2-4 東北救助作戦
2-4 東北救助作戦
想は京里守人という名の現当主にいろいろと尋ねていた。尚、当主になると守人と名乗るのが仕来りなのだそうである。
「高天原というとあの天照大神とか月読とか素戔嗚の?」
「そのようでございます」
「へ?そのようでということははっきりしないのか?」
「わたくしどもは行ったことがありませんので...」
「なるほど。しかしここは関所なんだよな?」
「それは間違いありません。そしてそれを裏付けたのは真の主様方です」
「それはどういう意味だ?」
「あの部屋の通路は一度たりとも誰かが通ったことはありませんでした。通路に関する文書にはあの通路から現れる方こそ真の主であると記されています」
「文書?百万年前の文書があるのか?」
「文書と言っても、現世の紙ではございません。このようなものです」となにやらペンシル型の器具らしきものを差し出した。
「これをどうするのだ?」
「振ってもよろしゅうございますし、空中になぞる風をしてもようございます」
想は、言われたようにしてみたが何も起こらない。
「何も変化はないぞ」
「お付きの方にはその力が備わっていないものとお見受けします。真の主様なれば...」
「月夜、やってみてごらん」
月夜が空中に何かをなぞる風をすると、
「何か伝わってくる」
「そうです。それを聞く、あるいは見るのです」
「ああ、様々な言葉や模様が...」
「わかるのか?月夜」
「うん。わかるよ、おじいちゃん」
「とこういう仕掛けですな」
「仕掛けはわかったが、こういうものが数多く存在するのか?」
「ぎょうさんございます」
「なるほど、その現代の技術とかけはなれた装置の存在が高天原の存在を信じる理由なのだな」
「そうでもあり、そうでもありません。わたくしらは生まれたときから躾られとりますから...」
「なるほど。鰯の頭も信心からということか。いや、鰯の頭よりは遥かに高度な技術か...ところで高天原に行くためにはどうすればよいのだ?」
「真の主様の鍵とわたくし共の5つの鍵が必要になります」
「5つの鍵?」
「そうでございます。わたくし共には4つの分家がございましてそれぞれが1つずつ鍵を持っております」
「その分家はどこにあるのだ」
「大分県の宇佐、島根県の出雲、奈良県の大和、秋田県の鹿角にございます」
「鹿角か。鹿角とは連絡が取れるのか?」
「連絡を取っているのですが、放射線の影響と思われる混線が酷い状況です」
「放射線?」
「通信機は電磁波仕様になっておりますので」
「なるほど、進んでいるな」
「鹿角の分家自体の被害はさほどではないようですが、周囲は酷い有様のようです」
「実は、ここに来た理由は東北を救う手段を探すためなのだ」
「そうですか。ようやく真の主が現れた理由がわかりました」
「でだ、何か手を思いつくか?」
「派生次元に人々を脱出させる手が一番かと存じます」
「できるのか?」
「技術的には可能性はありますが、いくつか問題があるかと...」
「問題を列挙してみてくれ」
「1つは派生次元では実生活ができません。人工冬眠としての脱出になりますが、人々を何と言って納得させるか問題です」
「わらはが総理を動かそう。総理なら国民を騙すのが得意じゃ」とあの老婆が請け負った。老婆の正体は追々明かすとして、彼女は歴代の総理の相談役を務めていた関係で総理とは太いパイプを持っていた。
「1つは人工冬眠の前に必要な健康チェックの人手が足りません。それに多くの人々の治療も必要になると思われます」
「とりあえず人工冬眠を優先させて治療は後にできないのか?」
「前例がないので保証ができません」
「東北の人口を1千万人として健康チェック+治療+人工冬眠でどれだけの時間が必要なのだ」
「大和の分家に頼ってみるか。あそこは医学の最先端じゃからの」
大和の分家は大学の医学研究とは別に最先端の医学を研究しているのであった。




