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超辺境の領主アローの生活~濡れ衣を着せられ追放されましたが、二人の女神と新生活を送ります~  作者: さとう
第三章・【アテナとルナ】

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22・アテナの実力、ルナの力


 翌日。アテナとジガンさんは朝早く狩りに出かけた。

 俺はルナの子守りとさっそく畑に手を付ける。そのためにまずは倉庫から道具を引っ張りだし、仮の準備をする。

 

 「さーて、ルナはこっちな。よーしよし」

 「あぅ~」


 家の前の屋根の下に、ジガンさんから貰ったベビーベッドを置く。

 少し前までレナちゃんが使っていた物で、破損もガタもなくしっかりしてる。これなら問題ないだろう。


 俺はクワなどの道具をチェックし、畑の状況を見る。

 ジガンさん曰く、前に住んでた家族が耕した畑なので、地面に岩や石が埋まってることはないそうだ。このままクワを入れても問題はない。山育ちだし体力には自信があるし、これからのために身体を鍛える意味で畑仕事は必要だ。

 斧もあるし薪割りも出来る。今は働きつつ身体を鍛えよう。


 「ルナ、俺……頑張るからな」

 「あぅ?」

 「よしよし……」


 ルナをなでつけ、さっそく畑仕事を始めるか。

 上着を脱ぎ捨て、シャツ一枚で頭に手拭いを巻く。


 「……そういえば、リューネに言われたっけ」



 山仕事が似合いそうな貴族……あの時は笑ってたな。



 **********************



 まぁとにかく畑だ。広さはかなりあるし、今日一日で終わるとは思えない。でもまずは耕して行かないとな。全ての始まりの一歩だ。


 「よーし、行くぞっ!!…………あれ?」


 振り下ろしたクワは土に刺さる………ことは無い。

 何か硬い物にぶつかり、俺の手を痺れさせた。


 「いてて……何だよこれ」


 俺は痺れた手を押さえ、埋まってる物の正体を確かめるためスコップ持ち替える。クワの感触からして石のような硬さだった。

 振り下ろした先に石があるとは。しかも最初の1振りからなんてついてない。

 

 「これか………ったくイッテーなぁ……」


 大きさが握り拳よりやや大きい塊だった。色は黒くキラキラしてる。どうも普通の石には見えないな。


 「まぁいいや、とにかく仕事仕事」


 石を放り投げ再度クワを持つ。

 場所を変えて再度クワを振り下ろすと、またもや硬い感触が。

 まさかと思いスコップに持ち替えると、今度は白っぽい石が出てきた。


 「おいおい、元は畑だったんだろ……なんでこんなに石が埋まってるんだよ」


 俺はイヤな予感がして何カ所もクワを振り下ろしたが、どこも似たような感じだった。

 黒っぽいキラキラした石から始まり、青っぽい石や白っぽい石、挙げ句の果てには金属の塊も出てきた。

 どうやらここは岩石地帯で、畑には適さない土地らしい。


 「………マジかよ」


 結局、半日費やして岩拾いになってしまった。

 俺が掘り出した石や岩は、家の脇にある木箱の中に全部入れた。


 「はぁ………最初からこれか。先が不安だぜ……」

 「う、ぅぅ……うぁぁ~んっ!!」

 「おっと、どうしたルナ。ちょっと待ってろよ」

 「あぁぁぁぁ~んっ!!」


 どうやらオシメらしい。俺は川で手を洗い、清潔な手拭いでルナのオシメを変える。

 それと同時に、お昼が近いのでルナのご飯と俺の昼を作り、ルナをあやしつつ食べさせた。


 「ほ~ら、もぐもぐ」

 「あぅあ、あぅ~」

 「よーしいい子だ。よ~しよ~し」

 「ふぁぁ……」


 ルナを抱っこして撫でると、お腹いっぱいなのかすぐにボンヤリとする。

 ベビーベッドに寝かせてレナちゃんから貰った人形を添えると、すぐにぐっすり眠ってしまった。

 この子が『愛と幸運の女神フォルトゥーナ』なんて、未だに信じられん。


 「さーて、もう一踏ん張り」



 俺は再度頭に手拭いを巻き、畑に向かった。



 **********************

 


 お昼が終わり休憩も終わった頃、アテナたちが帰ってきた。


 「たっだいま~~っ!!」

 「おう、おか……なんだそりゃ!?」

 「どーよ、スゴいっしょ!!」


 アテナは、台車を引いて帰ってきた。しかも台車には肉がこんもりと乗っている。

 どう見ても大物を仕留めたようにしか見えない。すると、アテナの後ろからジガンさんが現れた。

 手には細い木に枝が何本もある……なるほどね。保存用の肉を作るために燻製にするための木の枝か。


 「アロー………この子は何者だ?」


 その声には、驚愕と困惑が表れていた。

 まぁなんとなく想像は付く。


 「まさか、1人で中型魔獣の群れに突っ込み全て切り伏せるとは……この子はまるで戦神のようだった」

 「失礼ね!! 私は女神だっての!!」

 「ま、まぁとにかくお疲れ様です。ジガンさん」

 「ああ。見ての通り大漁だからな。肉の燻製の作り方はわかるか?」

 「はい。ウッドチップで燻すんですよね」


 俺の視線はジガンさんの手に。どうやら意図を理解してくれたのが嬉しいようだ。


 「ああ、量もあるし手伝おう。ウチの分はローザに任せてるから心配するな」

 「ありがとうございます」

 「ちょっとアロー、畑はどうしたのよ、全然進んでないじゃない!!」

 「仕方ないだろ、この畑、やけに石や岩が多くて、掘り出すだけで1日掛かったんだよ……」

 

 仕方ないとはいえ罪悪感はある。張り切ってたのに全然進んでないもんな。


 「ん?……おかしいな。そんなことはないハズだが……」

 「え、でも……こんだけの石が埋まってましたよ?」


 俺は石の詰まった木箱をジガンさんに見せると、ジガンさんの顔が驚愕に変わった。


 「………アロー、これはこの畑からか?」

 「え? はい……」

 「…………待ってろ」


 それだけ言うと、ジガンさんは行ってしまった。

 俺とアテナは顔を見合わせ、取りあえず燻製を作る準備をする。


 「ねぇ、ルナは?」

 「寝てる。かわいいもんだな」

 「でしょ~? 赤ん坊だから女神の記憶はないけど、ルナはとってもいい子なんだから。いっつも私の後をくっついて………まぁそれでこんなことになっちゃったんだけどね」

 「完全にお前のとばっちりだよな」

 「う、うっさいわね。反省してるわよ!! でも悪いのは私だけじゃなくてアラクシュミー……アミーも悪いんだから!!」

 「はいはい、そのアミーとか言うヤツはどこかに居るんだよな?」

 「まーね。どっかで生きてるでしょ」


 あんまり興味なさそうだ。仲が悪いのかな。

 薪に火を付けて小屋にあった古い鍋に木の枝を入れて火に掛ける。肉を吊して煙で燻せるように、小屋にあった廃材で肉を吊せる枠を適当に組み立て、周囲を古い床敷で囲む。簡易的だがこれで完成だ。


 「じゃあ作ろっか」

 「ああ。今日は奮発して肉を焼こうぜ。アテナの狩り成功を祝ってな」

 「お、いいわね~」


 なんだかんだでコイツとは気が合いそうだ。

 すると、ジガンさんが帰ってきた………ドンガンさんを連れて。


 「ドンガン、コイツだ」

 「ったく、なんだよジガン。ワシは忙し………」


 ジガンさんたちは、俺が集めた岩の前に。

 すると、面白いように顔色が変わる。なんだよ一体。


 「………おいアロー、コイツをどこで?」

 「え? いや、畑を耕そうとしたら、いっぱい出てきたんで……」

 「マジか……おい、ラゴス一家はこの事……」

 「知ってたのか知らないのか、死んでしまった今となってはわからん。だが、これはとんでもない発見だな」

 「ああ。驚けよアロー、こいつはとんでもないぞ」

 「は、はぁ……?」

 「どーしたのよ、一体?」


 俺とアテナは再度顔を見合わせる。するとドンガンさんが少し興奮したように言う。


 「コイツは鉱石だ。黒いのがダマスカス、青いのがミスリル、おいおい……この金属はレアメタルじゃねーか!? がっはっはっ!! こりゃスゲぇぞ!!」

 「ええと、まだまだ出てきますよ? それこそこの辺り一帯がそうなんじゃ……」

 「うーむ、どうやら畑は偽装だったようだな。この地面の下は鉱石土みたいだ」

 「ああ、ゴン爺に報告しようぜ。こりゃ面白くなってきたぜ」

 「すまんなアロー、燻製は任せるぞ」


 そう言ってジガンさんとドンガンさんは行ってしまった。

 どうやら、この石や岩は鉱石らしい。


 「………ふん」


 鉱石と聞くと、サリヴァンを思い出す。

 でも、集落のためになるならそれも仕方ないな。


 「ふふ、どうやらさっそく来たみたいね」

 「は? なにがだよ?」

 「決まってるじゃない、ルナの幸運を呼ぶ力よ!!」



 この時はまだ知らなかったが、これは始まりに過ぎなかった。

 

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