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同じことを、考えてた




 じゃあ、当ててみろよ。

 あの子のために正解でも何にも言わないけどな。



 

 なになに?

 その子が体調を崩したときに「大丈夫か?」って声をかけてくれたから?

 それで保健室まで連れていってくれたから?




 ふーん。

 そんな簡単なことで恋に落ちるんだったら保健室はいつもいっぱいだろうよ。




 ……まぁ、でもたしかに。

 あんたの言うとおり、普段あまり人から優しくされたことのない人間は、少しの優しさがこの世界の全てになるっていうのは、よく分かるよ。



 

 ちなみにその子の方がオレよりも先に好きになっていたらしい。



 消しゴムを拾ってもらったとき、きちんと礼を言えてればオレの人生はもっとバラ色だったかもしれない。

 あの子の笑顔がそばにあった人生だったら、きっと。

 




 オレは基本的に自分の人生は自分でしか決められないと考えてる人間だが、好きな人っていうのはその持論すら凌駕する存在なんだって思ってるよ。

 彼女は出来たことないけど、好きな人ができたことはあるからな。

 



 あ、そうそう。

 これは余談だけど。



 卒業式の日、オレはその子からメッセージを書いてもらいたかったんだ。

 ろくに話したこともなかったけど、ずっと好きだったから。

 その子のメッセージだけあれば、それだけでよかった。



 そして幸か不幸か、その子もどうやらオレと同じことを考えてたらしい。

 彼女もオレからのメッセージがほしかったみたいなんだ。


 それでも、やっぱりほしいって言えなくて。

 それでオレはさっさと教室を出て帰ったんだけど、その子は諦めが悪かったんだな。

 なんと諦めきれずにオレの後ろをこっそりとついてきてたんだ。




 オレは全然そんなこと知らなくて。

 で、さっき話したようにオレは公園のゴミ箱に卒業アルバムを棄てたんだけど。

 その子はオレの卒業アルバムをゴミ箱から拾って、迷った挙句家に持って帰ったんだ。




 そのあとそのアルバムがどうなったのかは、残念ながらその先の記憶は転移されていない。

 でも記憶が途切れるところで、彼女はオレの卒業アルバムを抱きしめながら泣いていたんだ。

 理由は、今だったらなんとなく分かるよ。




 オレが逆の立場だったら、やっぱり同じことをしてさ。

 同じように泣いていたと思うからさ。



 

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