ロータルガード4
さて、やって来ました【流星】。ケイトが言った通り、店はそのままの場所にあった。
「ここがケイトとやらの店か。また由来の分からない名前だな」
「確かに。何を思って流星という名前にしたのだろうな。余裕があったら聞いてみるか」
俺達はケイトの店に入る。
「いらっしゃいっ。待ってたよ、シルヴァー」
「ああ。今ここに居るのが俺のパーティメンバーだ。ヨシズにゼノン、ロウ……は知っているか。ラヴィさんにアルだ」
「狼……? いや、聖獣のフェンリルかなっ。珍しいね。私はケイトだよっ。魔道具師をしているよ。よろしくっ!」
アルをそのフェンリルだと見抜く、か……意外と侮れないのかもしれないな。まぁ、魔道具師というからにはかなり良い目を持っているのが普通だが。
「本当にテンションが高いな……ともかく、まずは依頼したい物を出せば良いか?」
「隅から一つずつ出していって」
俺の装備は既にケイトの方にある。だからカウンターに出したのは五つの装備だった。それをケイトは一つずつ見ていく。
「うっわぁ……虹色だねぇ……」
まず最初に見たロウの【トカゲ装備】に絶句していた。ケイトの言う通り、虹色で綺麗なのだが……トカゲってもっと保護色ではなかっただろうか。ロウの装備は保護色などくそ食らえと言わんばかりに目立ち、キラキラしたエフェクトをまとっているように見えたりする。冒険者の防具としてはあり得ない配色だ。
「個人的には色を黒などに出来たら良いと思いますが……」
「そうだねっ。これじゃあ目立ちすぎるものね……あ、これは私でも無理だ。魔道具の効果が色と形で定まってるみたい。形は少しは変えられるけど、これ、もう既に手が入っているね。これ以上の変形は無理そう」
「やはりそうですか」
ロウの表情が消え去っていた。諦めやら失望やらが合わさり、一周して無表情になったようだ。気持ちは本当によく分かる。
「うん、これも消耗はしているけれどそこまで問題ではないかなっ。でも、念のため回復させておこうか。それで、次は……これも……着るのに勇気がいるよねぇ」
次にケイトが手に取ったのはゼノンの【ぐんそう装備】だ。これは見た目が本当に最悪である。フォーチュンバード製のどの装備にも共通(ただし、ヨシズのは除きたい)しているように、特殊能力は素晴らしいが見た目が悪い典型だ。この装備は隠密能力を底上げしてくれるようで、ゼノンにピッタリだった。
「実は、まだ使い慣れていなくて小さい傷が出来ているかも」
「確かにね。十分直せる範囲だから心配しないでねっ」
「正直に言うと直らなくてもいいんだよね。着たくないから」
ゼノンの目がマジすぎる。俺も全く同じ気持ちだ。
「でもこの性能を見ちゃうともったいないって気持ちが沸いて捨てるに捨てられない、と。大変だね~。……っと、よし、次は~」
本当に他人事な態度だな。
ケイトが次に手に取ったのはラヴィさんの【アゲハ装備】だ。これは戦闘向けだとは到底思えないひらひらした服だ。女物という印象が大きい。だから男が着たらひどい視界の暴力になるだろう。
「これはほとんど損耗していないね。これもなかなか良い機能が付いているねっ。身体能力の引き上げに加えて……回避力が上がるのかな? 今の技術じゃ絶対に作れないよ。あ、この装備はこのままで大丈夫だよ。もう少し手を加えられそうだけど」
「そうですか。それは良かったわ」
「ね、ちょっとだけ着て見せてくれたりとかは?」
「嫌です」
にべもない。この衣装は比較的マシな方だが戦闘時以外は着たくないということだろう。ラヴィさんが着ると可愛いと思うのだが、ラヴィさん自身はそうは思えないらしい。
「残念。ま、いいか。次のはサメ? これだけは少しデフォルメされているんだ。で、泳げるようになる機能が付いているみたいだねっ」
「無駄な機能な気がするが。泳がなくてはいけないほどの川はこの辺りにはないだろう」
「割と深い湖が竜ヶ峰の方にあったよ! それに、公国の一部が海に面していたと思うよ。そこで泳ぐ機会があるんじゃないかなっ」
どうだろうな。俺はたぶん泳げないぞ。だから泳げそうな場所があっても無視しそうだ。
「その装備はどれくらい損耗しているんだ?」
「この頭のところの損耗が激しいね。まぁ、この着ぐるみ……ごめん、装備の形からして頭突きが効果的なんだと分かるから納得のいく損耗具合だけど……たぶんこれさ、魔力を流せばより固くなると思うよ!」
そんな機能もあるのか。全く気付かなかったな。やはり王都で無理を言ってでも装備の詳しい能力を聞き出しておくべきだった。
「最後は……【ドラゴン装備】だね。見た目だけじゃなくて、素材も本物の竜の素材を使っているよっ!?」
「えっ!? マジか……」
何故それに今まで気付かなかったか。それは王都でこれらの装備の改造を依頼した職人が顔を出してくれず、説明もなかったからだ。それに、竜など、このところ数十年は討伐された記録がない。俺達の誰もが竜の素材を見たことがなかったのだから分かるはずがない。
「耐火テストでもすれば一発で分かるんだけどねっ。で、これは全く損耗していないねっ。使っていない訳ではないようだから…まさか、自動修復機能付き? 信じられないね……伝説の装備か何かなのかなぁっ!」
盾も自動修復機能があって、防具の方も、か……。フォーチュンバードから手に入れた装備の中でもっとも当たりではなかろうか。何より見た目が良いからな! ……見た目が良いからなっ!
ケイトはヨシズの【ドラゴン装備】にまさかの竜素材が使われていることに気付いて呆れ気味に言っていた。俺は予想以上に性能が良い【ドラゴン装備】を手にしたヨシズが羨ましくなった。
「それじゃあ、この虹色のと蜘蛛とサメと……カニを預かっておくよ。だいたい五日で終わらせられるかなっ」
そういうことであとは何も用事が無いので俺達は店を出る。全員が出たところでシュン……と店が消えた。今回はたまたま目を向けていたので急に消え去って本当に驚いた。
「本当に【オモテ】みたいだな」
「確かにな。だが、ああいう風に店ごと転移する魔術陣は売りにも出していなかったはずなんだ」
学院にいたときに少しだけ話す機会があり、そこで【オモテ】に使っている魔術陣について質問してみたのだが、実はあれはまだ試作段階で今はコスト削減が課題だったとか話していた。だから売られてはいないらしい。
「ケイトが学院長から盗んだとかしたのかな?」
もしそうだったらケイトを見る目が変わる気がするな。どこの凄腕盗賊だ?
「そういえばケイトはアーリマ公国を警戒しているようだったが、関係あるだろうか」
俺としてはむしろこちら関係で手に入れた技術を使っているんじゃないかと思う。
「うーん……アーリマ公国の秘伝の魔術陣を持ち出したとか」
そこまで突飛な意見を聞くとは思わなかった。もしそれが正しいとしたらケイトは追われるどころじゃないだろう。特に、こんな厳重に守られているロータルガードに入れるとは思えない。
「それが正しかったら俺は学院長を疑うな。学院長もそれを流用していることになるだろう。まぁ、あの人なら自力で作れるんじゃないかとも思うが」
学院長の評価は化物(あらゆる意味で)だからな。あり得ると思わせられるあたりが学院長クオリティーだ。
「そう言えばゼノン、シスターからの用事は……」
「あ、忘れてた。いろいろ新事実が明らかになりすぎて」
おいおい、また【流星】を探さなくてはならないのか?




