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虎は旅する  作者: しまもよう
クナッスス王国編
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プルン村での一週間 その2

次は一週とんで1月27日の投稿を予定してます。


執筆時間が取れないのです……(;´Д⊂)

sideゼノン


 あれはまだ日が上ったばかりの朝のことだった。テントに遮られるはずの日の光を感じ、寝袋の代わりに硬い地面に寝転がっていることを把握して慌てて起き上がった。気付いたら俺は変な森の中にいたんだ。それはつまり、寝ている間に誰にも、俺にも気付かれることなくこんな場所まで運んだナニかがいるということになる。思い当たるのは一人しかいないよね。間違いなくディオールの仕業だと思って、注意して周りを見回した。


「水場は近いね……動物の気配はない……。動かなければ比較的安全だね」


 そう、水場……滝壺みたいなところは微かに聞こえる音からしてそう遠くないところにあると分かる。探知できる限りでは獰猛な肉食動物の反応もない。森の中ではあるが、安全であると判断していいだろう。普通なら。


「……でもここはディオールの亜空間。多分だけど。絶対何か仕掛けてあるって。【罠探知】」


 この魔法は対戦を終えるころに使えるようになっていた。正直に言ってもっと早くに気付きたかった。でも取得した状況を考えるとやはり罠で命の危機に陥らないと有用性を理解できず、上手く使えはしなかっただろうと思う。


「うっわぁ……連動罠の包囲網? ここから動けないじゃん」


 わかった限りではまず前方の森に出れば即座に左右から丸太が襲ってきて、前に避けようものならたぶん落とし穴が待っている。しかも底にはさらにえげつないものが仕掛けてある……と思う。槍とか剣山だろうか? はっきりと何が仕掛けてあるとは言えないけど嫌な予感がするから危険なものがあるのは間違いない。


 次に、左手側の森はというと、見るからに毒々しい色に染まっている。ちょっと向こうの木なんかは溶けているように見える。……酸、だよね。木にも色々かかっているから進めない。ちなみにこの方向は俺が寝ていたときに頭が向いていた方だ。かなりそばまで毒々しく染まった地面が続いていたから気付いてゾッとしたね。


 逆に右手側の森は普通の森に見える。というか、毒々しい色に染まっている方を見た後だとなおさらそう見える。でも分かる限りでは一歩踏み込めば何本もの矢が飛んでくる罠が仕掛けてある。【罠探知】が示す矢の軌道には俺の頸動脈、心臓を的確に狙うものがあった。しかも同時に体に辿り着くように調整してあるみたいだから避けにくい。どうせ連動罠だろうから、こちらも進めない。


 後方の森は論外。ピアノ線みたいなのが張り巡らされているし。少しでも地面に触れれば地雷でドーン☆


 ……俺を殺しに来ているのかな。


 遠くへ飛び立てそうな気持ちの中、1つの紙ヒコーキが飛んできた。特に仕掛けはなかったので掴みとる。


「なになに……


『【ディオールの特別メニュー】~これであなたも立派な盗賊~

 残りの期間でそこの森を抜けてもらうよ。君のいるところを中心とした円形に作ったからどの方向へ行ってもオーケー。注意点は


・朝昼晩の食事はこちらから送るよ

・死んでも中心地に戻るよ(ただし食事はグレードダウンさせてもらう)

・破壊した森の部分は中心地に戻されたら元に戻るよ(罠は壊れたままになるけど)

・どうしても行き詰まったらメンバーを1人1回呼べるよ


 以上4点。頑張れ!』


 ……これ、あと5日で突破できるのかな?」


 かくして、ゼノンの挑戦が今、始まる……。



どこかの鬼畜その1「ちなみに半径60キロだけどね☆」


その2「同情するわ。ゼノンくん……。抜けるのは無理じゃないかしら。死ぬほどのダメージを負ったらやり直しだものね。でもこうやって見れるのはいいわねぇ。どこが甘いのかよく分かるわ」


その1「神視点って言うんだっけ? これを元にレポートにまとめて最終日にあげれば感激して涙を流して喜んでくれるんじゃない?」


バルディック「『無茶ぶりから解放される安堵で涙を流して喜ぶ』の間違いなんじゃねぇのか……?」


シルヴァー「俺もそっちだと思うぞ」


その1「君たちもあそこで遊びたいの?」(ニッコリ)


バ・シ「「遊びたいわけないだろ!!」」




sideラヴィ


 メヌとの対戦、勝ちたかったわね……。対戦(ゼノンくんは試練かしら?)を終えてみれば、勝ったのはシルヴァーさんとゼノンくん。負けたのは私とロウくん、アルくんという結果になった。


 シルヴァーさんは事前に何段階かの対策を立てていて、それが見事に作用していた。彼には先見の明があるのではないかしら。とてもいいリーダーだと思うわ。


 ゼノンくんは咄嗟の対応力があると思うわ。あんなきつい罠が周りに仕掛けられてあってもなんとか突破できる底力は羨ましい。それに、度胸もあるわよね。洞窟を抜けて切り立った崖を登るって選択を取れるのだもの。


 ロウくんはまだ子供だから仕方がない部分もあったと思うけれど、それでもヴェトロさんに本気を出させるほどの実力をつけているのはすごいと思うわ。まともに鍛練し始めてからまだ3ヶ月だったたかしら。獣人、しかも肉食動物系だからというものもあるかもしれないけれど、その成長には目を見張るものがあるわ。


 アルくんは……手を抜いていたように見えたわね。まぁ、ロウくんが主体だから当然と言えば当然なんだけど。そのせいで今大変なことになっているのを見るとちょっと可哀想に思えるわね。どうも四六時中足が痺れている様よ。シルヴァーさんはつついて遊んでいたけど、後で報復されるでしょうね~。


 かくいう私は……完敗だったわ。魔力量とかの条件は同じだったのよ。勝敗を分けたのはいかに少ない魔力で魔法を使うかだったのでしょう。もっと使い込んでいればもう少し食らいつけていた感触があったわ。

 終わった後にメヌが教えてくれたのだけれど、私は珍しく全属性に適正があるからいくらでも上を目指せるそうよ。それならもっと頑張らなきゃ、ね。



「ラヴィ~、ご飯ありがとね。美味しかったわ~」


 心の中で決意していると、少し遅めの夕食をとったメヌが食器を返しに来ていた。


「それは良かったわ。夕飯も楽しみにしててね」


 ロウくんを除くうちのメンバーは『料理』はできても『美味しく調理』ができないと分かってからは料理は私が担当みたいな状態になってしまった。まぁ、楽しいからいいのだけど。


「もちろん! あ、そう言えばペナルティが何か分かった?」


「ええ。どうやら日中は初級魔法しか使えなくなるみたい。地味に嫌なペナルティね」


 そう、私が受けたペナルティは日中に使える魔法の制限だ。夜は普通に使えた。


「そうなの。ギリギリの使用魔力量を見極めるいい練習になりそうね。ちょうど良かったんじゃない?」


「そうね。これを機に極めて見せるわ」


「そうそう、その意気! あ、アルじゃない。ちょっと遊びに行ってくるわね」


 アルくんは災難ね……。そう言えばゼノンくんも地獄の特訓を受けていると言っていたわね。とうとう今日はふかし芋のみとか。少しでも美味しく作ってあげないと。塩はどこだったかしら? 





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