世知辛サンタの忘年会
むしゃくしゃしてやった。後悔はしてない。
サンタクロースの忘年会
サンタクロースは実は忙しい、春から秋にかけては全世界の子供達のプレゼントリサーチと、より人間に見つからず早くかつ安全に使えるソリの開発。そして何よりもトナカイ達の体調管理も大切な仕事だ。
これらの業務を現世での仕事で金銭を稼ぐ合間、人間に見つからずに行い、クリスマスまでに全てのプレゼントを揃える必要があるのだ。
だからこそ、死ぬほど忙しいクリスマスを超えた年末はサンタにとっての休暇、最高の忘年会日和なのだ。
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12月26日 都内某所 居酒屋にて
マスターサンタ
「今年も無事にクリスマスプレゼントを配り終えた事を祝って!!!!」
サンタ達
「「「「「「「「「乾杯!!!!!!」」」」」」」
サンタヨーロッパ担当
「いやぁ、今年も無事に追われてよかったよかった。しかし、最近の子供達のお願いごとは全く大変だったよ。あ、アジアサンタサラダの取り分けありがとう。」
サンタアジア担当
「いえいえ。そうですねぇ、ただでさえ昔と違って現金で購入しなきゃいけないから、クリスマスまでに結構な金額を稼がないといけないのに......、たまに無理なお願いごともありますからねぇ....」
サンタ北アメリカ担当
「うむうむ、現世の仕事はワシらには些か辛いところがあるが.......良い子らが喜ぶならまぁ良い。じゃが....世界滅べとか、恋人欲しいとか、子供欲しいとかは些かきついのぅ」
(グビっと豪快にビールを煽る北アメリカサンタ)
サンタヨーロッパ担当
「世界滅べって.....その子何があったんだ....」
サンタアジア担当
「恋人.....最近の子供達はませてますねぇ....」
サンタアフリカ担当
「アメリカ担当さん、それでそのお願いどうしたんですか??」
サンタ北アメリカ担当
「うむ....無理なもんに発動できるサンタ拒否権を発動してもよかったんじゃが.....。出来るだけ叶えてあげたくてのぅ 」
サンタs
「「「「「「ふむふむ」」」」」」
(メモを取り出すサンタ達)
サンタ北アメリカ担当
「子が欲しいと言うた子の両親に媚薬盛ってのぅ.....
地球滅べの子には暗黒卿なりきりセットを送って....
恋人欲しい子にゃ乙女げぇむとやらを枕元に置いといたのぅ 」
(ドヤ顔をする北アメリカサンタ)
サンタアジア・ヨーロッパ担当
「「それって......犯罪.......」」
サンタ北アメリカ担当
「うむ、ただでさえ ふほうしんにゅう とかいう罪を犯しておる身じゃ。バレなければいいんじゃよ、バレなければ 」
サンタアフリカ担当
「なるほど。バレなければ、子供らの願いを叶えるためならちょっとしたことはヤっていいと」
(真剣にメモるアフリカサンタ)
(サンタアジア担当とヨーロッパ担当は顔を見合わせる)
サンタヨーロッパ担当
「......に、にしても、南半球担当のサンタはいいね。真夜中にソリの上で受ける風は老骨には堪えるよ 」
サンタ南アメリカ担当
「いやぁ、そうでもないっすよ。たまに古っぽい考え方の坊ちゃん達にはウケがすこぶる悪いっすから。あ、この唐揚げもらっても?よっしゃあざーっす!」
(ひょいと隣のテーブルから顔を出す南アメリカサンタ)
サンタアジア担当
「ウケって?」
サンタオーストラリア担当
「アロハサンタ.......ではなく.....赤いサンタ服を着ろよ......」
サンタ南アメリカ担当
「モグモグモグ....んぐっ、そうなんっすよ、なんかあの暑っ苦しいの着れってうっさい奴らがたまにいるんすよ、あとスポーツカーじゃダメだトナカイとソリにしろとか」
(オーストラリアサンタがコクコクと頷く)
サンタオーストラリア担当
「あっち、暑い......トナカイ....無理」
(メモを取っていたアフリカサンタが顔を上げて頷く)
サンタアフリカ担当
「そうなんですよ....最近需要が増してきた南半球サンタですが....なかなか伝統的なサンタができなくて....。
最近南半球サンタ協会で歴史が浅いなら逆に新しい乗り物を考えようってなったんですが.... 」
サンタアジア担当
「古いの好きな方...サンタ側にもいますからねぇ....」
サンタオーストラリア担当
「さじ加減.....難しい」
サンタ北アメリカ担当
「うむ、南半球でもじゃったか。こちらでもそれが問題になっておるよ」
(ビールを片手に赤ら顔のサンタは深刻な顔をする)
サンタヨーロッパ担当
「あぁ、若いサンタが加入してるトナカイ愛護団体とかいう 」
サンタアジア担当
「あぁ....あれですか...ムチで操縦するのは虐待だとかいう.... 。気持ちはわからないでも無いですが....」
サンタアフリカ担当
「トナカイさん達に手伝ってもらわないとサンタって成り立たないですよね....半分くらい 」
北半球サンタ
「「「そうなん (だ じゃ です )よねぇ」」」
(ワインを片手に一人黙々と食べていたオーストラリアサンタがポツリと呟く)
サンタオーストラリア担当
「サンタって世知辛い.....」
サンタs
「「「「それな。」」」
こうして、サンタ達の忘年会の夜はふけていったのである。
サンタ:現世に存在する半分精霊みたいな存在。平時にお金を稼いでクリスマスにいい子に欲しいものを送る健気な存在。全世界に多数存在し、各区間にメイン担当サンタがいる。イメージがイメージなため若いサンタはもっぱら助手扱い。むしろ60過ぎてからが本番。
*この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません