20・落ちた理由
「簡単に言うと、至高神様のお社に生ってる至高の果実をちょ~っと貰ったのがバレちゃったのよ。それで怒られちゃって……罰として人間として地上で一生を過ごせなんて言われちゃってさ……っていうか、悪いのは私じゃなくて、アイツが転んで物音を立てるから……」
何を言ってるのかさっぱりわからんが、1つだけわかった。
「あのさ、貰ったっていうか盗んだんだろ?」
「うぐ、そ、そうともいうわね。それでその、アイツとケンカになってさ、人間界に降りる時に受肉の魔法を使ったんだけど、そこにたまたまルナが巻き込まれちゃって、私はこんな中途半端な年齢に、ルナは赤ちゃんになっちゃって」
「え、じゃあルナはお前の失敗の被害者なのか?」
「し、仕方ないじゃない!! ルナが勝手に付いてきたのが悪いし!! しかも降りた場所が中型魔獣の背中だし……ホンット、ついてない」
「………」
何かマジっぽいな。
もしかして本当に女神なのかな……いや、まぁいい。
「お前の話を整理すると、お前が至高神のお社の果実を盗んだ、それで至高神に怒られて罰として人間に受肉して一生を終えろと、そんで人間に受肉する魔法を使ったらルナが巻き込まれて、ルナは赤ちゃんに、お前は俺と同い年くらいの年齢になった、それで人間界に降りた場所が中型魔獣の背中で、そこで俺に会って今に至る……って感じか」
「そう!! その通り!!」
「………」
嘘だろ、いやマジで。
そもそも、罰として人間になれって何よ。一生を終えたら帰れるってことだろうけど、神界とやらはよっぽどヌルい場所らしいな。
「そもそも、なんで果実を盗んだんだよ」
「そりゃ至高の果実は新界でも滅多に味わえない極上の果実。甘いモノ好きの私がずっと狙ってたモノで、ようやくチャンスが来たと思ったらアイツに邪魔されて」
「……なるほどね。つまりお前の食い意地が原因か」
「……ぐ、否定できないわね」
「それで? 人間として死ぬとどうなるんだ」
「神界に帰れるけど、天寿を全うしないとすぐに戻されちゃうのよ。だから自分で死んだり出来ないの」
「なるほどね……」
信じるか信じないかはともかく、事情はわかった。
要はコイツの自業自得だ。同情出来ないな。
「さ、次はあんたの番よ」
「ああ、聞いてもつまんないからな」
俺はここに来る経緯を説明した。
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「ふーん、あんたも苦労してんのね」
「……ホントにそう思ってんのか?」
アテナはルナを揺らしながら答えた。ルナはキャッキャしながら楽しそうに笑ってる。
話はわかったし、これからの話でもするか。
「で、どうする? 行くところがないならここに住むか?」
「………なに、あんたもしかして、女に飢えてるの? 言っとくけど私はあんたに身体を許したりしないからね」
「………じゃあいいわ、さよなら」
「ま、まぁ物件としてはいいわね。広さも申し分ないし、部屋は余ってる?」
「………」
「わ、わかったわよ。謝りまーす、ごめんなさーい」
「お前マジでムカつくな」
顔は可愛いけど性格は最悪だ。ヘンなこと言わなきゃよかった。
でもまぁ、行く場所なんてなさそうだし、マリウス領からは出られない。いくらコイツが強くても、2人で生きていくのは辛いだろう。
「子供部屋は空いてるから、そこを使ってもいい。その代わり、仕事はしてもらうけどな」
「仕事って?」
「……まだわからん。だけど、仕事をしないと食べられない、生きていけない」
「確かに、人間って燃費悪いし、1日に3食も食べなくちゃ行けないしねー」
「そういうことだ。それに、俺にはやることがある。力を付けないといけない」
「あー、復讐ね。それに関しては私も手伝ってあげる」
「……は?」
ワケ分からん。なんだよ急に。
「あのね、私は『戦いと断罪』を司るのよ? あんたの話が真実なら、裁くべき人間が居るってことでしょ」
「そうだけど……」
「だったらそれは女神である私の仕事でもあるわ。あんたの復讐という名の断罪、私が手伝ってあげる」
「そ、そりゃどうも」
「ふふん。任せなさい」
ぐいっとアテナは胸を張る。女神だからか、プロポーションも抜群だ。
こいつの理屈は知らないけど、手伝ってくれるなら利用してやる。
「こっちにはルナもいるしね。案外早くケリが付くんじゃない?」
「ルナ? ルナが関係あるのか?」
「もちろん、だってルナは『愛と幸運の女神』だもん。一緒に居るだけで幸運が訪れるわよ」
「……そりゃありがたいな。頼りにするぜ」
「ええ。そうしなさい」
とりあえず、話はこんなところか。
まぁ、正直なところ1人じゃ淋しかったし、同居人が増えるのはありがたい。
「さて、それじゃあ……改めてよろしくな」
「ええ、よろしくね」
こうして、集落に来て1日で同居人が出来た。
女神であるアテナとルナ。見た目は同世代の少女と赤ちゃんだけど、気兼ねなく話せるのはありがたい。
「さて、これからどうする?」
「まずは、集落で仕事を探そう。明日食べるモノもないし、お前の事を集落の人に紹介しないとな」
「えー、別にいいわよ。面倒だし」
「そういう訳にいくか、行くぞ」
まずは集落のことをもっと知らないと。
名目上は領主だし、人々の暮らしを知りたいと思ってる。
サリヴァンやリューネたちに復讐するために、やることはたくさんある。まずは生きるために力を付ける。
そういえば、アテナはさっきヘンなこと言ってたな。アイツがどうとか。
「そう言えば、アイツって誰だ?」
「え、ああ、私の知り合いよ。アイツも一緒に落とされたけど、どこに行ったかはわかんない」
「じゃあ、地上に降りたのは3人か」
「まーね。でも、アイツが歩き回るとマズいかも、本人もわかってるけど、どうしようもないのよ」
「何だよ、そんなにヤバいのか?」
「うん、まぁね」
アテナは面倒くさそうに言った。
「『貧困と不幸の女神アラクシュミー』って言う、猫かぶり女よ」
新連載始めました。
異世界配達~世界最強のトラック野郎~
https://ncode.syosetu.com/n3439eq/
今回は異世界トラック物です。スローライフ系を目指して書きました。
寝取られざまぁは……実は、予定に入ってます。懲りないヤツだと言って下さい。
更新はゆっくりになると思います。のんびりお付き合い下さい。
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