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オカルト研究部の幽霊部員  作者: 椎名焔妃
オカルト研究部への道
9/19

城ケ崎紗季の秘密

城ケ崎紗季の顔がどんどん青白くなっていくのが目に見えて分かる。

紙袋を地面に落としたまま固まっている。


「城ケ崎さん?」


俺は居たたまれなくなって、改めて声をかけてみた。

城ケ崎さんは俺に声をかけられて、我に返ったと思ったら、今度は顔がみるみるうちに赤くなっていく。


「そ、そんな人は知りません!」


苦し紛れにそう言い放った。


「城ケ崎さん!?偶然だね!城ケ崎さんもアニメとか好きなんだ!」


天月が嬉しそうに城ケ崎さんに近寄った。


「あ、天月麗奈!?」


天月の存在には今頃、気づいたようだった。


「うん!城ケ崎さんもアニメ好きなんだね!びっくりしたよ!」


城ケ崎さんはまた少し固まってから、小さい声で「・・・別に」と呟いた。

地面に落ちている紙袋からは、大量のアニメグッズが顔を出している。

もう言い逃れは出来ないだろう。


「じゃあそれはなに?」


天月が紙袋を指さした。

容赦ねえな、こいつ。


「こ、これは・・・その・・・」


城ケ崎さんは言葉を詰まらせていた。

彼女の頭の中は誤魔化そうと必死なのであろう。

やがて、諦めたように「はあ・・・」とため息とついた。


「そうよ!あたしはいわゆるアニメオタク。誰かに言ったらぶっ殺すからね」


吹っ切れたようにそう言った。だがその顔はまだ赤い。

意外だった。あの城ケ崎紗季がアニメオタクだったとは・・・。

・・・と一つ思い出した。

俺は城ケ崎さんを部活に引き入れる策を練っていたことを。

これは使えるんじゃないか。


「じょ、城ケ崎さん。そのアニメオタクだったってことは誰にも言わない。そのかわり俺の頼みを一つ聞いてくれないか?」


「な、なんだ?」


「それはもちろん、オカルト研究部への入部ですよ」


城ケ崎さんは言葉を失っている。

その間、天月が俺に「悪いこと考えるね、ちょっとひどくない?」と耳打ちしてきた。

お前に言われる筋合いはない。

やっと城ケ崎さんが口を開いた。


「な、なぜそんなにあたしにこだわる!別に私じゃなくたって、、、」


「それは、もう城ケ崎さんしかいないからです」


「・・・私しかいない?」


「そうです」


「・・・そうか」


クラスにはという意味だが。


「どっち道もう逃げ場はありませんよ、城ケ崎さん」


城ケ崎さんは「う~ん」と首を捻った。


「はあ・・・。しょうがない、入ってやる」


よし。これで部員は揃った。


「やったー!!」


天月が叫んだ。


「なんで天月麗奈が喜んでいるんだ?」


そういえば、言ってなかったな。俺以外の部員のこと。


「ああ、こいつがオカルト研究部の発端だからな。部員の一人だ」


「なんだと・・・」


城ケ崎さんの顔が曇った。


「言ってなくて、すまん」


「まあいい。・・・ところであたしは名前を貸すだけでいいんだよな?活動なんてしたくない」


「別に問題ない」


まずは部員であること重要だ。来るか来ないかは今はどうでもいい。

・・・と天月が会話に割り込んできた。


「え~絶対来てよ~。楽しいよ?部活」


「嫌だ」


「ま、まあいいだろ。部員であることには変わらないんだし」


そう言って俺は天月を諭した。

城ケ崎さんは天月のことが嫌い、、、とはいかないもののライバル視していることは事実だ。

ライバルに秘密を握られ、かつ一緒に部活をやるのは厳しかろう。

ましてや城ケ崎さんはプライドが物凄く高そうな人だからなおさらだ。


もう話すこともないし、なんか気まずくなってきたので俺が天月に「もう行こう」と耳打ちすると、


「城ケ崎さんも一緒にどう?」


と城ケ崎さんに言った。

バカか、こいつ。まるで空気というものを読もうとしない。


「行くわけないでしょ」


そりゃそうだ。


「ん~残念・・・」


天月はがっくりとしている。

・・・もう行くか。


「じゃ、じゃあ城ケ崎さん。そういうことで」


そう言って俺は天月の手を引いて立ち去ろうとした。

・・・としたところで城ケ崎さんから声がかかった。


「ずっと気になってたんだけど、あんたら付き合ってんの?」


俺は天月に付き合わされてここにいるわけだが、城ケ崎さんの言う付き合うの意味は恋愛的な付き合うのことだろう。

そうすると、断じて違う。


「そんな関係なんかじゃねえよ」


「え~そうなの?」


なぜか天月が俺の言ったことを否定する。

城ケ崎さんは不機嫌そうな顔だった。

そうだった、城ケ崎さんはその行動から゛女帝゛と呼ばれた過去があるんだった。

カップルいたら、その仲を引き裂くという、もはや゛暴君゛の所業といえることをしていた過去が。


「じゃあどんな関係よ?」


「・・・それはただの幼なじみだ」


・・・という設定だ。


「確かそんなことを耳にしたな・・・」


とりあえず納得してくれたようでよかった。


「それと・・・佐和野」


「はい?」


「も、もしかして佐和野もアニメオタクなの?」


城ケ崎さんは期待をこめた目で言った。

あ、そうか。俺はいま天月が買った荷物を持っていたんだった。


「俺はアニメ好きではあるけど、グッズを集めるようなオタクではない」


「見てんならオタクじゃん」


「違います」


アニメ見てる=オタクって考えはやめてほしい。


「じゃあその手に持ってるのはなんだよ」


「これは俺のじゃなくてこいつが買ったやつだ。オタクなのは俺じゃなくてこいつ」


天月を見ると「えへへ」と笑っていた。


「天月麗奈がアニメオタク・・・?」


「そうだよ~。だから私たち仲良くなれると思うんだ~」


「・・・それはない」


「でもオタク同士さぁ~」


そう言って天月は城ケ崎さんにすり寄る。


「や、やめろ!くっつくな!」


傍から見る分には非常にいい光景だな。

美少女二人がじゃれ合って、このむさ苦しい場所に咲く二輪の花のような・・・。

・・・けどすごく目立ってるから、やめてくれ。

そろそろ写真を撮りだす輩が来そうだ。


「おい、もう行くぞ」


「あっそう?じゃあね!城ケ崎さん!また週明けに!」


「・・・はあ」


そうして俺たちは城ケ崎さんと別れた。

それにしても、城ケ崎さんがアニメオタクなのは驚いた。

ギャップがあり過ぎる。

学校では元゛女帝゛の異名を保ちつつ、プライベートでは二次元に没頭していたとは・・・。

ということは城ケ崎さんが部活に入らない理由って俺と同じで、早く帰って昨日録ったアニメを見たいという不当な理由だったのではないか。

そりゃ言えないわけだ。



それからは適当に秋葉原をぶらぶらしていた。

城ケ崎さんと出くわした『とらのあな』にも寄ってみたが、アニメイトとは雰囲気がまた違って、男性客も多かった。

天月に「秋葉原と言ったらメイドカフェだよね!」と連れていかれそうになったが、さすがに拒否を貫き通した。あそこは多分、女子と二人で行っていいところではないと思ったからだ。

個人的に興味はすごくあったが。

・・・機会があれば、一人で来よう。



・・・もう疲れた。歩きっぱなしである。

天月はまだ秋葉原の道をご機嫌に闊歩しているが、俺はその後ろでゼェーゼェーしながら歩いていた。

もう夕方だし、、、帰りたい。


「なあ、もう帰らないか?」


「え?もう?」


「もう、って夕方だぞ。それにもう十分堪能したろ」


「う~ん。まあそうか!じゃあ帰ろう!」


よかった。やっと帰れる。

しかしここからもまた地獄であった。

人混みの中を歩き、人混みの駅を彷徨い、人混みの電車に揺られる。

地元行きの普通列車にはなんとか座れたが、そこからは二時間以上の道のりである。


「楽しかったね」


電車の中で天月はそう言った。

正直、楽しくなかったと言ったら嘘になる。なにせ初めてのアキバは新鮮だった。

そもそも田舎人が東京に来て浮かれないはずがない。


「そうだな」


「また行こうね!」


それはちょっと・・・。


「まあ、行けたらな」


俺が言う゛行けたら゛という言葉は、ほぼ行かないの意味である。


「あと、城ケ崎さん!これで部活作れるね」


「ああ一応、部員にはなってくれたな」


「一応?」


「多分、部活には来ないだろ」


「いや、来るよ。来させる」


どっから出てくんだよその自信は。


「まあ、どっちにしろ部活はできる。とりあえずはそれでいいんじゃないか?」


「それはそうだけど・・・」


「そういうことだ。無理に来させようとしても、嫌われるだけだ」


「う~ん、そっか・・・」


そんな会話をして、電車に揺られていた。




やっとのこと、地元に着いた。


「じゃあね!さわ君、今日はありがと」


駅を出たところで天月はそう言った。

あ、そうだ。俺はこいつに言いたいことがあったんだった。


「お前、突然家に来るなよ?」


「ん?じゃあどうすればいいの?」


「そりゃ来るときは事前に連絡をだな、、、」


「でも私、みんなのようにスマホ?とか持ってないから連絡しようがないよ」


そこなんだよな。幽霊はスマホはおろか固定電話すら持っていない。

確かに連絡しようがないのである。

どうしたものか、、、と悩んでいたところ、


「私は幽霊!姿を現すのはいつも突然だよ!」


と天月は得意げに言った。

・・・どうにもならないな、これは。


「分かった。でももうゴールデンウィーク中は来ないな?」


「う~ん、多分!」


「いや、来ないでくれ」


「なんで?」


「忙しいんだよ、いろいろと」


ゲームでな。


「どうせゲームでしょ?まあいいよ、今日は付き合ってもらったしね!じゃあまた週明け!」


「ああ、じゃあな」


そう言って天月と別れた。




家に着く。もう時刻は八時をまわっていた。

テキトーにメシを済ませ、自室のベッドに横になる。

・・・疲れた。最近は疲れてばっかりだ。

主に天月麗奈という悪霊のせいなのは明白である。

そして部員が揃って、部活が作れるようになってしまった。今後も疲れるようなことばかりであろう。

はあ・・・。今日はゲーム出来ないな。もう寝よう。

まだゴールデンウイークは三日ある。

せめてこの三日間は思う存分ゲームをして過ごそう。週明けの地獄を耐えきれるように。





ゴールデンウィークも最終日の夜になっていた。

ゲームとアニメと時々睡眠していたら、いつの間にかゴールデンウィークも終わろうとしていた。

はあ・・・なんて儚いんだ。このままずっと休みでいいのに・・・。

明日のことを考えると憂鬱でしかなかった。


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