2-6 衝撃波
2-6 衝撃波
福島の浜通りに北朝鮮のミサイルが着弾したとき、最初はそのミサイルの爆発によるきのこ雲だけが観察されたという。やがてゴウーッという音がしたとかしないとか明らかではないが、ミサイルが原発の廃墟の炉心に与えた重大な影響だけは噂すらも凌駕していたという。臨界の限界を超すことを待っていたように炉心を含む全ての核燃料や核廃棄物が一度のようにそして幾度かのように爆発を起こしたのだという。その規模は平時においてリトルボーイの500倍とも4,000倍とも推定されていたが、それはシステム化された爆弾のように一度に爆発したときの推定であった。原発は一度に一気に爆発するように施工されていない。むしろ爆発しないように設計されている。これが何を意味するのかは現場が物語っていた。
一度目の爆発で形成された爆風は通常の爆破のように惨事を引き起こそうとしていた。ところが二度目以降の一度目より強烈な爆発は一度目の爆風を追い越す勢いでそれを押し広げようとした。押し広げる作用は当然反発を伴い、二度目の爆風の一部は爆発地点に向かってくる。この繰り返しにより真空と超圧縮された空気団が形成されていった。さらに圧縮された空気団は爆発の熱量により膨張しようとし、結果を予測させない自然の猛威と化したのだった。このような連鎖が僅か数秒、あるいは1秒に満たない間に行われた。超圧縮された空気団の一部は地上を襲い、鋼鉄さえも切り裂いた。
地下においては爆発の衝撃は逃げることができず、後から後から襲う衝撃についにはドリルのような衝撃波さえも生み出していった。この衝撃波は通常なら液状化現象を起こさないような岩盤までをも砂状化させ、土砂崩れを巻き起こし、大規模な陥没も起こしながら広がっていった。この段階で何%の爆破源である核物質が消費されたのか予測はつかないが、ただ未曾有の惨事の序章であることだけは確かなようであった。
この衝撃波が活断層に干渉したらしい。ここで問題になるのが衝撃波の進行方向と活断層の形成方向であるが、運が悪いことにほぼ直角に衝突したらしい。何事もなければ衝撃波は活断層に吸収されただろうが、活断層は大きなズレを引き起こしてしまった。このズレは地震の衝撃波と化する。原発の爆発による衝撃波と比べることは難しいが、相当大きい衝撃波だったはずである。この衝撃波が元の衝撃波を増幅してしまった。このようにして、最初の衝撃波は堅牢な岩盤を砂状化して液状化現象を起こし、活断層に干渉しながら日本海に抜けて行った。それ以外の衝撃波はある一定の被害を引き落とした後沈静化するのだが、この被害も大きかった。とはいえやはり大きな問題は日本海に抜けた衝撃波だった。未曾有の液状化現象による地盤沈下と活断層による地震が相まって衝撃波の走った通路はほとんど海に中へと陥没していた。日本海に抜けた地点も問題だった。狙ったように柏崎刈羽原発の付近を抜けてしまった。柏崎刈羽原発もメルトダウンを起こし衝撃波を四方八方にまき散らしたが、その衝撃波の一部は福島からの衝撃波と衝突し相殺させたことは僥倖といえたのだが、その相殺時の衝撃は地形をさらに深刻な様相と化するものであった。




