罰当たり
家に帰ると、荷物が届いていた。
恐らくメートル単位の長さで表すのが適当な位大きな段ボールが、玄関に置かれていた。恐らく母が受け取ったのであろう。だが、母曰く、宅配員が僕宛てと言っていたらしい。
とりあえず差出人の名前が見当たらないので、箱を開けてみる事にした。
大きな箱の包装を丁寧に解いていく。
こんな大きな箱にしては意外と軽い。一体何が入っているのだろうか。期待が膨らみ、丁寧だった手つきは、もう待ちきれないという様に乱暴になっていった。
やっと段ボールを開けた。
中に入っていたのは、段ボールだった。元の段ボールより一回り小さい段ボールだ。二重包装なのだろうか。中に入っていた段ボールも開けてみた。
中に入っていたのは、段ボールだった。また一回り小さめの。
ここまで来れば、大方の予想は付いてしまう。そして、その予想通り、開けても開けても中から出てくるのは段ボール。最後の一番小さい段ボールの中には、何も入っていなかった。
僕は、怒りを抑える事が出来なかった。
イタズラされた事に対してでは無い。この手口が、僕の手口と全く同じだという事に憎悪の気持ちを抑えられないのだ。
僕は、イタズラが大好きだ。僕のイタズラで困惑する表情、浪費される時間、相手が露わにする怒り。その全てが僕の生きがいと言っても過言では無い。だからといって、これは別に悪質な趣味では無い。ただのエンターテイメントだ。この僕と同じ手口でイタズラをしてきた誰だか分からない馬鹿者は、礼儀を知らない。恐らく僕にイタズラされた内の一人が、僕に向かって仕返しをしている。そうとしか考えられないのだが、それが許せない。なぜなら、イタズラはその一瞬で終わるから面白いのだ。その人の心の中に一瞬のエンターテイメントをもたらす。それがイタズラだ。仕返しをしてはそれが崩れてしまう。
この礼儀知らず、絶対に正体を突き止めて、一発頬に拳を食らわせてやる。
そう心に決めた僕は、今までイタズラしてきた人達に片っ端から電話をかけた。
もう五十件はかけただろうか。ついに、最後の一人も白だと分かってしまった。
一体、誰がこの荷物を。見当も付かない。
迷宮入りしようとしていると、手に持っていた携帯電話が振動した。着信だ。
もしかしたら、犯人の手掛かりが掴めたのかもしれない。すぐさま着信に応答した。
「あ、もしもし。こちら、宅急便の者ですが。先ほど、荷物をお母様を通してお渡ししたと思うのですが、そちらのお荷物、宛先が不明でして。送り主の方に一度返すという事になりましたので、ご確認ください」
理解するまでの数分、頭が言葉に追い付かずに固まっていた。
ようやく理解すると、とりあえず僕は自分の頬を思い切りぶん殴った。