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オカルト研究部の幽霊部員  作者: 椎名焔妃
オカルト研究部への道
3/19

天月麗奈の潜入

週明け----月曜日




目が覚める。もう月曜日だ。週末はいろんなことがありすぎたからか、いつもに増して身体がだるい。日曜日は特になにもなくいつも通りの日曜日だったが、頭の中は天月のことでいっぱいだった。そして今日も変わることなく、頭の中は天月が占領している。ベッドから出ずに、ぼーっとしているともう七時半をまわっていた。


「やべっもうこんな時間か」


ボソっと呟き、眠い目をこすって自室を出る。

リビングに行くと、妹の日花里が家を出るところだった。


「あれ?兄ちゃん今日は遅いね」


「ん、寝坊した」


「そっか。朝ごはん作ってあげたから、ちゃんと食べてね」


テーブルを見るとそこには、オムレツなのかスクランブルエッグなのかよく分からんものと焦げたウインナーがあった。なんだこれは、、、


「日花里は食べたのか?」


「食べたよ。トースト二枚!」


なるほど・・・。こいつ自分で作ったはいいが失敗したから俺に押し付けたな。おかしいと思った。

我が家の朝食は基本的には各々テキトーに済ませろということになっている。理由としては、家を出る時間が皆バラバラだからだ。両親は七時くらいには家を出ている。日花里は部活の朝練とやらで普段はもっと早い時間に家を出ている。月曜日は朝練がないらしい。


「じゃ、いってきます」


「ああ、気をつけろよ」


さて、どうするか、、、俺も早く出ないと遅刻する。しゃあない。俺は食パンをかじりながら、よく分からん卵料理と炭化しかけたウインナーを胃の中になんとか収めた。想像どうりの味だった。不味い・・・。

そして支度を済ませ、家を出た。時間はギリギリなんとかなりそうだ。




チャリを速度をいつもより上げ、無事、遅刻することなく学校に着いた。

重い足を引きずって教室へと向かう。今日からまた憂鬱な一週間が始まると思うと、より一層足が重くなった。

俺の席は窓側の後ろから二番目にある。席に着くと当たり前だがいつもどうりの教室だった。週末なにしてた?とか、あのテレビ見た?とかそんな会話があちらこちらから聞こえてくる。加えて、今週末どうしよっか~といった気の早い会話も聞こえてきた。今週末、、、あっもうゴールデンウイークか。そう思うと、憂鬱だった気分が少し晴れてきた気がする。

だが今の俺にはそれ以上に不安なことがあった。天月のことだ。


「ではホームルームを始めます」


いつの間にか教壇に立っていた先生がそう告げると、教室は静かになった。一年二組担任の神野教子じんのきょうこ先生は年齢こそ明かさないが、絶賛婚活中の独身だ。しかし、年上好きの生徒たちが密かに先生に恋心を抱いているという話はよく耳にする。少なくとも生徒にはそれなりの人気がある先生だ。結婚できないのは性格なんだろうか?その真相は定かでないが、いわゆる残念美女というやつだ。

ホームルームでは今週の予定などを聞き、あっさり終わった。転校生の話なんてまったくなかった。そりゃそうだよな、あんなおかしな話あるわけがない。やはり土曜日のことは全部夢だったのではないかと思えてきた。



◆◆◆◆◆◆



一時間目が終わり十分の休憩時間、俺はいつも通り机に突っ伏して過ごしていた。周りはガヤガヤしていて、半端なく居づらいがなんとか我慢して二時間目が始まるのを待つ。毎度のこと苦行だなこれ。

はぁ、、、と目を瞑っていると、ふいに肩をぽんぽんと誰かに叩かれた。


「やあ!」


振り向くと、そこに天月麗奈がいた。


「ぅおわあ!!」


思わず変な声が出た。一瞬、周りの目線がこっちに集まったがすぐにそれらは戻された。そしてクスクスと笑う声が聞こえて来る。めっちゃ恥ずかしい。ウトウトしてて突然ガクッてなった時以上に恥ずかしい。

ていうか俺以外にこいつの姿見えてない・・・のか?


(な、なんでいるんだよ)


俺はなるべく小声で言った。


「下見ですよ。下見!」


天月は楽しげに言った。


(俺以外に天月の姿が見えていないようなのだが)


「今は、さわ君以外の人には見えないようにしてるからね」


そんなことも出来んのか、幽霊ってやつは。


(そ、そうか)


「うん!っていうかなんでさっきからそんな小声なの?聞こえづらいんだけど」


と言って天月は顔を近づけてくる。ち、近い、、、


(お前はバカか。はたから見たら俺は、独り言を言ってるように見えるんだぞ。少しは考えてくれ)


「あっそれもそうだね」


やはり天月はバカだな、うん。


「それと見てて気づいたんだけど、もしかしてさわ君って友、、、」


あ、やめろっ、それ以上は、、、


「友達いないの?」


ぐはあぁ!自分では気にしないでいたが、他人ひとから言われたその言葉は思いのほか心に突き刺さった。


「・・・」


なにも言えず、ただただ冷や汗をかいていると、


「ねえ!ねえってば!さわ君?やっぱり友達いないの?」


「・・・」


「さわ君?さわ君ってば!!」


しつこい、、、察することも出来んのかこのバカは。


「・・・うるせえ!いねえよ!!」


だいぶ大きな声で言ってしまった。またしても一瞬目線がこっちに集まったが、今度はクスクス笑われることはなかった。完全に引かれたな。これは。ははは、、、笑えねえ。

天月は目をまん丸にして驚いていた。


俺は黙って席を立ち、教室を出て人気ひとけのない廊下の隅へ向かう。その間、天月は「どこ行くの?」と聞いてきたが、とりあえず無視してついて来てもらった。


先に口を開いたのは天月だった。


「なんかごめんね」


「いや謝らないでくれ、余計みじめになる」


「でもさ、ということはだよ、私の友達第一号はさわ君だけど、さわ君の友達第一号も私だったわけだ!!」


そう言えば勝手に友達にされていたな。天月はニコニコしている。

だが、彼女は゛楽しい青春゛を送りたいと言っていた。ボッチである俺が彼女の青春を楽しませることは到底出来ない。


「でもお前は楽しく青春を送りたいんだろ?」


「?、そうだけど?」


「俺はボッチで根暗な普通以下の高校生だ。俺と友達になったところでお前は楽しい青春なんて送れないと思う。だからまず、別の誰かと友達になったらどうだ?」


しかも今回の件で、俺は完全にクラスの人に引かれたし、おかしな人というイメージがついてしまったと思う。俺と一緒にいたら天月までおかしな人だと思われかねない。だから天月はもっといい人と、すでにその楽しい青春とやらに片足を突っ込んでいる人と仲良くなればいいと思った。

しかし、天月の考えは違った。


「んー分かった!じゃあ私がさわ君の青春を楽しくさせてあげる!そしたら私も楽しくなるし。それにさわ君はもうボッチじゃないよ、私がいるもん!!」


天月は私に任せなさいと言わんばかりに胸を張ってそう言った。

予想外の返答だった。


「でもな、お前なら誰とでも友達になれる。俺にこだわる必要もないし、友達がいない俺への同情なんていらないぞ」


「そんなんじゃないよ!」


天月は強気な口調で言った。


「そもそも最初っから、ともに楽しもうって言ったじゃん!大事なのはこれからだよ!これから!!」


大事なのはこれから、、、か。

天月のポジティブすぎる思考に妙に納得してしまった。


「やっぱり天月はバカだな」


「バ、バカっていうな!しかも゛やっぱり゛って!いつからそう思ってたの!?」


「んー最初からだな」


「もうっそんなんだから友達が出来な、、、」


「あ、そろそろ授業が始まるからもう行くわ」


そう言って俺は天月に背を向けた。怒っているのが背中越しにも伝わってくる。まあ大丈夫だろう。ああいうのは、放っておくのが一番だ。゛バカ゛だからな。


教室へ向かう途中、俺はいろいろ考えた。天月麗奈という青春バカが本気だったということ、そして彼女の言う゛これから゛がどうなるのかということ。

期待と不安が入り混じるが、天月麗奈が幽霊である以上この先の不安の方が圧倒的に多かった。


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