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虎は旅する  作者: しまもよう
アヴェスタ教国編
151/459

セイジョーの町2

次は8月9日の投稿を予定してます。

投稿が無理かもしれないと思ったらそのことをあらすじの最初の方に書きます。

アヴェスタ教国編として章分けしました。とりあえず竜峰の話からです。


2017/08/03 ゼノンとアル台詞を追加しました~。うっかり消してしまっていました……。

 キリトの先導に従って俺は馬車を進めていた。宿までの短い時間のうちに簡単に位置などを聞いていた。


「宿の名前は【滝登る鯉の宿】という所です。中央の領主館に一番近い場所にあります」


「中央? それならかなり良い値段するだろうに……」


 中央は領主館がある関係であまり粗野な冒険者を近付けないようにわざと値段を高めに設定している。もちろん、値段に見合ったサービスはしているのだが。

 ……確か、貸し切ったと言っていたよな。本当に邪魔していいものだろうか。


「そうですね。しかし、アリウム様なら問題なく行えることです」


「どれだけの豪商なんだ……」


 俺は額を軽く押さえて呻くようにそう言った。だが、それは本気で呆れているわけではない。


「目が笑っていますよ、シルヴァーさん。……あなたはアリウム様の正体について何かしら察しているものがあると思われますが」


 まぁ、そういうことだ。アリウムがただの豪商どころではないことはもう分かっている。


「……はぁ、すごい豪商という設定でいてもらいたかったんだが」


 王族とか、貴族だと言われるよりはまだマシな気がする。冒険者なら商人と既知でもおかしくないからな。王侯貴族よりは……。


「それは残念でしたね。生憎ですが、アリウム様はあなた方を完全に巻き込むつもりのようですよ。もちろん、あなた方の戦闘力を見て大丈夫だと判断したからですが」


「俺が言うのも何だが…戦闘以外は本当に役に立たないからな?」


「もとより冒険者に政治的なあれこれを期待するわけがないでしょう。僕も詳しく教えて貰っているわけではないのですが、シルヴァーさん達は闘技大会に出場するのだとか。おそらくはソレ関係でしょう」


 なるほど。闘技大会はいろいろな思惑が絡むんだな。今更だが、出場は安請け合いしすぎたか? いや、だが名声は必要なのだ。


 ……その方がこれから動きやすいし、闘技大会はその手っ取り早い手段だ。


「さぁ、ここが【滝登る鯉の宿】です」


 俺はキリトの指示に従って馬車を指定された場所に置いた。そして、宿の前まで回ってその扉を開く。


「―――申し訳ありません、本日は貸し切りとなっております」


「ああ、個々を貸し切ったアリウム様の関係者だから大丈夫です。僕はキリト。護衛の一人です。彼等のことも僕が責任を持ちますので」


 入ってすぐにスッとやって来た従業員が貸し切りになっていると言ったが、それは俺達も承知している。キリトが代表のように一歩前に出て何かを掲げて見せていた。おそらくはアリウムの家の紋章か何かだろうな。


「ああ、そうでしたか。こちらで部屋を決めますか?」


「うーん。そうですね。今部屋を決めてしまっても問題は無いでしょう。シルヴァーさん、二階以下の部屋で、宿泊したい場所を自由に決めて下さい。これから客が増えることはないはずなので一人一部屋でも構いませんよ」


 貸し切りだからか、本当に自由に決められるようだな。


「どうする?」


「せっかくだから一人部屋にしてもらえばいいんじゃねぇか」


 とは、ヨシズの言葉だが、他のメンバーも同じ意見のようだった。確かにここまで俺達は一人一部屋など贅沢なことはしていなかったな。せっかくだからそうしようか。


「じゃあ、一人一部屋で」


「かしこまりました。皆様は近くの部屋にした方がよろしいですか?」


「ああ、そうしてくれ」


「では、そのように。……これが鍵になります」


 俺達は鍵を受け取ってそれぞれの部屋へ向かった。


「ところで、キリト。俺達はアリウムに顔を見せた方が良いのか?」


「そうですね…シルヴァーさんだけでも良いと思います。他の人達は町を観光するなりご自由に。ただ…宿とアリウム様については誰に何を聞かれても話さないようにしてください」


 その言葉を聞いて俺達は顔を見合わせた。やはり、下手に動くと面倒なことになるようだ。


「……だそうだが、どうする?」


グルルゥ《我はストレス発散に森へ行ってくる》


「アルは森か。ほどほどで切り上げろよ」


「じゃあ、ストッパーとしてアルについていくよ」


 俺の言葉を聞いてゼノンが手を上げてアルについてくれると言ってくれた。俺といるとゼノンのストッパー機能はその効果がなくなるわけだが…アルには機能するよな?

 その横でヨシズは考え込んでいる。


「あー、どうするかなぁ…とりあえずオレは観光してくることにするぜ」


「僕もそうさせていただきます。この町の人は獣人に偏見などは……?」


「まれにいますが、ほとんど問題は無いと思います。お年寄りは少々過激な思想をまだ持っている人がいるかもしれませんが…大さわぎになる前に周りが止めますよ」


 キリトのその言葉を信じるならば獣人に対する偏見はないとみてよさそうだな。それなら、ロウを一人にしても問題は無いか?


「分かりました。では、僕は市場にでも行ってきます」


「ああ、市場に行くなら夕方頃が良いと思いますよ。今の時間だと少し早いでしょう。ほんの二時間ほどなので適当にぶらついていても潰せる時間だと思います」


 ロウは市場を見に行くようだな。闘技大会の情報を得てくれれば嬉しい。


「シルヴァーさん、私は部屋で休んでいるわ」


「分かった。十分な休息を取ってくれ」


 ラヴィはまだ魔力が完全に回復していないのだろうな。やはり無理させすぎたか……。


「シルヴァーさん」


 竜峰ではしゃぎすぎてメンバーをしっかり気遣えていなかったことを内心で反省していたところ、ラヴィがくるっとこちらを向いて背伸びして俺の頬をぺちっと両手で挟んできた。


「なっ、ど、どうしたんだ」


 真剣な瞳を向けられて少し狼狽える。


「私の不調は私の落ち度なのよ。シルヴァーさん。あのペースでは体力が持たないことは分かっていたの。最初からね。だから、プライドに拘らないで言えば良かっただけなのよ……ごめんなさい。このままじゃダメね、いろいろと。頭を冷やしてくるわ」


 それだけ一気に言うとラヴィは俺が何かを言う前に部屋に入り扉を閉めてしまった。

 目の前にある扉に俺は額をつける。


「ラヴィ。それでも俺はもっと見ているべきだった」


 よく見てちょうどいい落としどころを見つけなくてはならなかった。例え評価が落ちようとも。

 扉の向こうは沈黙したままだった。



*******



コンコンコン


「アリウム様、マリ隊長、キリトです。シルヴァーを連れてきました」


「どうぞ~」


 俺が連れてこられたのは四階の部屋だ。金持ち御用達の部屋なのだろう。扉と扉の間隔からして相当広そうだ。


「よく来たな、シルヴァー。そこに座ってくれ」


 アリウムがソファに座っていた。その後ろにマリが控えているが、門で見せた怖い空気はきれいさっぱり消え去っていた。一礼してから部屋に入りつつちらりと部屋を見る。予想通りかなり広い。そして、高そうな家具が揃っている。壊して弁償することになったら溜め込んだお金が飛んでいくな。


 関わるつもりはなかった世界だ。余計な騒動を持ち込まれなければいいが……。無理かもしれないな。


 俺はアリウムに示された椅子に大人しく座る。


「まずはお疲れ様。先に行けなど無理言ってすまなかったな」


「いや……結局俺達が騒ぎを起こしてしまった。謝るのはこちらだろう」


 それに、先に行く程度無理でもなんでもなかった。


「まぁ確かに…君達が騒ぎを起こすとは思わなかったな。先程は深く聞けなかったのだけど、騒ぎの原因は一体何だったんだ?」


 ……これは話しても大丈夫だろうか。アリウムなら悪いようにはしないよな?


「……ロータルガードへの入場許可を得ているんだ。この先五年はロータルガードの鍛冶師に依頼できる」


「ああ……それでか。騒ぎになるわけだ。ま、納得がいったよ。それはともかく、呼び出した理由を話そうか」


 そうだ。俺はただ雑談をしに来たわけではない。雑談で済む用事ならそれはそれで良かったのだがな。


「……ふぅ、覚悟は決めたから話してくれ」


「ああ。まぁ、そんなに大仰に話すことでもない。私達は闘技大会に間に合うように都へ入るつもりだ。実はちょうど君達も闘技大会に出ると聞いた。君達の人となりも知っているし、どうせならまた護衛を頼みたいと思って呼び出させてもらった」


 護衛依頼ということか……? ギルドを通さないのは困るのだが……。


「それは指名依頼としてもらえるのか?」


「そうですね。その方がいいのなら指名依頼という形にしましょう」


 さて、まずは軽い話し合いだ。まだ本題ではないのは。


「アリウム様~。遅れましたが、お茶です」


「「マリ(隊長)!?」」


 湯気の出たカップを四つ持ってきたマリを見てアリウムとキリトは驚いていた。……驚きすぎと言えるほどに。


「? どうしたの? ゼアがいないからあたしが淹れたんだけど」


 彼等の中でお茶汲み係はゼアなのか?

 俺の頭の中でガタイの良い男がいそいそとお茶を淹れている絵が浮かんだ。


 ないな。


「隊長。ええと…隊長が淹れるお茶は美味しいですよ。でも、毎回激マズのものが混ざっているじゃないですかっ」


「そ、そうだな。流石の私も真面目な話をするつもりの場でロシアンルーレットはやりたくない」


「え~と、でも……」


 俺達はマリの淹れたお茶を見下ろしてゴクリと唾を飲んだ。

 さぁ、どうする?








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