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孤独と孤独は足してもゼロにしかならない




 少女の記憶は突然降ってくる。

 飯のときでも風呂のときでも御構い無しだ。

 いわゆるフラッシュバックってやつをイメージしてくれ。



 幸いにも俺はまだ安静が必要で入院中だから、フラッシュバックが急に起きてもそこまで支障はない。

 あんたと話している今この瞬間にだって、俺はあの記憶に引き込まれるかもしれない。


 だからオレが現実からトリップしてたら起こしてくれよな。

 あんたが待ちぼうけくらっちまうだろ?

 あんたはオレと違って忙しいんだから。




 オレなんていつも同じ位置から窓の外を眺めてるだけだぜ。

 なに? 羨ましいだって?

 バカ言っちゃいけねぇよ。



 だってこの時間は戻らないんだぜ。

 昏睡状態で10年後の世界で目が覚めるようなもんだ。

 オレは植物状態で意識だけ持ったまま、時間を浪費して、そのまま世間に叩き出されるんだ。

 でも世間は誰もオレの事情なんて知ったこっちゃねぇんだなこれが。



 毎日死ぬことばかり考えてるよ。

 臓器移植までして何言ってんだってかんじだよな。


 矛盾してることは分かってる。

 でも合理的な思考回路をもった人間なんて周りにいるか?

 あんたも周りからそう思われてるよ。




 おっと、話が脱線しちまったな。

 オレの悪い癖だ。

 



 そのドナーはオレの幼馴染だったらしいんだ。

 オレはその子のことが好きだったはずなんだが名前も覚えてない。

 でも、ガキの頃の片想いなんてそんなもんだろ。


 

 卒業アルバム?

 あれは学校に思い出がある奴だけに意味があるものだろ?

 寄せ書きのページが本当の成績表なのかもな。

 白紙のオレにとっちゃ人間失格の烙印を押された気分だったよ。



 あんなくだらないものは卒業式の帰り道にある公園のゴミ箱に、もらったその日に棄てちまったよ。

 中身だって一度も見てない。

 見たってしかたないからな。



 

 そういえば少女の記憶の中でも、誰かに話しかけられてる記憶はないな。

 オレのと記憶が混じってしまったのか。

 それともコイツもオレと同じように友達がいなくて一人ぼっちだったのか。

 今となっては分からないことだが、思い出したくないことは確かだ。


 孤独と孤独は足してもゼロにしかならないって思い知らされたよ。




 記憶の中の少女は、いつも一人で学校を過ごしていたみたいなんだ。

 楽しくない記憶ばかりもらっちまったよ。



 え? 続きを聞かせてくれ?

 あんたも物好きだな。


 



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