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オカルト研究部の幽霊部員  作者: 椎名焔妃
オカルト研究部への道
13/19

オカルトの研究と、アニメ談義と、ほんの少しの゛なんでも相談室゛

現在、俺が所属しているオカルト研究部、もとい゛どうしたら城ケ崎さんが部活に来てくれるかを考える部、兼なんでも相談室゛には二人の幽霊部員がいる。

一人は天月麗奈。こいつは本物の幽霊である。そしてオカルト研究部・部長であり、美女であり、バカである。

ちなみに天月麗奈が幽霊だということは、俺以外に誰も知らない。

もう一人は城ケ崎紗季。彼女はオカルト研究部の部員でありながら、部活に来ない。つまりは幽霊部員である。そして元゛女帝゛であり、美女であり、アニメオタクである。

ちなみに城ケ崎紗季がアニメオタクであることは、俺と天月以外に誰も知らない。




さて俺は今、一人の部員を幽霊でなくすために、まるでストーカーの如くその幽霊部員を尾行していた。

城ケ崎紗季である。彼女はいつも塚井さんという友達と二人でいることが多く、話しかけるタイミングは彼女が一人になるこの放課後しかない。

決して好きで尾行をしているわけではない。彼女が一人になるのを待っているだけである。

そして、別に塚井さん居ても話しかければいいんじゃないか、という至極真っ当な意見は受け付けていない。

なぜならば、ただでさえ女子と話すことは緊張するのに、それが二人となればその緊張は二倍以上に膨れ上がり、緊張で声が出ないどころか口から胃が出てしまうことになりそうだからだ。

・・・いや、口から出るのは胃ではなくその中身か。つまりは吐き気を催す。

まあ、どっちにしろ女子二人で居るところに話しかけるのは俺にとってはそれくらいの苦行なのである。

ましてやその相手があの城ケ崎紗季である。

なんなら、一人で城ケ崎紗季に話しかけることは女子二人分の緊張が伴うまである。

緊張したら手のひらに人という字を書いて飲み込めとはよく言うが、その効果を実感したことは一度もない。

飲み込むべきなのは人という字ではなく、緊張に効く薬なのであろう。



・・・と、昇降口をでたところで城ケ崎さんが一人になった。

ふぅ・・・。行くか。

ちなみに、天月や須藤には「用事があるから遅くなる」と予め言っておいたのだが、須藤もまた用事があるらしく、今日は部活に来れないらしい。

俺は息を整え、城ケ崎さんに声をかけた。


「あ、あの城ケ崎さん?」


「あぁ?」


城ケ崎さんは目をキッと睨むようにして、こちらを振り向いた。

怖い。怖いです。もう逃げだしたい。


「なんだ、佐和野じゃん。どうした?」


城ケ崎さんは睨むような目をやめてそう言った。

あれ?思ったより普通だな。俺が城ケ崎さんの秘密を知っているからか?


「あの、やっぱり部活に来てほしいと思いまして、、、」


俺がそう言うと、またもや城ケ崎さんは怖い顔になってしまった。


「だから、行かねえっつったろ!あたしは部員になってあげたんだし、それでいいじゃん」


「よくないです」


前はまではそれで別に問題なかったんだけどな。今は天月のせいで、城ケ崎さんが来てくれないと部活にならないからな・・・。


「なんで?」


「・・・それは、城ケ崎さんに来てほしいからです」


全然理由になってねえな。


「・・・ふ~ん」


と城ケ崎さんは少し何かを考えてからこう続けた。


「でもあたし、オカルトなんて興味ないし早く帰りたいんだけど」


まったくもって同意見だ。


「その早く帰りたいってのはアニメ見たいからですか?」


「そ、そうだけどっ。なんか文句ある?」


やっぱ俺と同じ理由だったか。


「い、いえ、ないです」


しかし、そのいちいち喧嘩腰なのはなんなの?

怖くてまともに話せないんでやめてほしい。


「てかさ、なんで敬語?同じクラスじゃん」


・・・んー、それもそうだな。緊張すると敬語になってしまうんだよな。

まあ、相手が城ケ崎さんってこともあるが。


「そ、それもそうですね」


「まだ敬語じゃん・・・」


あ。しまった。

次からは気を付けよう・・・。


「そ、それはそうと実は俺も同じなんだ。オカルトなんか興味ないし、早く帰ってアニメ見たいってこと」


「じゃあなんで、部活行ってんだよ」


うん。確かに。何で行ってんだろうな。

主に天月麗奈という悪霊のせいであるが、それを言うことは出来ない。


「まあ、楽しいから?」


これは嘘だな、今のところは。


「どこが?」


「オカルト研究部の部員は全員オタクだからな」


「へ?でもあんた、自分はオタクじゃないとか言ってなかった?」


「今はな。けど俺はアニメ好きだし、いずれアニメオタクになるかもしれない」


俺の中のアニメオタクの基準は、グッズを収集してるかどうかにある。

俺はアニメは見るが、そのグッズを集めようとは今のところは思っていない。

しかし、興味がまったくないと言えば嘘のなる。何かの拍子でグッズを買ってしまったら、たちまち俺はアニメオタクに仲間入りしてしまうかもしれない。

今の俺がアニメオタクの卵みたいな状態なのは、否めないのである。

ところで、アニメオタクの卵ってパワーワードちょっと気持ち悪いな。


「ふーん。 ・・・で、何が楽しいの?」


俺が言いたかったのはここからだ。


「見たアニメの感想を言い合えるからだ。あそこのシーンがよかったとか、あそこが面白かったとかな。それとあのアニメが面白いとかの情報も得られる。まあ、そういうアニメ談義が出来るところだ」


アニメを見る人は自分が見たアニメの評価というのを気にするものであると思う。

少なくとも俺がそうだ。なんか調べちゃうんだよな、ネットで。

自分が面白いと思うものに対して、共感を得たいのだと思う。

それに、共通の趣味の人と話すことは楽しいものだ。これは間違いない。

城ケ崎さんはアニメオタクであることをずっと隠し通して来たのだから、話したいことはいろいろあるだろう。


「アニメ談義・・・」


「そう。だからここに城ケ崎さんが加わればもっと楽しくなるし、城ケ崎さん自身も楽しめると思う」


「でもオカルト研究部って・・・」


「まあ、それはあるが城ケ崎さんが来てくれれば、実質アニメ研究部みたいなことになるな。 ・・・多分」


さすがにそれは言い過ぎだが。

城ケ崎さんが来てくれるように誇張するのはしょうがない。


「アニメ研究部・・・か。 あ、そうだ、あと一人はどうなんだ!?佐和野、天月麗奈、あたしだろ?もう一人の部員はどうなんだ?」


「ああ、心配するな。そいつもオタクだ」


須藤はアニメオタクではなく、オカルトオタクだけどな。俺はオタクとしか言ってないから、間違ってはいない。


「でもあたしがオタクであることは、、、」


「それも大丈夫だ。そいつは友達がいないからな。誰かに話すことないと思う」


「そうか・・・」


と城ケ崎さんはしばし黙る。

これは・・・やったか!?

あ、やったか!?という言葉は失敗するフラグなのであんま使わんとこ。

でも、声に出してないのでセーフ。


「じゃ、じゃあ行ってみるか・・・」


城ケ崎さんは顔をちょっと赤くしながらそう言った。

よ、よかった。とりあえずは城ケ崎さんが部活に来てくれるようになった。

くぅ~疲れましたw これにて終了です!


「あ、ありがとうございます。城ケ崎さん」


「また敬語に戻ってる。 あとな、その、さ、さんもいらない」


・・・さん? あ、城ケ崎さんのさんか。


「わ、分かった。じゃあさっさく部室へ、、、」


「お、おう。行くか」


こうして俺は城ケ崎を連れて、部室へ向かった。





『ガララッ』と部室の引き戸を開けると、椅子に座っていた天月がこちらに振り向いた。


「あっ、さわ君。もう用事はいいの? ・・・ってあれ!?城ケ崎さん!?」


俺の後ろにいた城ケ崎に気づいたらしく、天月は驚き、椅子から立ち上がった。


「ああ、部活に来てくれるようになった」


「ええ!?すごーい!!」


天月は城ケ崎に駆け寄り、「よろしくねー」とその手を掴んでブンブンしている。

俺はこの間に城ケ崎から離れ、椅子に座った。

・・・あの~天月さん?そろそろその手を離して頂かないと、城ケ崎怒っちゃうよ?もうフルフルし出してるし。

と城ケ崎が天月の手を無理やり振り払った。

ほれ見たことか。


「あ、天月麗奈!!あたしはまだアンタを認めたわけじゃないからな!!」


「認める?」


「同じアニメオタクとしてだ!!」


そこかよ・・・。


「ん~、じゃあどうしたら認めてくれるの?」


「・・・そうだな。好きなアニメはなんだ?」


出ました!好きな〇〇はなに?シリーズ。実際これ聞かれるとめっちゃ困るんだよなぁ・・・。

アニメにしても、音楽とかでも。結局、自分が一番好きなのは言えず、万人受けするような無難なやつを言ってしまう。あとは流行りのやつとかな。


「なんでも好きだけど、、、女の子しか見ないようなのは見ないかなぁ・・・」


つまり、腐女子向けなのは見ないのか。


「あ、あたしもそうだ」


あら、意外。てっきり城ケ崎はいわゆるBLを彷彿させるシーンを見て「キャー」とか言ってるタイプかと思ってた。

ちなみに俺は、面白ければなんでも見るというスタイルだ。

゛面白ければ゛ここ重要。


「じゃあこれから仲良くしようね!」


「・・・ぶ、部活の時だけな。教室では話しかけるな」


「えー、なんで?」


「なんでもだ」


城ケ崎は顔を赤くしている。

共通の趣味の友達が出来たとは言え、その共通の趣味はアニメだ。城ケ崎はこれを隠していることもあって、天月と教室で話すのにはまだ抵抗があるのだろう。


「もういいんじゃないか?椅子に座ったらどうだ?」


俺は立ち話をしていた二人に声をかける。


「あっ、そうだね。城ケ崎さん、どうぞこちらに」


そう言って天月は自分の席の隣の椅子を引く。

・・・となぜか城ケ崎は座らない。


「そ、そっちじゃダメか?」


と俺の隣の席を指さした。

え?そこっすか?

そこは須藤の席だから・・・ダメだな、うん。


「俺の隣は須藤の席だ。城ケ崎は天月の隣に座ってくれ。あっ、須藤ってのはもう一人の部員な。今日は休み」


「そ、そうか。ならしょうがないな」


「ああ」


そうして城ケ崎は天月の隣の椅子に腰かけた。


「じゃあ改めて、城ケ崎さん。オカルト研究部へようこそ!これでオカルト研究部の活動内容は゛なんでも相談室゛となりましたっー!」


パチパチと拍手しながら天月は言った。

あの~、もはやオカルト研究部要素がゼロになってるんだが。

オカルトの研究、しますよね?今度は須藤が幽霊部員になっちゃうよ?

さすがにこれは訂正しなくては。


「ここはオカルト研究部だぞ。活動内容はオカルトの研究と、アニメ談義と、ほんの少しの゛なんでも相談室゛だ」


「ん?アニメ談義?」


鋭いな、天月。そこに気づくとは・・・。

てっきり、バカだから受け流してくれると思ったんだが。


「ああ、それはだな、城ケ崎が部活に来ることで、新たな活動内容としてアニメ談義が追加されたんだ」


「なるほどね。まあいいけど」


こういうところはバカなんだけどなぁ。


「なあ、その゛なんでも相談室゛ってのはなんだ?」


城ケ崎が聞いてきた。

そりゃそこが一番気になるよな。だって意味分かんねえもん。


「゛なんでも相談室゛ってのはだな、この部を作るにあたって顧問に無理やり頼まされた、言わば雑用みたいな仕事だ ・・・多分」


まだ相談が来たことないからよくは分からん。


「雑用?」


「なんかね、困っている生徒を助けてあげるんだって!楽しそうでしょ?」


「・・・それはオカルト研究部がやることなのか?」


絶対に違う。本来は神野先生がやるべきだ。

あの先生は自分に相談が来るのが面倒だからって、顧問の立場を利用して俺たちにそれを押し付けたのだ。

どうしようもないな、あの先生は。

・・・実はボッチのくせに。声を大にして言いたい゛ボッチ゛のくせにぃ!!


「まあ、でもそんなに相談事が来るわけじゃない。気にしなくて大丈夫だ」


「そうか」


神野先生は自分に生徒からの相談事が絶えないと言っていたが、昨日は誰も来なかった。

そもそも先生にオカルト研究部に頼めって言われた生徒は、ここまで来るだろうか。それが問題である。

それに、俺は神野先生を信用しないことにしている。

というか俺は基本的に人を信用していない。信用できるのはただ一人自分のみ!をモットーにしている。

これもまた、俺に友達が出来なかった原因である。


「私はいっぱい来てほしいけどなぁ」


「いや、来ないと思うぞ。まず先生にオカルト研究部に頼めって言われて本当にここに来るやつが、いないと思う」


「そういうもんかなぁ・・・」


そういうもんだ。だいたいオカルト研究部なんかいきなり紹介されても困るだけだろ・・・。

明らかに怪しそうだし。



『コンコン』


と部室の引き戸がノックされた。

・・・先生か?いや先生は絶対にノックなんてしない。


「誰かきたぞ」


城ケ崎が先に反応すると、


「どうぞー」


と天月がノックに返事をした。

すると『ガララッ』と引き戸が開き、見知らぬ女子生徒が入ってきた。

これは・・・まさか・・・。


「あの~ここ、オカルト研究部ですよね?ちょっと相談があって来たんですけど・・・」


き、来た・・・。来てしまった・・・。

よりによってこのタイミングで。 空気読んでくれ・・・。

結局、オカルト研究部は、オカルトの研究ではなく゛なんでも相談室゛としてスタートするのか・・・。

天月は「ほら来たっ」とドヤ顔であり、その目はとてもキラキラしている。

城ケ崎は「来たじゃん・・・」と驚いている。

俺はというと、絶句していた。


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