6話 つかの間の休息
駐屯地では、大規模な作戦の兵站が行われているため多くのハルマたちが休みを思い思い過ごしていた。
「シャーマンちゃんおはよぉ~」
食堂に向かっていると、眠そうなスチュアートちゃんが声をかけてきた。
「おはようスチュアートちゃん。眠そうだけど昨日の夜何かしてたの?」
いつもは、私と同じくらいに起きてくるのに今日は少し遅く起きてきた。
「うん…昨日は、装備の調整しながら他の子たちとしゃべってたんだ」
そう言ってまた、大きな欠伸をしていた。
「とりあえず朝ごはん食べに、食堂行こうか」
私とスチュアートちゃんは、食堂に向けて歩き始めた。
「おーい、スチュアートちゃん着いたよ?」
歩いているときも、半分寝ているような表情だった。私たちは、食堂で朝ご飯を頼んで席を探した。
「おーい!シャーマンちゃん、こっち空いてるよ!」
人混みの中、一つのテーブルから声が上がった。フェルディナントさんが大きく手を振っていた。
「すいませんフェルディナントさん、ありがとうございます」
お礼を言って、私とスチュアートちゃんは席に座った。
「いやいや、人は多いい方がいいし…それにアメリカの子だからねぇ~」
そう言ってフェルディナントさんは、いつものように、私の頭をなでてきた。
「もう、ご飯食べるんですからやめてください」
そう言って私は、一枚のトーストにジャムを塗り始めた。
「まったく、フェルディナントのアメリカ好きは治らないな」
前隣りでは、黒髪ポニーテールのハルマがコーヒーを飲みながらドイツ語の新聞を読んでいた。
「色々あったからアメリカの子たちとは仲良くしたいからね…」
色々…たぶんあの大戦のことだろう。
「あぁ!紹介忘れてた、この子はⅤ号戦車パンターね」
フェルディナントさんが紹介すると、隣にいたパンターと呼ばれたハルマが会釈をしたので私も返した。
「そうだみんな!この後PXに行かない?」
このあとは特に予定もないのから、フェルディナンドさんとPXに行くとこにした。
「うん、いいよ」
私が返事をすると、スチュアートちゃんやパンターさんも承諾してくれた。私達は立ち上がって、PXに移動した。
「ここがこの駐屯地のPXか」
PXとは、軍隊の中で運営されている売店のことだ。軽食やお菓子のほかにも、兵装の偽装に使うテープやネット、衣服や下着などの生活用品も売っている。
「あれ?チハたん…?」
入口のそばで、手に紙袋を持って口には何か白い棒みたいのをくわえていた。
「あぁ、シャーマンか何か買いに来たのか?」
チハたんも私に気が付いたのか、こちらに寄ってきた。
「チハたんもしかしてくわえてるそれって…タバコ?」
近づいてみるとチハたんは、口にたばこのようなものをくわえていたのだ。
「あぁ~これ?シャーマンもくわえてみればわかるよ」
そう言ってチハたんから一本もらう。タバコ自体は嫌いということはない、むしろ大戦ときは搭乗員の人がよく吸っていて臭いには慣れてしまったぐらいだ。しかし、搭乗員の一人勝ち車内でタバコを吸いっていたときに、弾薬に火が移り誘爆したことがありそのことが少しトラウマになってしまっている。
「うーん…一回だけだよ」
そう言って口にくわえる…瞬間口の中に、程よい甘さが広がった。
「なにこれ!?甘い…?」
私が首をかしげてると、チハたんが一箱くれた。
「そうだよ、たばこじゃなくてシガレットだよ~…じゃあ僕は先に行くね~」
チハたんはそう言って、PXから離れていった。
「さて、私もなにか買おうかな」
PXは、たくさんの人で賑わっていて緑の制服で埋め尽くされていた。しかし、私たちとは違う水色の制服を来た人達が入ってきた。
「フェルディナンドさん、今入ってきた水色の制服の人は何なんです?」
近くでビールを見ていたフェルディナンドさんに聞いた。
「ん?…あぁ、あれば空軍の人達だね。この近くに滑走路があるからかな」
そう言うとフェルディナンドさんは再び、棚に目をやっていた。空軍の人たちも人混みに紛れて、ここからでは見えなくなってしまった。
「シャーマンちゃんってバウムクーヘン食べれる?」
空軍の人達に目を引かれていると、フェルディナンドさんが箱に入った丸い大きなバウムクーヘンを持っていた。
「え!?バウムクーヘンですか?食べれますけど」
フェルディナンドさんの手には、ビールやおつまみのほかにも白い紙に包まれた何かが抱えられていた。
「よし!シャーマンちゃんあとで私の部屋で前夜祭するよ~」
そう言って私は、フェルディナンドさんたちに連れられて部屋に行った。
これから始まる戦いが大きな別れ道になるとはまだ想像もしていなかった。
次回から殲滅作戦の話に入りたいと思っています。
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