけようとは思わないのかい。」


「見つけても結ぶところまでたどりつけないかもしれないから。」


「それで私に縁を結んでもらおうと考えたのかい。」


「それが貴方の仕事なのでは?」


「君は自分がいかに人任せになっているのか、気が付いているのかい。」


「人任せ?気が付く?」


「縁がなくたって出会うことはできるのだよ。」


「出会えなかったよ!」


「出会えていたけれど、何も行動しなかったことに気付きなさい。」


「僕の気持ちにこたえてくれない人しかいなかった!」


「人を否定する考えを手放してみてはどうなんだい。」


「自分の考え方を認めてくれない人を認めろと?」


「人を認めて生きてみたら楽になるよ。」


「僕は楽じゃない生き方をしているとでも?」


「もう一度縁結びを断った人と縁を結んでみなさい。」


「それに何の意味があるんですか。」


「何を思うのか、経験してきなさい。」



ああ、思い出した。

神が結んだ縁って奴。


神ってのは本当にね、自己満足の塊なんだっておもってた。


勝手な思い込みで勝手な押し付けをすると思ってた。


お迎えに来た天使がいった。

神のご縁、無事に完遂できてよかったです。


完遂できたのか、僕は。



「やあ、結んだ縁はどうだった?」


「とてもいいご縁でした。」


「それで何が分かったんだい。」


「自分のおろかさに気が付きました。」


「どうおろかだったんだい。」


「自分が一番、人を認めることができていなかった。」


「認めることはできるようになったのかい。」


「僕を認めてくれる人がいたから、認めることができるようになりました。」


「それは良かった。」


「本当に、良かった。感謝しています。」


「君は何を望むんだい。」


「何も、望みません。」


「それでいいのかい。」


「人を認めることができるようになったから、大丈夫だと思いたい。」


「縁を結ぶかい。」


「結びたいと願う人がいるのであれば。」


「そうかね。では…」


「言わなくていいです、僕は何も聞かずに、生きてみたい。」


「では、自由に生きてきなさい。」





「ここ、縁結びの神様がいる神社なんだって!」

「ええー!お賽銭弾まなきゃ!!」


神が結んだのか結ばなかったのか。

僕の縁はどこにあるのか分からないけれど。


「じゃあ、僕も100円ほど。」

「俺は500円入れておこう!!」


どこかでつながる縁があるならば。

いつか誰かが、僕と共に生きてくれると信じているから。


「いいご縁がありますよーにっ!」


今は孤独だけれど、いつか誰かと共にありたいと願っているから。


ぱんっ、ぱんっ!


拍手を打って、お辞儀をして。



「いいご縁に、めぐり合えますように。」




お願いをして顔を上げたら、となりに佇む女性と目が合った。


にこっ・・・。




いいご縁、かも知れないから。



「こんにちは。」



僕はにっこり微笑みを返して、声をかけた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] おっと闇ですな。でもハッピーエンドっぽい。 [気になる点] やっぱり人のせいにする人いるんですよね
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