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虎は旅する  作者: しまもよう
クナッスス王国編
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別視点 王都に到着


 少し時を戻して。ヨシズ視点



「冒険者の方々、少し聞いてもらえるか」


 ウルフ襲撃の後、何か相談していたガーリックが声をかけた。


「今からだと王都に着くのは夜中になる。だが、そのウルフ? は中に入れてもらえない可能性が高い。だから明日の朝位に着くように調整したいと思う」


 やはり予期せぬ同行者が問題のようだ。シルヴァーのそばにいる奴はどうやら幻獣の類いだという。とはいえ、確定しているわけでも無いのでもし人を襲ったら大変なことになる。そう考えるとある程度強くても押さえつけられる人が多い昼間というか、明るいうちに着きたい……ってことだ。


「それでいいと思うぞ。俺たちにとっても昼に着いた方が宿が取りやすいからな」


 ゼアたちにも異論はないらしい。


「だが、そんなに王都には強い存在がいるのか? 言っちゃあなんだが、神狼様(フェンリル)、かなり強いぞ? 大きくなられたら詰むと思うが」


 シルヴァーが疑問をこぼした。ま、シルヴァーほどの非常識人ならそう思うよな。……あれは最近になって冒険者になったやつは知らないだろうが。


「王都はな、ギルドマスターが最強なんだ。その下にいるギルド職員もそこらのBランク冒険者の実力を超えていたと思うぞ」


 おー驚いてる驚いてる。ついでに王都の学校のいわゆる冒険者コースでは彼等が教鞭を執っていると言うと、シルヴァーとゼノン二人で通うことを真剣に考え出した。俺はもう卒業したから行けないけどな〜。


「ヨシズ。冒険者稼業のかたわら学院通いでもいいか?」


「ま、良いんじゃねぇか?」


「多分、ヨシズに不便を強いることになりそうだが」


「そうなったらそうなったで考えていることがあるから心配することはないぞ。最短で半年、最長で三年だ。出来れば最短を目指して欲しいがな」


「ちなみに卒業条件は? 何か知っているのか?」


「確か、ランクを最低でも1つ上げることだな。すでにDランクだったらCランクに上げること、CランクだったらBに上げることが卒業の条件だったかな」


「俺達はDランクだから目指すのはCランクか」


 シルヴァーはそう言うが、こいつらは実力的にBランクかそれ以上だろう。Dランクのタッグであの森に入って生き残るだけでなく多種多様の魔獣などを狩れるやつはそういない。んなこと出来る奴らがたくさんいてたまるか。


 だから俺は二人を煽ってみる。


「学校ではBランクまで上げられるんだ。限界までランクを上げればいい。……立ち入り禁止区域も場合によっちゃあ入れるぞ?」


 ヒトとは、得てして禁止という言葉に弱いものだ。


 その言葉を聞いた瞬間、確かにシルヴァー、ゼノンの二人の目が輝いた。他人の手前、言葉に出すのはまずいから何も言わないが目が、顔が、態度が雄弁に物語っていた。


『強敵と闘える!』


 この二人、実は戦闘脳……だよなぁ。




閑話休題(それはさておき)




 王都に着いて、やはりシルヴァーの頭の上のウルフ? が問題になった。だが、ギルドマスターが起きている日中だ。そこまで警戒されるわけなくあっさり通れた。ここまで寛容なのも珍しいよな、やっぱり。ただ、今日のうちにギルドマスターに会って何の魔獣か確かめてもらえと言っていた。……王都のギルマスって確かあいつだったよな。そんな暇あるのだろうか。周りをギルド屈指の実力がある職員で固めてようやく真面目に仕事をさせられるような奴だからな。逃げている可能性もなくはない。


 門から1ブロックほど歩いた所には馬房がある。そこまで行って、ガーリックは以来達成だと言い、俺達はギルドに行くことにする。パーティだから誰か代表で行けば良いのだが、なんとなく皆で歩いて行った。

しかし、シルヴァーの頭の上のウルフ?は目立つこと甚だしい。小さくなっているからたいして目立たないだろうと思ったが認識が甘かった。女はかわいいものが好きだよな。


 どういうこと? そういうことだ。


 ともかく、黄色い声(奇声?) を上げて追いかけてくる集団は恐怖である。シルヴァーには悪いが(だがあまり罪悪感は湧かないが) 頃合を見計らって離脱させてもらう。



「「「キャァァー……」」」


「行ったか……」


 シルヴァー、後は任せた!


「ヨシズー! いいのか? 見捨てても。あいつお前らのパーティのリーダーだろ?」


 ニヤニヤと笑ってゼアが声をかけてくる。お前もシルヴァーを見捨てた一人だろうに。


「いいだろ。元はと言えばシルヴァーのせいだしな」


 追いかけて来たのは女性ばかりだからこのまま逃げ続けてもいいかとも思ってしまったがあの中に心の底から見たくもない存在がいたから迷わず離脱した。


 俺の見たくもない存在……そう、女性に混じって腰をくねらせ奇声を上げる()、いわゆるオネェである。


「あ、でもシルヴァーにいちゃんがいないと通学申請出来ないんじゃ……」


 ゼノンが今気付いたとばかりに言った。だが心配する必要はない。


「いいえ、同じパーティメンバーがいれば申請は通るわ。だから安心してギルドへ行きなさいな」


 俺が何か言う前にレラに言われてしまった。


「その通りだ。ゼノンが責任持ってシルヴァーの分も申請しておけ。あいつ、伯爵に用事があると言っていたから戻って来た時はもう覚えてないだろうからな」


「伯爵? どこのツテよ。あ! 分かったわ。ガードンの家ね。確か、イルニーク家」


「そこしかないだろうなぁ。【猫居つく亭】であいつ、頭抱えてたぞ。礼儀作法が〜とか言いながら。あの時は笑った笑った」


「そういうヨシズは貴族の礼儀作法は分かるのか?」


 ゼアが聞いてくる。


「分かるぞ? 学生時代に何故か冒険者コースを受けていたボンボンに教わった」


「変人ね!」


「「身も蓋もねぇなぁ」」



 そう話しているうちにギルドに着いた。まずはガーリックの依頼達成の報告から。



「……では報酬は8人での等分でよろしいですね? 皆様には追加報酬の指示もございます」


「うん? 今回はそこまで感謝されるほどの働きはなかったと思うが」


 ゼアがいち早く確認を取る。またしても俺が言う前に……。


「先程入った指示ですので、皆様は確かに満足できる働きをして来たのだろうと思いますが?」


「いや、でもなぁ……」


「でしたら、私共がいただきましょうか」


 無表情でとんでもないことを言う受付嬢。


「いやいや、あんたらが捕まるから」


「ならば私共が捕まらないように大人しく受け取ってください」


 カーンと試合終了のゴングが鳴った……気がした。


「あの……」


 この変な空気の中ゼノンが受付嬢に声をかける。用件は当然あのことだろう。


「どうかされましたか?」


「学院への通学申請をお願い出来ますか?」


「いいですよ。何人で、どのコースを受けますか?」


「2人で冒険者コースを」


「夕方にもう一度ここへ来てください。その時に入学に関することを話させてもらいます」


「分かりました」








「じゃあ、また機会があれば一緒に依頼受けような!」


 ゼア達のオススメの宿で昼食を食べて俺達は解散する。ちなみに、俺達もこの宿に泊まることにした。


「泊まるのはいいが、シルヴァーはここを知らないだろう。回収しなきゃならないな」


 どこで? ギルドが一番分かりやすいだろう、うん。


「そうと決まれば行くぞ」


「一体どんな結論を出したのか言葉で言ってよ……」


 ブツブツ文句を言いながらもゼノンはしっかり着いて行く。わざわざ迎えに行くとはなんとリーダー思いの仲間だろうか。



 ……なんてな。実際、迎えに行かないとシルヴァーは野宿する羽目になるからな。願わくは、あの群衆を撒き切っていることを。


 今日は乗り切っても明日また騒動が起こりそうだがなー。どうしたものか。






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