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虎は旅する  作者: しまもよう
クナッスス王国編
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王都15 入学試験


 さて、何時ものように爽やかな朝の空気を吸い込む。昨日も一昨日もこの後は朝食を食べてギルドに向かい、何かしらの依頼を受けていたんだが、今日はそれとは違う流れになる。


 覚えているだろうか。 俺とゼノンが学院に行くことを。どこかに通うにはつきものだろう? 何が? 入学試験が、だよ。


 そう、今日は入学試験だっ!


 いやー楽しみだ。何を要求されるのだろうか。ヨシズはそんなに気負う必要もないと言っていた。現役冒険者だから最低限の戦闘能力があるかどうかだけを確認するだけだと。


 だが楽しみにしたっていいだろう? 生まれて初めての学院生活になるんだ。昨日はソワソワしすぎて2人と1匹に笑われてしまった。


「うん……?シルヴァーか? なんで今日は生き生きしているんだって…ああ、そうか。今日は入学試験だったな…」


 生き生きしていて悪かったな! それにしても今日はヨシズはテンション低いな。いつもの様子を見るに、そこまで朝に弱い感じはしなかったがな。


「うーん……ほよぅ……ふぁああ……」

 ぐるるぅ……


 俺以外は皆低血圧か? 一人楽しみにしていたみたいで恥ずかしい。あと、ゼノンは『おはよう』と言ったみたいだが言葉になってないぞ。


 そろそろ目を覚ませ。いつもの起床時間だ。





「ふぁああ……。ところで会場はどこだっけ?」


 今は揃って朝食を食べている。今日は珍しくレーズン入りのパンだ。朝にこれが出るのは滅多にないのでどこか得した気分である。だがアルはいつも通りの肉だ。猛獣の食事シーンは迫力があるなぁ。アルの場合はなぜかその中にどことなく優雅さも漂っている(気がする)。一体どうやって食べているんだ? まぁどうでもいいことなんだが。


 あくび混じりのゼノンの問いに俺は数日前にしてもらった説明を思い出す。


「試験会場はこの街区の中心部だと言っていた気がする」


「ああ。そうだ。ここから出て二つ目の大通りを歩いて行くと見えてくる」


 そうだったな……ここ数日のうちに一度見に行ったんだが、学院は思ったよりも大きい建物だった。ギルドと同じくらいかな? 北街区での大きい建物の代表だ。


「何時からだったか知っているか?」


「あ、それは知ってる。たしか、9時から始まると聞いたよ。でも現役冒険者は12時までに行けばいいらしいよ」


「ならもう少しのんびり出来そうだな」


 今日は1日入学試験に時間を割くことになる。そして、受かったら明後日の始業式に出て、本格的に学院生活が始まる。


「この宿も引き払うことになるんだよな……」


「あらそうなの。寂しくなるねぇ」


 女将さんが近くに来ていたようだ。ここを去るかもしれないことを聞かれていたと知って俺達は顔を見合わせて苦笑いをする。ここの女将には良くしてもらっていたからちょっと後ろめたいのだ。


「すみません……」


「あら気を使わなくていいのよ。商売柄別れには慣れているわ。生死関係なくね。あなた達が向かうのは学院なのでしょう? たまに顔を見せてちょうだいね。お友達にもここを勧めてくれると嬉しいわ」


 ちゃっかり宿の宣伝も頼むその言葉に女将の気遣いを感じて救われた気分になる。商魂逞しいと感心しておくべきか。『生死関係なくね』の言葉には大変重みが込められていたが。やはり宿の女将ともなると別れというものが多いのだろう。まぁ、俺達は死ぬ訳でもないし、たまに顔を出せるだろう。


「落ち着いたら来よう。ここの料理も美味しいからな」


「ふふ。待ってるわね」






 さて、受付が始まる時間まで俺とゼノンはアルをもふったり、屋台を冷やかしたりしてのんびり時間を潰していた。ヨシズ? あいつは朝食後用事があるとか言って先に出て行ったぞ。またギルマスにでも呼ばれているんじゃないか? それにしては行き先を告げずに行ったんだよな。割と几帳面な面もあるヨシズにしては珍しいことだ。


「シル兄ちゃん、そろそろだよ。学院に行かない?」


「そんな時間か。じゃあ行くか。あ、アルは好きにしていい……と言いたいところだが、単独にしておくのが妙に不安なんだよな。一緒に来てくれるか?」


 ぐるぅ《そんなに我は信用できないのか?》


「いや、信頼はしている。だが、お前は……」


「「トラブル体質だろ(だね)」」


 俺とゼノンの声が見事に重なった。というか、アルが言ったことが聞こえていたのか?


「兄ちゃんが言ったことから推測するとアルに信用がないのかと言われたんじゃない? そう思っての発言だよ」


「そうか。頭の回転が速いなぁ。……で、アルは理解したか? ここにきた初日から騒ぎを起こしまくったことを忘れてはいないよな?」


 ぐぅ《理解した》


「どうせアルも学院の寮に入れてもいいか聞かなきゃならないから選択肢は無かったがな」


 ぐるぅ!《それを早く言え、シルヴァーよ》


 そんなじゃれ合いはさておき、


「さあ、ついた」


 王都都立学院――そこは、この王都設立当初から共に歴史を歩んできた、古くから続く施設である。改装や修繕も繰り返し今に至る。学院はレンガの壁で囲まれている。初代学院長が学院の周りは柵よりもレンガの方がいいだろう、院生は獣じゃないのだから。それに雰囲気も柔らかくなる。と言って、決めたそうな。



「シル兄ちゃん、受付ってあそこじゃない?」


 レンガの壁の横をしばらく歩くと切れ目……つまり門が見えてきた。その辺りはもうすでに列が出来ていた。


「ここが受付で間違いないか?」


「そうですよ。シルヴァー様にゼノン様ですね。一応ギルドカードを見せていただけますか」


 ここでもお役立ち、ギルドカード。俺の知らないうちにどんどん機能が拡張されているような? まぁ文句を言う訳ではないが。


「……はい、受付完了です。では、この先の入口から入って右へ進むと番号が振られている扉が続いています。お二人は4の番号の扉から入ってください。そこに説明の担当がいますのでその人に従ってください」


「あ、そうだ。アル……この魔獣も連れて行ってもいいのか?」


「構いません。ただし、戦闘試験で連れて行かないように気をつけてください。場合によっては入学取り消しの措置もあり得ますので」


「分かった」


 俺達は言われた通りに進む。どうやらこちらは特別な校舎のようだ。強い魔法陣の魔力が感じられる。


「ここだな」


 俺は扉を開ける。しかし、その先には職員であろう老人が1人しかいなかった。


「ええと、受付でここに来るように指示されて来た。シルヴァーと言います」


「同じく、ゼノンといいます」


「ほうほう、まず名乗ってくれるとは。これは丁寧な子が来ましたなぁ。儂はドルトールじゃ。ドル爺とでも呼んでくれたらいいぞい」


 ドルトールさん……ドル爺と話しているとどこか気が抜けていくような感じがするが、完全に緊張を解いてはいけないと俺の中の警鐘が鳴る。何故なら、この御老人、おそらくとても強い。よく見ると魔力が半端ないし、目も心の中を見透かされている気分にさせられる。


「では、ドル爺。俺達はどんな入学試験を受けることになるんだ?」


「ほっほ……怯えもせんか。結構結構。そうじゃな……2人には特別アリーナでの戦闘試験を受けてもらうことになるのぅ。気づいているやもしれんが、この場所はアリーナへの魔法陣が敷かれておる。儂の所から行くアリーナで待っておるのは最短最速、だが最難関の試験じゃな。まぁなんとかなるじゃろう。そこの狼はここで待っておれ」


「ちょ、待て……」


 では起動するぞぃ♪ と、俺達の制止を綺麗さっぱり無視して、本当に魔法陣を起動させやがったドル爺は、


「死にはせんよ……多分」


 と大変不吉な言葉を残して光の向こうに消えていった。






 実は俺は転移酔いになりやすい。不意に転移させられると十中八九酔う。もし試験を失敗したらどうしてくれるんだ。


 ……覚えてろよ、クソジジイ!


 つい口汚く吐き捨ててしまったのは仕方がないことだと思う。






入学試験は最初に入った部屋の中にいた職員の威圧を受け流すことです。

ドル爺は1番厳しかったりw

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