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77・交易の始まり

 新婚旅行から戻り、俺はリアンの元へ。


「や、おかえり」

「ただいま……なんか違和感あるな」

「あはは、そうだね」


 リアンは、数人の護衛だけを置いて、調査隊を帰した。

 帰りはカナンの警備隊と一緒で、さらに新設した架け橋を使って帰った。その大きさ、頑丈さに驚いていたらしい……カナンの技術力は、七十二の領地でも突出しているとか。

 アーロンには、俺の手紙を持たせた。返事は、俺が直接聞くことになっている。


「アローが留守の間、この集落の産業を一通り見せてもらったよ」

「ああ。っと、旅行中に大量の薬草が自生している森を見つけたんだ。ここから近いし、警備隊や狩人たちと一緒に調査するのもいいかもな」

「薬草か。いいね、七十二の領地で薬草栽培している領地は今のところなくてね。覚えてる? アイニー家のシャロン。彼女の領地でも栽培の研究しているけど、うまくいってないみたいなんだ」

「シャロン……懐かしい名前だな」

「うん。その森の規模は見ないとわからないけど、自生した、なおかつ安定した薬草の供給があれば、彼女も喜ぶかもね。それに……マリウス領地は広大だ。日当たりもいいし、水はけもいい。その森を調査して、自生する薬草と同レベルの薬草を栽培できれば……これは、エリスの担当かな」

「エリス?」

「エリス・パイモン。七十二の領地で最も農耕に力を入れているところさ。あったことあるだろ?」

「……ああ」


 思いだした。パイモン、エリスってあの……おっと、巨乳の子とは言わんぜ。


「さて、その薬草の森も調査させてほしいな。そこを調査すれば、マリウス領地での産業はだいたい把握できる。きみが旅行中に、調査報告書もまとまったしね」


 リアンが残ったのは、本格的な交易をするためにカナンの産業を調査するためだ。そして、カナンの文官……というか、書き物が得意な人たちに、文官についての心得なども享受してた。ありがたい。


 そして一週間後。

 薬草の自生している森は『薬草の森』と名付けられ、カナンから街道を伸ばして直通の道を作ることになった。ドクトル先生も驚いていた……カナンで採取できる薬草のほとんどが生えているそうだ。しかも大量に。

 これもルナのおかげかな。とりあえず、ありがたい。


 ◇◇◇◇◇◇


 俺は、旅の準備を終え、荷物を眺めていた。

 それを見たアテナは首を傾げる。


「なーに荷物眺めてんの?」

「そりゃ、明日から久しぶりの旅……というか、里帰りだぞ。お前は準備終わってるのか?」

「とっくに終わってるわよ。ルナも終わって寝てるし」

「ああ……」


 今回、俺とアテナとルナ、ミネルバ、リアン、リアンの護衛でセーレまで行く。

 護衛が少ないことをリアンは心配していたが、アテナが中型魔獣を一撃で一刀両断するのを見て驚いていた。まあ、戦闘に関しては俺は心配していない。


「アテナ、確認するぞ。今回の目的は、セーレへの報告、それと……」

「サリヴァンでしょ。アミーの力でドン底みたいだけどね。あんたも殴りやすいんじゃない?」

「ああ。お前のおかげで、俺もけっこう強くなったしな」


 腕に力を込めると、力瘤が盛り上がる。

 この数年、身体は毎日鍛えていたし、アテナから格闘技も教わった。

 ジガンさん、ゴン爺にはまだ勝てないけど……リアンの護衛くらいなら、二人同時でも相手できる。俺がどのくらい強いかよくわからないけど、リアン的には『マルパス領地にいる騎士よりも強い』らしい。


「そういや、リューネたちは?」

「……知らん」

「ふーん。私、何度か様子見に行ったけど、モエが畑耕してるの見たわよ」

「…………」


 リューネは、心を病んだらしい。

 俺との再会、そして断罪、和解を心の奥底で望んでいたようだが、俺が無関心を貫いたことで、自分が眼中にないと悟り、精神が耐え切れなかったそうだ。

 今は、カナンの片隅に家を建て、モエとアミーが畑で野菜を作って暮らしている。

 集落の若い狩人や独身男性がモエたちのところに挨拶に行ったようだが、本当に挨拶だけで相手にされないようだ……若いし、見てくれは美女だし、若い連中が気になるのもわかる。

 だがもう、リューネは結婚なんてしないだろうし、モエもしない気がする……アミーとかいうのはわからないけど。


「あ、そうだ。アミーだけど、余計なことしたら私がブチ殺すって脅してあるから、留守にしても心配ないわよ。今、アミーの神力はアスモデウス領地にあるみたいだし」

「よくわからんけど……まあ、わかった」

「うん。さーて、そろそろ寝よっか。明日から久しぶりの旅だしっ!」

「はいはい。じゃ、寝るか」


 明日から、久しぶりの旅だ。

 セーレまで、以前は一か月ほどかかったが、最短ルートで行くので十日ほどだ。

 移動は、リアンは馬車。護衛は馬に乗り、俺とアテナとルナはダイアウルフ三兄弟に乗って行く。ユキとシロはカナンで留守番だ。

 俺たちはベッドに入る。いつもは愛し合うが、今日はなし。


「セーレか……俺の故郷」

「帰りたい?」

「まあ、帰省って意味ではな。今の俺の故郷はマリウス領地だよ。お前やルナと出会った場所……それに、今の俺を見たら、父上はきっと『お前のあるべき場所に帰れ』って言いそうだ」

「そ。じゃあ、アーロンだっけ? その人にはなんていうの?」

「……それは、俺がアーロンに言うよ」

「うん。ま、私はあんたを守るだけよ。やりたいようにやりなさい」

「ああ。ありがとう、アテナ」

「ふふん……する?」

「…………」


 今日はしないつもりだったけど……まあ、無理だった。


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日。

 俺たちは、集落の入口に集まっていた。

 見送りに、ジガンさん、ゴン爺を始め、各区画の代表が集まっている。


「じゃあゴン爺。あとは任せるよ」

「うむ。気を付けてな」

「うん。じゃあ皆さん、行ってきます」


 俺はみんなに頭を下げ、ダイアウルフ三兄弟のブランに乗る。

 リアンを乗せた馬車、護衛の人たちの馬が歩き出すと、オオカミたちも歩き出す。


「いってきまーす!!」

「いってきまーっす!!」


 アテナ、ルナも集落に向かってブンブン手を振った。

 集落がどんどん遠くなる……これから、セーレに向かうんだ。

 俺は、ブランにお願いしてリアンの馬車に横付けしてもらう。窓が開くと、リアンが言う。


「セーレまで十日ほど。道中は危険もあるけど……まあ、大丈夫かな」

「ああ。アテナもいるしな。ふぅ……」

「……緊張するかい?」

「まあな。セーレ……正直、もう一度行けるとは思っていなかった」

「すごく発展しているよ。ふふ、驚くだろうな」

「……ああ」


 俺の故郷、セーレ。

 交易の始まりであり、新たな道の始まりでもあった。

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