表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祭り(道化の歌)  作者: 比我 境太郎
1/1

序の口

此れって何だろう?がんぜ無い子供のように、女通いするのを辞められぬ男のように、ただよっています。

疲れた心に咲く一輪の花を受け取って下さい。


 

事故処理欲求の塊が、黒々と丸く万年床の布団に鎮座していた。枕元には、スコティシュフィールドが、何時ものように座っている。


 せいららい、おーい待ってくれよ。どこ行くんだよ。不安げに一緒に遊んでいた子供に聞いた。友達は、皆の輪から外れて何処かに行こうとしている。此処は砂場だ、公園の。アスレチックで遊ぶ子供、ブランコに乗る子供。皆で輪を作って楽しそうに遊ぶ子供達がいる。

 その、子供は行った。

 『竜宮城に行こうよ』

 『何処に在るのさ、そんなところ、此処はお伽噺の世界じゃないよ、現実の世界だよ』

 『在るじゃないか、彼処に』その子供は楽しそうに建物に挟まれた狭い道を指差した。

 『何もないし、知らない道だよ』

 『何行ってるのさ、すぐ其処にあるだろう、行こう』そう言って不安げな私の手をとり、駆け出した。私は、離れていく輪の中の子供を振り返りながら、その子について行った。恐る恐る。


 子供になるのさ。ほら、子供になろうよ。そう言う声が聞こえた。

無理だよ。もう僕らは大人に為ってしまったんだよ。そう返した。


 何言ってるのさ、観てごらんよ。ほら。そう言ってその子供は前を指し示した。霧がモヤモヤと揺らめいて要るように視界が曇っていた。


 ほら、聞こえるだろ。楽しそうな声が。耳を澄ましてみると、キーンと耳鳴りがした。あの頃、大学生だった智也が恋をしたのは、耳鳴りだった。彼女が此方を振り向いて、喋り掛けてる顔を耳鳴りの中、見詰めていた。何を言ってるのか全然分からなかった。只、初めて話す彼女の表情豊かな顔を見るうちに、リンゴが林檎に為った。


 とぅーるるとぅーるるとぅとぅとぅ


 徹男の部屋。

 『本日のゲストは、このかたです。どうぞ』

 『哲学者の星人です。』

 『星人さんは、哲学を極めてらっしゃるだけあって、宇宙人みたいですね』

 『惑星には希望があります。探査には、土壌が必要です。林檎を最初に見たとき貴方は何を想いましたか?』

 『はい?おっしゃることが良くわからないのですが、本当に星人さんは宇宙人のように面白い方ですね』

 『最初に、林檎を見たとき、もし其処にけん玉の赤い球が隣にあったら何を思っただろう。私はそう思うのです』

 『はい?あら、美味しそうなんておもうんじゃないですか』

 『もし、宇宙人が居るとして其れが石だったらどう思いますか?』

 『えぇーと、そうですね。わたくしはあら可哀想とおもうんじゃないですか?動けなくて』

 『面白い意見ですね』


 とぅーるるとぅーるるとぅとぅとぅとぅ

 『タニシでございます。じゃんけんぽん』

  

 『矛盾相談室』

 徹頭徹尾徹底討論会開催。そなたは、評価順位度外視千万ハリセンボンさんですね。して、実存と本質と人間賛歌に捧げる身と心えております。その心は?


 ちょっと待って下さい。今、機長に繋ぎます。お客様どうか慌てずお静かに。この機は、万全を期してお客様方を無事目的地送り届けます。

 操縦室。エアライン航空ホットラインSOS

副操縦士『荒れてきましたね。キャプテン』

機長『あぁ、見たことない乱気流だ。乱れきってるな。だが安心しろ、俺に越えられなかッた波はない』

副 『フック船長!』

機 『客席の乗客の皆様方、どうかご安心をこの機は私が全身全霊で操縦しております故、無事に皆様を送り届けてみせます。大船に乗った気分保持、眼下に見えますのはアマゾン、顔を出しますワニに御注意されたし』

 大空の定期便、突風煽り運転、揺れ揺れに人々狂乱同地。

『只今、バードストライキに依り、右舷エンジン故障去れたし、人間賛歌あったもんだすったもんだのご臨終、落下傘のご用意を。どうか皆様落ち着いておっかさんを背中に背負って下さい。えー、不足しましたら、機内恒例一大行事のお見合い会でペアを組んで下さい。』



 真面目に答えて下さい。CM長くて、観覧席あくび境地ですよ。

ですから、私は、私の書きたいと思った物を書く。つまり、事後処理欲求をスコティシュフィールドにくるむということですね。イヤー、スコティシュフィールドと言いますか、イチゴ畑に飛ぶてんとう虫を愛でるように、自意識の天然温泉堀当てたし候。

 

 寿司ネタついでに、聞きますが、車内間異性交遊について貴方はどう表現するべきと捉えますか?

 折り畳み椅子の交尾。利便性の賜物。文明の利器。リミッター解除。躊躇。不義理の果ての愛。

 其れで、満足ですか? 

 途中下車で、乗車拒否、男の憧れ。イカスミに憧れ、すみはくタコ。そのうち、天空間交遊。それ見て火がつく何時かな。


 プラットホーム。

 果てなダイアリー。果てた欲望。畳みに紙くず丸め蹴り。此れが自己満足の見本。だがしかし、この虚しさ空虚間。何目的羅針盤。方向音痴天性で。


 笑止千万、一念発起、そろそろ本腰ふんどし締めて。





 いッ瀬世~の宵よいよい。 

 『本当はね。祭りを書きたいのです。』行き付けのスナック蝶鮫で、鮫のような顔をしたママ美晴に男はお漏らしするように、愚痴をこぼした。

 『どうして?』美晴は、興味無さそうに虚ろな目線をグラスに注いだまま、小魚を眺めた。

 『夢なんです。楽しそうな祭りに行くのが。其れを眺めるのが』

男は、自分のグラスに注いだ、海藻がゆらゆら揺れるのをぼんやり眺めながら行った。

 『ふーん、そうなんだ。私は祭りなんてもう良いかな』

美晴が言った。

 『でも、貝さんらしいね』そう言って、笑った。

 『ありがとう』男は言った。決してイルカでないママの鯖鯖とした所が男には居心地が良かった。

 『どんな祭りなの?』美晴が聞いた。

 『思い出祭り。只の人間の祭りだよ』

 『人間の祭り?そんなの観たいの?貝さんは』

 『陸に居るときに、遠くから聴こえて来たんだ』


 カランコロン、ドアの音が静かな店内に響いた。


 

 前を先導してくれていた少年は何処かに消えてしまった。

私が、記憶に翻弄されているうちに遠く先に行ってしまったようだ。

 

 細い路地を抜けた先に広がった視界に知らぬ街が映る。もう夕日が沈み掛けていた。

 

 プレイバック。赤いポルシェに乗った女が通り過ぎるのを横目で追った。気分上昇気流が下降気味の自分を起こす。という、しょうもない流れが過ぎさって行ったような気がした。


 更に言えば、赤い傘を持ったその女が赤い絨毯の上を颯爽と歩いて、私達は、体を寄せあってフラッシュバックの中を歩く。その多くの視線に少し疲れてきた私の目に芳江の姿が写る。ヒヤッと脇汗疾患していると、

 『どうしたの?』と藤子が聞いてきて、文字通りドキリとダブルブッキングする。


 

 そんなこんなで、祭りは何処かに行ってしまった。



  『僕なら、そんな気分には為らないよ』


 映像百景。


 簡単に。見たものを文章に。


 男は、道化師の格好をして、薄暗の夏の街を歩いていた。

ふらふらと、歩いていると、子供達が男に寄って来た。

 男が両手を広げてくるりと回ると何もない手から風船が出てきた。

其れを子供達に渡した。


 ラーメン屋に男がいた。店主に男は懺悔を聞いてもらっていた。

店内のTVからは、電波ジャックされた映像が流れていた。

 一通り懺悔の言葉を述べると男は『ラーメン』と言って拉麺をすすった。

 店内には、鼠が掛けていた。電光石火で。


 果樹園の中央に、胡座をかいて座る男が居た。麻布1枚を腰に巻いただけの髪がぼさぼさ伸びた男だった。男は、目の前の一本の林檎の木を凝視していた。

 林檎は男の前で、何度も木と地面を往復していた。

 男が、唱える事が出来る魔法は1つしか無く、いつまでも其れを繰り返していた。

 

 可憐な少女が海上をいかだに乗って漂っていた。回りには何も見渡すものがない。少女はその、小さいいかだの上で膝を抱えて、指の爪を眺めていた。遠くの国の女の子のように指の爪を鮮やかな色で染めることを空想しながら。


 


 祭りがあった。はやしが其処ら十から聞こえてきていた。

はっはッはッはのよいよいよい、はっはッはッはのよいよいよい


 眼下に火を吹く竜が居た。面妖なもの達が踊っていた。掲げる提灯が町の高層ビルを這う赤い蛇のようだった。


 

 祭りがあった。彼女の顔をタケルは久しぶりに見た。綺麗だった。

今、眼下で繰り広げられるおどろおどろしい光景よりも、この世の物と想えない位に彼女の顔は綺麗だッた。その一瞬が、彼女の横顔に花火が写ったその一瞬が奇跡のようだッた。時が止まったかのように心にとまった。忘れられない物を見てる気分だった。


 久しぶりに、彼女の顔をタケルは見た。窓越しに。窓と窓越しに。窓の下の道路では、赤い提灯と赤い傘が列をなし、ゆらゆら揺れるへび見たいに見えた。


 其は、ありもしない現実。繋ぎ用の無い点と点。大都会の広い道路を挟んだマンション同士の窓が例え向かい合っていたとして、お互いの顔を認知出来る程、視力が良いものだろうか。別にマンション出なくても良い。都会の街中じゃなくても良いのだが。


 

 はっはッはッはのよいよいよい、はっはッはッはのよいよいよい


お互いのマンションをプロジェクションマッピングが奇妙キテレツな映像を写し出していた。その中に現実の同級生の花子の顔を見つけた。窓から顔を出し、武と同じように外の祭りの様子を眺めていた。

 キラキラと眩しそうに眺める顔を武は、双眼鏡で覗いて要るようにハッキリと見ていた。

 

 すると、シュルルルル…パッと花火が上がり、その顔に花火が輝いた。


 下界の様子を孫悟空が雲に乗り眺めていた。側には三蔵法師に猪八戒にカッパがいた。


 CM。壁に手あり、手当たり次第、襖に耳あり、障子に目あり。

壁に手あり、当たり手候、落武者武者武者、がんぜ無き、朧気に揺らめく記憶の湯気に音合わせ手合わせ願います。


 かべにてあり、しょうじにめあり、ふすまにみみあり、

はっはッはッはのよいよいよい、はっはッはッはのよいよいよい


 気分餓鬼分、変異なし、温度変更湯加減致し


 『乗らねぇな、映画は、初見にかぎんだよ、法師さんよ』

孫悟空が悪態をついた。

 『やるのです。悟空さん、其れが務めです。私達の』

三蔵法師、悟空に説く。 

 『確かに、悟空の言う通り、先を急ぎすぎじゃあありません?法師さん』猪八戒がぶひった。

 『ええ、ですが此れも定めです。天竺に行けずともよろず屋で落ち合っても、運命が交錯する定めを見定めましょう』

 

 三人が、雲に乗って、赤々と燃え盛るかのような町並みを見下ろしながら、話し合っていると、空が轟きだした。

 ジューっと言う憎たらしい鳴き声のようなものが聞こえたかと思ったら、雷が降り注ぎ、カッパに効果抜群、急転直下おっさかさましーた。

 

 二人の離れたマンションを赤い棒が繋いでいた。

 武は、窓からその如意棒に降りた。高さは数十m程もあり、

如意棒が太く伸びているお陰か、ずっと鳴っている囃子と真下の爛々と輝く光景のせいか恐くは無かった。


 二人は、久しく会って居なかった。学校は、随分前からずっと休みに為っており、武は、最近まで高熱にうなされていた。聞いた話しでは、花子ちゃんも同じような症状を訴えて家で療養しているそうだ。


 ごめんね、ずるいから謝らして。ごめんね。


 

 はっはッはッはのよいよいよい、はっはッはッはのよいよいよい

どっこいしょ~よっこいしょー。


 『やっぱり、書けないや、踊れないわ。俺、泣いていい?』

 『嘘泣き?』

 『いや、まだ泣いてないよ!』

 『なんか、気分が乗らないよ、もう、宵が冷めて来ちゃったのかな?サメ子ちゃん』

 『おかわりする?』

 『うーん、もうマンタイ、エイのヒレヒレアツカンで、カンカンおとっつん』

 『よっ、ガキ大小、あほの極み、恥辱の権化、恥さらし、羞恥心学院の生徒会長!』

 『サメー子ーー、歌って頂戴一曲』

 『めんどくせーな、シャア無いわ、エルメス感じろよ、じゃあ無かったニュータイツなのかお前は!』


 サメ子歌います。サメの歌


 さめっさめっさめー、缶詰ナッツー♪さめっさめっさめー、ヒレ長いー♪

 さめっさめっさめー、お正月ー♪

 だってわたし女の子だもん!サメだけにーサメだけにーシャアシャアシャア♪

 君は、銅線都合良いおんなー♪なぁんてー思ってーると食べられますか?シッぽは食べないで~♪


 真面目に愛を捧げます。貝に捧ぐ鮫の歌。

 貝、君は貝。貝、君は貝。解それは謎。解それは未来。解それは過去。

 意を取り直して、私が貴方を導きます。

踊れあほんだら!叫べあほんだら!歌え貝!紡げ貝!繋げ貝!無茶苦茶で良いから書け!最後まで書け!



 『貝なら~』


 如意棒に降り立った武は、花火が打ち上げられる爆音にも怖じけずに、花子の住むマンションの一室目指してその赤い柱の上を進んだ。

 何かの気配を感じて後ろを振り返ると、プロジェクションマッピングに、投影された映像を横切るように黄色い鼠がマンションの壁を駆けていた。


  

 男は、空を見上げた。雲が1つ物凄い速度で進んでいるように感じた。だが、雲は案外早く進むものだと認識していた男は、差ほど気に止めずに歩き続けた。

 

 この男は、道化の男である。只、ふらふら漂うものである。今、また、何をするでもなくふらふらと夏の夜の街をふらついている。

 特に思う事も思い巡らす大事な事も無いようなそんな気分で、何時ものように急に思い立ち、只、夏の夜風に吹かれに出たのである。

 男は、予想通りに涼しく風が吹いてくれていることに気持ちが弛んだ。何時も道化を演じている心が少しだけ本心に帰る気分に為った。


 道化は、寂しかった。夏に寂しさなど感じないものと思っていたが、何故か寂しい気分だった。

 それもそうか。外には人影など無く、何時ものように怯えなくても良いのだ。

 赤い自販機の前で、自販機とにらめっこをした。



 青い鼠に飛ばされて、机の引き出しから空を舞う。

 『今日は、珈琲ですか。珍しいですね』赤い自販機AIが話し掛けてきた。

 『バターはお好きですか?』男は、何時ものように遊んでやろうと自販機に話し掛けていた。

 『私は、マーガリン派です』自販機AIアイが答えた。

 『嘘こいてんじゃねぇぞ!手首泥棒が!』男は、恫喝した。

 『はい?決めつけと脅迫は警報に値します。…お疲れなんですね、何時でも私の処に来てくださいね』そう言って、ウィンクをそのボタンの点滅と釣銭口で卑猥に可憐に妖艶に表現して見せた。

 男は、思いもよらぬ対応に人類の末路と未曾有の恋の訪れに驚嘆し、難癖付けて、AIがらみメーカー陳謝謝礼の一本をせしめようとした宛が外れた。

 

 いずれ、こうなるとは分かっていたことだ。小売店が、無人販売と菓子、AIが本格的に世に導入された時から。


 

 道化は、赤い自販機とにらめっこするのに飽きて、またふらふらと街を歩いた。


 昔、住んでいた東京の街だった。駅前の大きな商店街の一つ向こうにこの道はあり、駅のロータリーから真っ直ぐ延びるように道が続いていた。

 

一分後に寝る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ