ドルメン11 雑務依頼 魔道具屋〜
見てくださっている方に感謝を。
さて、次なる目的地は魔道具屋である。ここから大体10分歩いた先にある。今日は昨日よりも時間があるからゆっくり行くとしよう。昨日は店の少女を大分待って、ようやく弁当を渡せた所でうっかりその子の言葉に疑問を持って聞いてしまったため、非常に長く魔道具についてのうんちくを語られたな。今日は、気を付けよう。
ああ、そう言えば名前を聞いていなかった。昨日聞いておけばよかった……。一度行った所だし、二回目に来て名前を聞くのは何処と無く間抜け感が漂うんだよなぁ。それに、女性に名前を聞くこと自体緊張する。
「おはようございます。弁当を届けに来ました!」
「はーい! 今行きます」
さて、来てくれたのは昨日の少女。同じ様に弁当を渡して、今日の本題へ。
「申し訳ないのだが、呼び方に困るので名前を教えてもらえないか?」
「ああ! そう言えば、名乗ってませんでしたね。私はエレンと言います」
「シルヴァーと言う。ここを発つ前に少し世話になると思う」
改めて、自己紹介。魔道具は本当に役に立つので、王都へ向かう前に幾つか買う予定だ。それを交えて言ってみる。
「あら! ぜひご利用下さいね!」
可愛い子がいる所には自然と足が向かう。ぜひ利用させてもらいます。……少し親父っぽい思考だな。
「それでは、お邪魔しました」
「あまり無茶はしないようにね」
……アンさんの親衛隊(過激派)との対戦のことか、ピギーとの戦闘のことか。この分じゃかなり広まっているのかもなぁ……。ラグールの所では聞かなかったが。でも、ヨシズが来ていたみたいだし、話は知っていそうだな。
「善処します」
今はこれしか言えない。冒険者とは、無茶するものだろう!(開き直り)ピギー2体を相手取るくらいなら問題無いしな。
※普通シルヴァーのランクの人は虎人族であったとしてもピギー1体に2~3人でかかる。端から見れば普通に無茶です。
と、そんなにのんびり考えていられるのは昨日に比べればまだ大分早い時間だからだ。12時に報告するのに十分間に合う。
次に行く教会は鍛冶屋や魔道具屋のある区画から真逆の方向にあるからこのスピードだと30分くらいかかるかな。
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教会の近くに着いたが、今日は何故か草刈り鎌を持った人が大勢いた。何かあるのかと近くの人に聞いてみる。
「すまないが、一つ質問して良いか?」
「おう。どうした?」
「ここで何かあるのか?」
「おまえさん、この町に来たばっかりか? ここの草が大人の腰を越える高さになったら草刈りイベントが行われるんだ。参加賞として少しだけ薬草の種がもらえるんだ。薬草は需要が高いからな。農家は皆参加するからこの賑わいだよ」
なるほど。それなら多分草刈り中は通れなくなりそうだ。急ぐべきか?
「教会に用事があって来たんだが……」
「それなら早く済ませた方がいい。イベ中は通れなくなるぞ」
やはり。教えてくれた男に礼を言って、俺は少し急いで教会へ向かう。
「すみません! 弁当の配達です」
「はい〜。あら、昨日の方ですね。大広間に来ていただけますか?割符もそこにあるので〜」
俺はシスターに着いて行って大広間に来た。そこでは、子供達が何か書き取りの練習をしていた。
「ごめんなさいね〜。今午前の勉強の時間なので皆ここにいるのです。弁当はあそこに置いていただけますか? 割符はこれです〜」
まず、割符を確かめてから指定された場所へ弁当を置く。この順番は外せない。今回も弁当は15個になる。
「よしっ。これでいいな」
「ありがとうございます〜」
子供達の集中を乱さない様にそっと戻る。教会から出ようとした所で後ろからタタタッと軽快な足音が聞こえてきた。
「シルヴァー兄ちゃん、 待って!」
「ゼノンか。どうした? 勝手に抜け出すとシスターから雷が落ちるんじゃ無いか?」
「うっ……。今回はちゃんと言って来たから大丈夫。シスターが本気で怒った時のことを思い出しちゃったじゃん。……ではなくて。話したいことがあるんだ」
ゼノンは自身の雰囲気を一変させる。真面目な話か。茶化す場面じゃないな。
「どうした?」
「シルヴァーにいちゃんって今はソロで行動している? 旅に出る予定はある?」
この質問が一体何に繋がるのだろうか。
「ああ、近い内にな。それがどうかしたか?」
「俺をパーティに組み込んで連れて行ってくれませんか! にいちゃんの荷物にはならないと思う。ギルドランクもDまでは上げてある。討伐だって出来る。だから、」
「ちょっと待て。それは今決められる様なものじゃない。俺も一つ聞くが、討伐が出来るってことは15歳にはなっているってことか?」
ギルドで討伐依頼を受けられるのは15からである。そして、大人として仕事を任せられるのも大抵はその年齢からだ。人生の節目として何かするにはちょうどいい年だ。だが、見た目15に届いていないゼノンだが……。
「皆信じてくれないけど15歳だよ。一月後には16になるよ」
「驚いた。まぁ、年齢的に問題はないな。だが、シスターの了承と戦闘能力はどうなんだ?」
「シスターの了承はもらっているよ。戦闘能力についてはここら辺の魔獣は気付かれなければソロで倒せるよ」
気付かれなければ?どういうことだ?
取り敢えず今日のところは保留だと告げて俺は教会を出る。コンラッドにもパーティメンバーはいた方がいいって言われたばかりだから一考の余地はあるんだよな。ただ、ネックは戦闘能力か。余りにも未熟な技術なら俺に守る技術が無いことも相俟って連れては行けないな。だが、15歳の普通の人間で討伐は出来るとしたら十分実力はあるのだろうか? ……これは考えても意味ないな。
丁度草刈りが始まりそうなところ、謝って通してもらう。
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気持ちを切り替えて、診療所へ向かう。
「すみません! 弁当を届けに来ました!」
昨日と同じ台詞を言う。
「ご苦労。割符はこれだ」
「今日は近くに置いておいたんだな。……問題ないな。はい、これが弁当だ」
「明日も出来ればこの時間で頼む。以前初心冒険者がこの依頼を受けたらしいが、2時を超えたくらいに宿の職員が謝りながら弁当を持って来たことがあってな。そこまで遅れるのはさすがに困るからな」
昨日のサーナさんが話していた一人一人に時間掛け過ぎだというあの話か。
「なるほど。主張としては12時前に弁当が届いて欲しいと言ったところか?」
「ああ。最近は昼から少し忙しいからな。食べられる時に食べられる様に早目に確保しておきたい」
「分かった。明日またこの時間に来よう」
「頼む」
その言葉を背に診療所を後にする。そして隣の薬屋の前を通りかかったが、今日は開いていなかった。今日は薬は診療所へ求めて下さいと張り紙はあったが。
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無駄話せずにさっさと弁当を渡して来たので割と早目に【猫追うネズミ亭】へと戻って来れた。
「こんにちは。サーナさん、いますか?」
「はい。シルヴァーさんですね。早いですねぇ。他の冒険者方も見習っていただければいいのですがね」
「「サーナさん、私達初心者ですよ! まず体力付けなのに早さを期待しないで下さいよ〜」」
たまたま聞いていた初心冒険者の数人が即座に反論した。基礎体力はあるはずだから問題ないと思うんだがなぁ。
「ふふ。でもあなたたちも近い内にこれくらいの早さで出来るようにならなきゃいけないのよ」
「そうだろうなぁ。俺が受けているようなのはローリスクローリターンだから早く受け終えて午後に討伐とかハイリターン系の依頼で過剰分を求めて行くのがベストだろう」
「「………先が長い………」」
俺の追撃とサーナさんの言葉に撃沈する初心冒険者諸君。まぁ、なんだ。きっと誰もが通る道なんだよ。頑張れ。
「さて、依頼完了ですよね? 割符とギルドカードをいただけますか?」
「これだ」
「……はい。お返ししますね。割り増しの指示も入れておきました」
「えっ……。手続きが必要ではなかったか?」
「昨日まではそうでしたね。今日から詳細な内容記載が可能な新しいものになったんです。前から予定されていたのですが、一週間ほどずれ込みましたねぇ」
「なるほど。便利になるのはいいことだ」
「ええもう、本当に」
その後二言三言交わして俺は宿を出た。時間的に見て今日も先に昼飯にしようか。




