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名無しの底辺は異世界で成り上がる  作者: ポラロイドフラッシュ
第0章 白髪さんと俺
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プロローグ4

最近、コーラよりカルピスウォーターの方が糖分が多いことを知り、衝撃を受けた作者です。

「まずは泣き止みたまえ。えとね、最初に確認しておきたいんだけど、白髪さんは俺が何歳くらいになるまで俺の事を監視してたのかな?」


「ン…監視って…」


白髪さんはぐしぐしと目を擦ってから、少し不服そうな顔をした。

しかしその顔がすぐにまた、申し訳なさそうな色を浮かべる。


「…あ、あのね?実は最近になってこっちも色々と立て込んでてさ。昔みたいに5年間常にずっと見守ってあげたりとかは全然出来てなかったんだ。ううん全然どころじゃないね、ここ数年間はもうお風呂とかおトイレとかの時しか見守ってあげれてなかったの…ごめんね」


「うんうん。さらっとかなり衝撃的な事を聞かされちゃったけど、今は不問としとこうか。…うん、やっぱりか」


まぁそんなところだとは感づいていたけどね。

白髪さんが不思議そうな顔を浮かべた。


「やっぱり?」


「うん。だってね、たとえば白髪さんがここ数年の俺の生活を少しでも知っていたなら、俺が自殺したって知ってもそこまで驚かない筈なんだ」


「そんな事ないと思うけど…そんなに酷い生活だったの?」


「酷いね。金無し職無し女無しを地でいってたよ。酷すぎて朝も寝れなかったよ」


「え、夜じゃなくて?」


「いや、俺バイト深夜からだったから」


「あっ…あぁ…コンビ二?」


「いや、パックの刺身の上に花乗っけるヤツ」


「あっ…あぁ…せ、生産的なお仕事だね!最後にキミが花を飾るんだね!かっこいいね!」


「いや、俺の花が最後じゃなくてもう一つ違う花が後ろの方で乗せられるんだ」


「あっ…あぁ」


「でもね、そんな仕事でも俺は結構気に入ってたんだ。楽だし時給も悪くなかったし」


「…!うんうん!そうだよね!やっぱり仕事は長続きしてなんぼだもんね!自分に合ってればずっと働けていけるもんね!」


「でもそこもこの前クビになっちゃってね」


「………」


「次のバイトも中々見つからなくて、見つかってもまたすぐにクビになってね。そんなに浪費癖とかもなかったけど所詮バイトをしてた俺に貯金なんてそんなになくて、20歳過ぎて悠長にバイトなんてしてる俺は家族からも当然見放されててな、遂に家賃も払えなくなってね、家すら失った。俺に残された物は2千と2百円の入ったバリバリ財布と中古で12万で買ったオンボロ車だけだった。冬だったよ。俺はエアコンが壊れた車の中での生活を余儀なくされた」


「と…友達の家にしばらく居候とか出来なかったの?」


「友達はいらない。友達がいたら人間強度が下がるから」


「あ、うん」


「タウンワークで仕事を探し、タウンワークに火を灯し暖を取り、タウンワークを枕にして眠りに耽る毎日」


「燃やすのは危ないと思うけど…」


「もう自殺しよっかなぁしちゃおっかなぁってある日思ってね」


「そ、それで自殺しちゃったの?それにしたって自殺なんて選択は…」


「いや、違うんだ。丁度その時俺のプリペイドの携帯電話に電話がかかってきたんだ。それは前にダメ元で面接を受けた住み込みでの正社員雇用の職場からだった」


「…!うんうん!採用だって?」


「面接特典のQUOカード渡し忘れたから取りにきて欲しいっていう電話だった。面接の方は今回は縁が無かったらしい」


「あ、うん」


…は!無心で話してたせいで地の文がまるで出ていないじゃないか。

これが小説だったら作者の手抜きだと疑われかねないぞ全く。

気付けば白髪さんもなんか俺を哀れむような目をしてるし。

俺は気を取り直して話しを続ける。


「それで久しぶりにオンボロ車を走らせてね。取りにいったんだ。その道中でね、車の前に猫が飛び出してきた」


「え?猫?」


白髪さんが首を傾げた。そう、にゃんにゃんだ。


「うん。まぁ瞬間的な出来事だったから何を考えてそうしたのかは分からないけどね。気付いたら俺はハンドル思いっきり切ってた。猫好きだったしね。底辺な自分の人生よりそこらへんの猫の命を守りたくなったのかもしれないね。ハンドルを切った先は崖だったから…うん、それで死んじゃったみたいだね。あ、今考えたらやっぱめっちゃ後悔してきた。ひき殺せばよかったわ。QUOカードでとんかつ食おうと思ってたのに」


1000円分とか言ってたからな…もったいなさすぎるだろ。

くそ、あの猫め。次あったらただじゃおかねぇ。


「そうだったんだ…でもおかしいな…そういう場合って自殺じゃなくて事故死になる筈なんだけど…キミの世界の担当者に届いた報告では確かに自殺ってなってたんだけど…」


白髪さんがまたうんうん唸り始めてしまった。

うーん、もしかしてあれか?


「あれじゃないか?俺が運転しながら作詞作曲俺による『QUOでとんかつ喰ったら自殺しよう』の歌とか歌ってたせいじゃないか?」


「うんうん!そのせいだね!納得だね!はっきりとした自殺の意思を抱いたまま死んだからだね。あまつさえ一方的な事故ならまだしもキミがハンドルを切ったんだもん。自殺扱いになっても頷けるようんうん」


「ふひひ、さーせん」


現世への執着がとんかつだけだったら尚の事だね…と、白髪さんがため息をついた。

しかしまだ合点がつかない事があるのか、またすぐに悩ましげな表情を浮かべてしまう。


「…でもそれにしてもやっぱりおかしいな、猫といっても一つの命だからね。紛いなりにもそれをその身を犠牲にして助けたんだ。ボクがキミをここにすぐ呼び出せる訳がない。ほんとに命を捨てて命を助けたんだったらボクの前に絶対あのクソ偽善者がでしゃばってキミを呼び出すはずなんだけど…あ」


そこまで言って、白髪さんはしまった、といった顔をした。

なるほど、何となく察しはついたさ。


「おー、結局猫も死んじゃったわけね」


まぁ車のライトに目、焼かれちゃっただろうしね。

後ろにもまだまだ車も走ってたしね。


「…多分ね。生前にそういう善行を積んだ人間を呼び出して褒め称えないではいられない奴が一人いてさ、そいつに呼び出されたとしたらボクなんて完全に後回りになるはずだからね。下手したら即効そのままそいつの管理してる世界に永住だから」


白髪さんよっぽどそいつの事嫌いなんだな。苦虫噛み潰してるよ。

まぁ俺みたいなの好きなんて言ってる時点で人を見る目が盲目どころか失明してるものね。

しかし住み辛そうな世界だなそこ。俺がそこに行ったら世界の人間全部を敵に回してしまうのではないだろうか。うーむ。


「ちなみにそいつって女の子?」


「いや男だよ」


「猫死んでよかったー」


ほら、俺ってこういう人間だから。


次で、ようやくプロローグが終わりそうだと安堵している、カルピスウォーター中毒の作者です。

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