翻弄の舞姫
フリーベルに着いたアルベルトを迎えたのは彼の禍々しささえ感じる顔への嫌悪のこもった視線だった。
今まで見たことのない醜さを前に泣き出す子供さえいた。
そんな状態での仕事探しは上手くいくはずもなくアルベルトは途方に暮れた。
そんな時に見つけた仕事が魔物退治だった。
森での一件があった通りアルベルトは魔物と戦えるような力は持っていない。
しかし他に仕事のないアルベルトにとっては唯一”就くことの”できる仕事だった。
魔物退治は正確には仕事ではない。
ただ町の外に出て魔物を退治し皮や肉、その他の部位を持ち帰り売却するというものだ。
依頼を受けて目標の魔物を狩ることもあるが彼の場合は依頼は来ないので関係ない。
……理由は察していただきたい。
猟師との違いとしては仕事として認められていないため国からの援助などが無いことだ。
魔物退治は兵士の仕事の一部でありそれを民間人が行うことは危険性から禁じられている。
しかし魔物退治をする側は「歩いていたら魔物に遭遇して自衛のために戦った」という体で行っている。
そんなグレーゾーンな仕事ではあるが背に腹は変えられない。
アルベルトは魔物との戦いの道を(嫌々ではあるが)歩み出す。
そして出陣の日は来た。
アルベルトは重い腰を上げて立ち上がる。
装備品は前日後先考えずなけなしの金で買った銅の剣のみだ。
後悔はしている。
武器よりもまずは死なないために鎧を買えばよかったと。
彼にも後からあれこれと考えることぐらいはできるのだ。
ただ鎧を買っていたとしても武器が買えなくなっていただろう。
不安でいつも以上に歪んだ顔をして剣を携えるその姿はさながらゴブリンの下級兵士であった。
いやそうとしか見えない。
醜悪な姿で町人達に恐怖を撒き散らしながらアルベルトは戦場へと赴くのだったーーー