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愚鈍なアルとチートな彼女  作者: 東山不知
プロローグ
2/39

無能の旅立ち

 その男アルベルト・カーターは鋼のように硬い決意を持って魔領域の前に立った。

「ここが魔領域……」

これから訪れる危険を忠告するような恐怖感を振り切り一歩、また一歩と魔領域に近づいていく。

瘴気のせいで中の様子は伺えないが異様に重い空気は素人でも感じとれるだろう。

進むにつれて足取りは重くなっていくが引き返すことはできない。




アルベルト・カーターは確かに決意したのだ。


この肥溜めに浸かっているような惨めな人生から抜け出すのだと。




 アルベルト・カーターは何も持っていなかった。

彼の生まれは王国の西南部にあるクシルという小さな村の貧しい農家。

頭は悪い。

体もたいして強くない。

考え方はだいたいネガティブ。

そして何よりも憐れなのが彼の顔だ。


 潰れたように低い鼻には小豆ほどのイボが我が物顔で鎮座し、大きく垂れた目には一切の輝きはなくドブのように濁り、口を開けば他の歯の倍はありそうな前歯が激しく主張し、でっぷりとだらしのない肉の付いた頬は常に脂でてかてかと光り、登頂部の薄くなった手入れの行き届いていない頭髪からは諦めのようなものが感じられる。


 あまりの醜さから近所からは魔物との間の子ではないかと噂され(アルベルトは紛れもない人間である)、本来守る立場である両親からも不気味がられ、無論友人などできるはずもなく正に孤独を体現したような幼少期を送った。


 アルベルトは成人すると両親の農作業を手伝ったが驚くほどに要領が悪かった。

水をやらせれば腐らせ、収穫をさせれば作物をぼろぼろにし、雑草を抜かせれば何も残らず。

呆れ果てて案山子の代わりに立たせてみれば普段は寄ってこない魔物が湧いてきた。

これならいない方が作業が進むと考えた両親は別の仕事を探すように彼に言った。

仕方なく彼は道具屋に働かせてもらえないかと頼むも「そんな顔では客が逃げる」と断られ、鍛冶屋で頼めば「そんな貧弱な体では無理だ」と断られ、猟師に至っては話すら聞いてもらえなかった。


 結局村では仕事が見つからず両親から僅かばかりの金を渡され町で仕事を探すように言われた。

町に行っても仕事は見つからないだろうと思っていたし、なにより面倒であったが半ば追い出されるような形で村から送り出されたため仕方なくアルベルトは町に向かって歩みだしたーーー



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