ファミチキを創造した訳だが
「ここまで来れば大丈夫だろ…たくっ、久しぶりの獲物だったのにな」
「ほんとにな…あぁ、それにしても腹減った」
「それは困りましたね。どうぞこのファミチキを食べて下さい」
俺は並んで立っていた二人の間を通すようにぬぅっと2つのファミチキを差し出した。
「「ファッ!?」」
「…ミチキです」
そんなに驚かなくてもいいじゃないか。
いくら赤ちゃんで歩幅が狭いと言っても、俺が少し本気出して追跡すりゃこんなもんよ。
俺のAGIを持ってすれば貴様らみたいなガキ共に追いつく事は非常に容易いのよ?というかやっぱり俺のステータスは規格外だったみたいだね。
走っている間、俺はボルトにでもなった気分だったよ。
「お、お前!何でここにいんだよ…」
「赤ちゃんがついて来れる速さじゃなかった筈なのに…」
「ふふふ…私をそこら辺の0歳児と同じだと思っていると後悔しますよ?それよりほら、食べないのですか?ファミチキ、冷めちゃいますよ?」
いや、創造マジ便利。頭の中で
(ファミチキ下さい…)
って頼んだだけで出てきたもんな。
あ、やべ、ファミチキに伏字使うの忘れてた。ま、いっか。
「「ッ!!」」
ここにきてガキ共も、ようやく俺が手にしている物が食べ物だという事に気付いたらしかった。ガキ共は慌てて俺の手からファミチキを奪い取り、それを貪り始めた。
「ハフッ…ハフッ!うおォン!俺はまるで人間火力発電所だ!」
「ハフッ…ハフッ!焦るな、俺はただ腹が減っているだけなんだ…よく味わって食べるんだ…」
うんうん。良かったねキミたち。ところでキミたちはどうしてその台詞を知っているのかな?まずもってこの世界には発電所とかない筈なんだけどそこんとこはどういう訳?まあいいけど。
俺はガキ共がまるで獣の様に、卑しくファミチキに喰らいつくその愚かな姿を生温かく見守りながら二人が食べ終わるのを待つ事にした。
「ふぅ…こんなうまい物久しぶり…いや初めて食べたよ」
「俺も初めてだった…お前、これどこで盗んできたんだよ」
盗んで来た事を前提に聞かないでおくれよ。
脳内で店員さんに注文しただけだよ。
「盗んで来た訳ではないですよ。これは私が魔法で作ったのです」
創造の力とかはこいつ等に説明するのは面倒だから、適当に魔法って事にしといた方がいいだろう。
俺の言葉を聞いて、ガキ共は信じられないといった顔をする。
「なんだよその夢みたいな魔法」
「じゃあお前まだ出せるのか!?このファ…ファミチキって食い物!」
「ええ出せますよ。ほら」
(ファミチキ10個下さい…)
俺の腕の中にファミチキがバレルで現れた。
俺はそれをガキ共に手渡した。
「ハフッ…ハフッ!うおォン!俺は(略」
「ハフッ…ハ(略」
もういいよそれ。話がまるで進まないよ。
俺がそんな語録に辟易していると、突然、ガキ共の動きが同時にピタリと止まった。お互いに目配せをしてから、キッとした眼差しで俺を見据えた。
「…おいあんた、名前はあるのか?」
「名無しです。捨て子ですからね」
「そうか…いや名前なんてどうでもいい…なぁ赤ちゃんさん…いや赤さん!」
「俺たち赤さんに頼みがあるんだ!」
赤さんて…まさに外道!…なあの赤さんかよ。いいじゃないかそれ。
「はいなんでしょう」
「「俺たちを赤さんの舎弟にして下さい!!」
おほほ。キミたちは俺の思い通りに動いてくれますね全く。