閑話 ヴェトロの守護するもの2
前話に比べて2倍ほどの量になってしまいました。
我とリュウがそれぞれ結婚してから数年後には視界のもの寂しさにも慣れていた。あれから我は新しい相棒を作るでもなく、一人で狩をするようになっていた。もともと教えを受けていたリュウの父親自体がソロで狩をする人だったから我もそのやり方が身に付いていたのだ。それはリュウも同じだったようで、あちらは嫁に言われて新しく相棒を決めようとしたそうだがどうもしっくり来なくて、結局一人でやった方が効率がよかったため、いまだに相棒はできていないようだった。我とリュウが会えるのは砦へ詰める時期が一致した時だけだった。今の話もその時に聞いたものだ。
「おーい! ヴェトロ! 久しぶりだな」
「……久しいな、リュウ。お前は相変わらずなようで何よりだ」
「ヴェトロこそ寡黙な性格に固定されたのか? 口数が少ないよなぁ」
「……ソロ狩の弊害だ」
「いや、それ俺もだからな!? ソロ狩は関係ないだろうよ」
「……そうか? 義父さんも以外と口数が多いからお前の場合は遺伝の可能性があるな」
「ヴェトロさんが長文を喋っている!? 見たことがないほど饒舌になってるじゃないですか!」
「ん? お前は誰だ?」
「あ、申し遅れました。ぼくはコタロウといいます! ええと、もしかして、リュウさんですか?」
「そうだよ。お前はヴェトロの知り合いか?」
「はい!! 最近ヴェトロさんの集落に引っ越してきました!」
「どういう関係?」
「……おとうとだ」
「弟? でも引っ越してきたって……あ、義弟か! じゃあ、ミヨちゃんの旦那さん?」
「はい! ミヨはぼくの嫁です! ヴェトロさんにはよくしてもらっていて……」
「ああ、そうだろうなぁ。地味にシスコンなヴェトロだもん。義弟がいい子だったらあれこれ世話を焼くだろう」
「……それ以上言うなよ」
話してなかったが、我にも妹がいて、我より5つ下だった。砦組になるまでの数ヵ月前にコタロウと婚儀をあげていたな。一応リュウにも招待状を出してはいたが何か行き違いがあったのか情報が届いていなかったようだった。あの地域でああいった情報の行き違いはまず間違いなく配達員に不幸があったんだろう。
「ヴェトロ! ちょっと来てくれないかー?」
「……何かあった?」
「はぁ、はぁ……あのな、どうも大障壁のヒビが広がっているらしいんだよ。たしかお前は1年前にもここに来ていたよな? 確認してもらえないか?」
「ルドさん、お久しぶりです。俺達も行ってもいいですか?」
「おお……? リュウか! 見違えたなー。すっかり貫禄が出ているじゃないか。っと、同行したいのか……まぁ、いいだろう」
「お義父さん、他の場所は大丈夫ですか? 義兄さんがヒビの確認に向かうと裏手が薄くなりそうなのですが……」
「そうかー。そんなに時間はとらないだろ。念のためにコタロウは裏へいっておいてくれ。砦内の待機組はお前たちがいなくなってもなんとかなるだろ。行くぞ!」
「はい」
あのときは珍しく我と父が同じ時期に砦組になっていた。父はそれなりに経験があったから障壁沿いに確認作業をしていたようだったのだが、ヒビが広がっていると感じたそうだ。その確認に我とリュウも向かった。もし本当にヒビが広がっていたなら前との違いを調べて補修しなくてはならないからな。その『前』の状態を知っているのは不運なことにあのときは我しか居なかった。
「どうだ? 俺が前にここに来たのは3年も前のことだからちと自信ないんだが、それでもなぁ……こんなにヒビが広がっていたか?」
「……これは確かにヒビが広がっているな。父上がここに来たのが3年前か……一度補修したのが2年前ってことだから、まずいな」
「やはりそうか。明日待機組から何人か借りて直してもらうか。ありがとな、ヴェトロ」
「なぁ、ヴェトロ。ここにこんな花咲いていたか?」
「……何を見つけた、リュウ」
「ほら、この花だよ。見ろよ、中央が宝石みたいに艶々してる。こんな花、こちら側にあったか?」
「「これは……」」
「リュウ、絶対触ってはだめだ。それはジュエルフラワーというのだが、中央のソレは毒がいっぱいに詰まっている。そこまで大きいと少しでも触れれば毒が飛び散るぞ」
「ルドさん……じゃあ、どうすればいいんだよ!?」
「……幸い、以前に取り扱ったことがある。任せておけ」
「ヴェトロ!? 任せるって言ってもな、お前一人で出来るのかよ?」
「俺と父上で何とか出来るから、落ち着け」
「ふむ。そうだな。リュウは砦へ戻ってこの事を知らせてくれ。15分ほどしたら戻る」
ジュエルフラワーの対処方法……それは、根っこごと魔法で掘り返し、慎重に浮かべたら一気に燃やし尽くすことだ。中央の毒も飛び散る暇を与えずに燃やす。ジュエルフラワーの毒はソレ自体が種になるので、もし毒が飛び散ってしまうと毒が付いた植物、動物の移動で一月後には広範囲に広がってしまう。そうなると最早誰も対処しきれないので、魔の森からの来訪者が増加するという結果になる。絶対に回避したい未来だ。
だからリュウが去ったあと二人で慎重に事を行った。ヘマはやらかさなかったぞ。だが、ジュエルフラワーがあったのは当時の異変をよく表していた。あの花の件はあれで一旦収まったのだが、その月末のことだったか、ちょうど砦の人員交代の時、各集落と繋がっている転移陣の1つが突然起動して慌てた男が飛び出してきた。
「で、伝奏いたします! サントウの集落にて魔の大鹿率いる目算数百匹の魔獣の襲撃が発生しています! 至急援護をお願いします!」
「「なっ!?」」
「サントウの集落、だって……? ミウ……!」
「リュウ! せめて武器は持っていけ!」
月末だったからもう砦から集落へ戻ろうという時期だった。そんなときだ。魔獣の襲撃の報がもたらされたのは。男の言うサントウの集落はリュウが婿入りした集落だった。砦および大障壁に近い順にオカの集落、イチイの集落、ニシキの集落、サントウの集落……と点在している。なぜ魔の大鹿がサントウの集落に現れたのか、しかも魔獣を率いてまで……理由はいまだに分からない。我等はその男の要請に応えてサントウの集落に向かった。
集落の状況は転移陣が敷かれてある建物にまではまだ魔獣は到達していなかった。だが見下ろした先の集落の入口となる広間は、次々と魔獣が飛び込んできていて、多くの男衆が対応していた。
「女子供を避難させる奴とあそこに向かう奴で分かれろ! だが……ヴェトロ! お前は避難させる組を指揮しろ」
「「「了解!」」」
「って、女衆はどこに逃げてるんだ?」
「非常時の行動がわかっていればこの辺りに待機しているはずだが」
「あ、思い出した。この裏を登った先の祭壇のとこだ。子供の頃婆さんにそう教わったっけ」
「「そうか。早く行くぞ!」」
女衆は無事に見つかった。だが、どうも困惑しているようで避難が進まなかった。何かあったのだろうかと一旦正気に返らせて話を聞き出した。すると、どうやら避難できていない人がいるという。我がその避難し遅れているのは誰なのかを聞くと、大泣きしている子供を一生懸命あやしている女性が答えてくれたのだが、そのときにはもう我は嫌な予感がしていた。そう、見覚えのある顔が見えない時点でな。
「……それは、誰なんだ?」
「ミウよ! あの子が最初に魔獣を見かけて、連絡に子供をこちらに寄越したの。でも、帰ってこないのよ!」
「……分かった。こちらで探しておく。とにかく貴女方は早く転移陣へ向かってくれ!」
不味いことになったと思った。それに、リュウにはまだ伝えられないとも。あいつが頑張っていたのは単にミウと子供のためだったんだ。それが、ミウの命が危ないと知ったら途端に集中力を欠いて魔獣の大群に負けてしまう恐れがあった。ならば、相棒を自負する我はミウを無事に助け出さねばならないと思った。
「おい、ヴェトロ。どうするんだ?」
「……コタロウ。一緒に探してくれるか? 他は下へ加勢に向かってくれ。くれぐれもリュウに悟られるなよ」
「ヴェトロさん。探すと言っても広いですよ、ここ。先に魔獣を倒してしまった方がいいんじゃないですか?」
「……いや、それだと間に合わないかもしれない。あの女性が言ったことを考えるとミウさんは魔獣の姿を見れる場所にいるんだ。見つかったらそこでおしまいだろう。それに、魔獣がやって来た方向を考えるとミウさんがいる場所はいくつかの候補に絞れる。探すのはそこまで広い範囲にはならない」
「分かりました! それならまず、西の出口から行くんですよね」
「……お前の観察力も侮れないな」
「えへっ。お褒めいただき光栄です!」
「……行こう」
そうして探すことおよそ数分。我はミウさんを見つけた。彼女はベリー農園のちょっと奥の茂みに座り込んでいた。怪我をしているのかと焦ったが、向こうも大分離れた場所にいた我等に気がついたのか顔をこちらに向けたのが見えた。だが、しきりに首を振って口を押さえていた。気配察知を使って辺りを調べるとまだ近くに魔獣がいた。あれは動きようがない。
「先に魔獣を仕留める」
「了解です」
うろついていた魔獣は本隊とは何の関係もなかったようで、新手が現れることもなかったから我等はミウさんを抱えて転移陣へ行った。そしてミウさんが転移したのを見てすぐにリュウの元へ加勢に行く。
「リュウ!」
「……ヴェトロ、か。前を頼む!」
「ああ、任せろ。お前の呼吸が整うくらいはもたせるさ」
「ヒュウ♪ オカの黄金コンビの復活か。あの悪魔を倒してくれよ!」
「ふっ、俺らにかかればこんな奴……!」
「……倒すのは、簡単だ」
我とリュウで前後をくるくる変えるから鹿は攻撃を仕掛けにくくなっていた。さらに、鹿にはどんどん傷は増えていく。そして我とリュウのどちらがやったのかは分からないが、鹿の足を斬ったため、奴は体勢を崩した。それこそ我等が待っていたこと。大鹿は首をはねられ、死んだ。不思議なことに、大将を失った魔獣達はそれまでの攻勢が嘘のように散り散りに逃げていった。
「ハァ……ハァ……終わった、のか?」
「……そう見ていいだろう」
「やった?」「よし! 勝ったぞぉーー!!」
その場はそれで収まったが、残念ながらそれから何回かは同様の事件が起こった。サントウの集落の次はイチイの集落、その次はシロザの集落、オカの集落に大障壁の綻び前。いずれも事前に準備をしっかりしていたお陰か死傷者は少数で済み、各集落は守られた。
実は我はそのすべてに遭遇した。再び砦に詰めていた時に大障壁の綻びから続々と魔獣が出てくるのを見たときには、我のタイミングの悪さに少々神を呪いたい気分になった。仲間内からは厄神扱いされた。それでも何とか倒してようやく休日を手に入れた。
「……もう出掛けたくないな」
「まぁ……育児を理由に砦へ行くのはなくなったのですから、またすぐに対魔獣戦になることはないのではありませんか?」
「……本来なら。でも、どうやらジュエルフラワーというのが魔獣を引き寄せる効果があるらしくてな。あれがこちら側に広がっている恐れが出てきたからそれの除去作業に駆り出されることになった。だからしばらくは休めそうにないのだよ。すまないな、カンナ、それに……アイリス、ミノル」
「この地域に産まれた者の宿命ですから仕方ないですわね。この子達には危険な運命を背負わせたくはないのですが……」
「……出来るだけ頑張ってこよう。大障壁の綻びの直し方も研究しないとな」
「どうか、体を壊さない程度に止めてくださいませ」
「ああ、もちろん」
魔獣との戦いはキリがない。それはやはり大障壁の綻びを直せないことに起因する。我を含む十数名は大障壁の綻びを直す研究を始め、魔獣を呼び寄せる原因の一端であるジュエルフラワーの処分隊を結成して東奔西走した。ようやくできた我とカンナの子供達のためにも今の状況を改善したかったのだ。
そして数年後、ダメ元で派遣していた公国への使者がある人物を連れて戻ってきた。
「ヴェトロさん! あ、今は長様でしたか? 心強い味方に来てもらいましたよ~!」
「……よく帰ってきたな、コタロウ。では、隣の方が……?」
「初めまして。私はリヒト・アヴェスタと申します。彼から聞いたところでは、どうやら大障壁に綻びが出来ているとか。私はそれを直しに来ました」
「……アヴェスタというと、教国の」
「はい。こちらとしても無視できない情報でしたので教皇の地位は息子に譲ってから来ましたよ」
「……それは、わざわざありがとうございます。長旅でお疲れでしょうから今ひとまずは我の屋敷へ案内いたします」
「おや、それは助かりますね。では、案内をお願いします」
公国へ派遣したコタロウ含む数名は驚いたことに元教皇を連れてきてくれた。大障壁の綻びはそれだけ大事なのだろう。リヒト殿が綻びを直してくれるならば今までの我の研究はあまり意味がなかったことになるが、それはまぁ、魔獣の襲撃が減ることに比べれば大したことではない。
「おや、この部屋からは不思議な気配がしますね」
「ああ、そこは我の研究部屋です。大障壁の綻びを何とかできないかとあらゆる魔術陣を調べていたから妙な感じがするのだと思われます。気になるのなら、見ていきますか?」
「よろしいのですか? ぜひ、お願いしたく思います」
教皇というのも伊達ではないと思った。ドア越しにでも何かの気配を察知できるのだからな。我は彼を研究室に招いて今までの成果を見せることになった。
「……不用意に手を触れませぬようお願いします」
「ええ。それはもちろん。それにしてもすばらしいです。これは獣避けの陣を魔獣も対象に出来るかの研究でしょうか? 発動コストに目をつむればほぼ完成してますね。おや、これは……」
「……自動修復の陣です。これで、直すまではいかずとも魔獣が通れない程度まで綻びを塞げればと思いましてな」
「なるほど。ですが、一般に知られてはいませんが、大障壁は魔法の一種です。この自動修復はモノに限定されていますから使えなかったでしょう。いやはや、独学でここまでとは。大したものです。そうですね……私が綻びを直すのは簡単ですが、またこうして大障壁にヒビか出来ることもあるかもしれませんね。ならば、魔法修復の陣も合わせてお教えしましょう」
「……いいのですか?」
「ええ。また教国からここまで人を派遣するより余裕ができますし。手を出せずにここが壊滅するのは困りますからね。貴方は知らないでしょうが、あの大障壁沿いにはここ以外にもいくつか集落があるのですよ。そちらの方は教国の巡礼使節が回っているので何かあったらすぐに情報がくるため滅多なことにはならないのですが、この辺りは大国からも遠いですからね。使節を送るのも大変ですから助けに向かいにくいのです」
我は知らなかったのだが、転移陣を敷くに距離制限があるらしく、あの集落はどの国からもその制限を余裕で越える距離があったらしい。だから教国も巡礼使節を送れないし、有事の際の助けも望めない。そして、万が一綻びができてそこから魔の森の魔獣が出てくるようになったら『こちら側』が大変なことになる。教国および他の大国からすれば貴重でもたった1つの魔法陣の流出だけで魔の森の魔獣が侵攻してくるリスクを減らせるなら万々歳ということだろう。
リヒト殿が大障壁の綻びを直したあと、我は魔法修復の陣を教えてもらった。これは各集落の長にも同じものを伝えて、代々引き継ぐように定めた。これで、我の子供以降の世代はいつ来るか分からない魔の森の魔獣に怯えることはなくなった。
「本当に、ようございました。ヴェトロさま。長く私を守ってくださりありがとうございました。もうそろそろ迎えが来そうです」
「カンナ……最期まで共にいるからな」
「ええ。……ヴェトロさま、私はずっと幸せでしたよ。かわいい子供に、孫にひ孫まで出来て。とても幸せでした。でも、私があなたを縛り付けたことを分かっておりましたか? あなたは恐らくここを飛び出しても大成できる方でした。それなのに……私が自分のために縛り付けてしまいました」
「そんなこと……カンナが我の守る者だったからここまで強くなったのだ。カンナがいたから何があっても生き残り、集落を守り通そうと覚悟を決められたのだ。お前は我を縛り付けたと後悔しているみたいだが、我はそのお陰でここまで生きたのだと思っておる。お前が後悔することはない」
「ふふ……私は誰よりも幸せ者ですわ。いままで……ありが……とう……ござい……ました……」
「っ、世話になったのは我の方だと言うのに……我こそ、ありがとう、カンナ」
最愛の妻を見送ってしばらくは我はどうやら呆けていたそうだ。だが、気持ちを立て直してから我は最期の旅に出掛けた。家族からは猛反発を受けたが強引に決行したのはいい思いでだな。だが、流石に独りでの旅は許されず、我の孫の三男とリュウの孫の次男が修行がてら着いてくることになった。道程は大障壁沿いに定めたから険しいなどというものではなかった。ついてきた二人ともが初めは涙目であったが、一月ほど経てば諦めたのか模範的な弟子になった。少し悪いことをしたと思う。
そして一月と二週間ほどして、子供たちに我の目的がバレてしまった。
「大爺様、もしや大障壁の他の綻びを直すおつもりですか? 他人に任せればいいことでしょうに」
「……バレてしまったか。だが、直すというのは違うのぅ。我がやるのは応急手当でしかないぞ」
「ちょっと待ってくださいよ、ソレ、勝手に持ち出したのですか!?」
「……いや、これは複製品よ。予備に幾つか作っておいたうちの1つじゃ」
「何と……大婆様の言ったことは事実でありましたか」
「……カンナは何と? ……よっと、これでここのヒビは大丈夫じゃろ」
「じい様は多才なお方なのですよ、と言っていたな。俺もまさか魔法の分野にまで及んでいるとは思わなかった」
「……我のコレは魔法ではなく魔術陣学というらしいのぅ」
「大爺様。煙に巻こうったってなぁ……」
「……ほれ、お主らもやってみろ。使い方を知っておかねば次代に伝えにくかろう」
我の旅の目的は子供達の言う通り、知られていない綻びを補強することだった。そして、ついでにその事を教国に教えておこうと思ったのだ。だが、子供がついてきたのを見てちょうどいいから魔法修復の陣の使い方の伝授と我の刀の技を教えておいた。息子もそれなりの腕だったが免許皆伝まではいってなかったからな。その点、子供達はまだ伸びしろがあった上、実践もできたから本当にちょうどよかった。まぁ、二人には盛大に文句を言われたぞ。
「ふぅ……これで、我が教えられる技は全て伝授し終えた。だが、お前達はまだ先を目指せるじゃろう。創意工夫を怠るでないぞ」
「「はい!」」
「……っく、我もここまでのようじゃの。教国に……たどり着いてからで……良かった、のぅ……」
「えっ、ヴェトロ爺様!」
「大爺様! 逝かないでくれよ! 母上も、お婆様も待っているんだぞ……」
「アイリスも……ミノルも……分かっておるじゃろうよ。だからこそ、お前たちを我につけたのじゃ。我はちゃんと満足して逝ったと……伝えておくれ……」
「「大爺様!」」「「ヴェトロ老師!」」
我の最期は弟子たちに奥義を伝え終えたそのすぐ後のことだった。奥義というものは、何かと疲れるものだからな。だが、いい最期だったと思う。教国にたどり着き、刀術を気に入られて老師と呼ばれるまでになったのだから。あそこまでやっておけばあの世にいったとき、我を縛り付けたと後悔していたカンナの気も晴れるだろうという打算的な考えもあったのだが。
そんな感じの人生だった。何年生きたかは詳しくは覚えていないが、100年は生きた大往生だった。
メヌ「ヴェトロが長文を喋っているのって……見慣れないわぁ」
ディオール「僕が通訳しなくていいのは楽だね」
ゼノン「感想ズレてるよ……いい話だったのに」
シルヴァー「教国に行ったらヴェトロ流派みたいなものがあるのだろうか?」
ラヴィ「どれだけ昔の話かにもよるでしょうね。私は見てみたいわ」
バルディック「……Zzz」
デ「ディーク坊や~落書きしちゃうよ~?」
バ「コロス」
デ「あはは。じゃあ、次は僕の番だね。僕は英雄視されるに足ることをしたと自負してるから、皆驚くだろうね」
ゼ「大したことなかったら笑ってやります」
デ「言うじゃないか。今日が最終日なのが惜しいね……」
ゼ「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!」




