「空の向こうに行きたかった少年」
夢があった。 幼い時からの夢が。 俺はパズーになりたかった。 もっと正確に言えばラピュタに行きたかった。 けど、人生そううまくはいかないもんで、まず親に反対された。 しかもラピュタに行きたいって部分を反対されるなら反論も考えてたけど、親がダメって言ってきたのはラッパを吹ける様になりたいってところだった。 母さんの中でオーケストラをやる訳でもないのに金管楽器を吹いてる人間は不良認定されるからって理由だった。 でもそんな理由じゃ諦められる訳もなく、結局バイオリンを習う事になった。 バイオリンなら母さんも反対しないし、俺は俺で、とにかくラピュタに行くにはパズーに近ずくしかないからと、ラッパがダメでも何かしら楽器をやらなくちゃって思っていたから。 そこから5年はバイオリンをひたすら勉強した。 先生には始めて直ぐに天才だなんて言われたけど、幾ら頑張ってみても鳩を楽器ので集められないから死ぬほど勉強した。 そして、バイオリンを習い始めて5年。 俺は、ある事実に気がついた。 そもそも俺は、鳩達に楽器の音に反応するよう仕込む努力を何もしていなかった。 ただ、家の屋根の上でバイオリンを弾いただけだった。 その事に気が付いた俺は、直ぐに図書館で鳩を調教する為の本を借りた。 鳩にエサをあげたり、音とエサを関連付けるよう仕込んだり。 努力のかいあって、一年もすると数羽の鳩が音で集まるようになった。 俺は心底喜んだ。 でも、その喜びは長続きしなかった。 音で集まってくれるようになった鳩達が、寿命で次々に死んでしまったからだ。 最後の一羽が死んでしまってから二年。 前の様に上手くはいかず、二年たった今でも音に反応する新しい鳩はいない。 でも、俺は諦めない。 隣近所から白い目で見られようが、 たまに、鳩にエサを与えるなって言いに役所の人間が来ようが、 異臭がするっていう近所からの苦情で警察が来ようが、俺のラピュタへの情熱は絶対になくならない。 だって、ラピュタで幸せになれるのは純粋な人だけだから。 そう、家の中に血塗れで転がっている 母さん達みたいなのじゃなく、俺の様な純粋な人だけ。