プロローグ2
さっき、残り物のカレーを食べようとしたら焦げ付いた部分が底にごっそりだった作者です。
「ふーん?もう魂が順応し始めたのかな?いやはや流石だね。白髪さん参っちゃったよこりゃ」
「え?なんて?ってうわ!改めて見てもやっぱり凄い美少女!」
何がこんな美少女に対して、
『間違っても好感など抱けそうもなかった』キリッ
…だよ。
馬鹿だわ。意味分からんわ。早速口説くわ。
「…あの」
「ん?何かな何かな?」
白髪さんはきょろりと瞳を動かすと、そのまま興味津々という風にぐいっと体をテーブルに乗り出して、俺のすぐ目の前まで迫ってくる。
見てろ…俺の少女漫画から学んだキュンキュンワードを持ってすればどんな女の子だって堪らずキュンキュンからのジュン↓ジュワー↑状態よ。
「貴方は雪が溶けたら何になるか…知っていますか?」
「?…水だよね?」
目と鼻の先で白頭さんが首を傾げた。
やば、キュンとした…っていやいや俺がキュンとしてどうするんだ!いいか?
キュンはさせてもささせ…させ…キュンはさせてもさせるなってな。
「違いますよ。雪が溶けたら…」
「うんうん。雪が溶けたら?」
決めてやるぜ…
―――春になるんです。
「…という訳で俺と結婚を前提に付き合って下さい」
「うんいいよー」
「いいの!?」
まさかのOKだよ。
本当にうまくいくとは…これがフ●バの力か。
というかさっきと雰囲気違い過ぎじゃない?いや俺も人の事言えないけどさ。
「あーさっきのは全部演技だよ!何かキミが珍しくカッコつけてたからボクもやってみただけだよ〜。あと今してくれた話馬鹿みたいだったよ?雪とか春とかは正直全く意味が分からなかったから関係ないかも」
「な!?馬鹿な!!」
やはりこっちじゃなくて、『世界で一番馬鹿な旅人』の方が良かったか…
「どんなに言葉はいいモノだとしてもだよ?キミの場合使い所違い過ぎるよねそれ絶対」
「あ、はい」
「うんうんどうして今いきなり真顔になったのかなキミ。あのねーキミは気付いてなかっただろうけど私は前からキミの事狙ってたんだよ!だからいつだってキミからのラブコールならうぇるかむドンとこい状態だったわけなのさ!」
「え!そうなのですか!?」
「うんうん。そうなのです」
うわ笑顔が眩しい。
まじかよ。俺の人生って間違いなく底辺なんだって確信してたけど、こんな美少女にずっと好かれてたんだったらこりゃその認識を改める必要があるな。
しかし俺がなぁ…まさかこんなカモシカのような…ん?なんだ、カモシカって…え?カモシカ?なんだ?…何がカモシカのようなんだっけ…あれ…カモシカ関連で何か褒めるあれあったよなあれ…カモシカのようにすべらかな…違うな、カモシカのようにしなる…しなる…カモシナ…あーもういいやカモシカだけでいいや、いやーこんなカモシカみたいな美少女がなぁ。
そして、俺は思わずにやけてしまった。
そんな俺を満足気に眺めると、彼女は更に言葉を続ける。
「ふふふ…なんていったってボクはね、キミが生まれた瞬間からずーーーっとキミだけを見続けてきたんだよ!」
「…え」
何それ怖い。
白髪さんは勢いよく立ち上がる。
うわ…なんか変な身振り手振り混じえ始めた。
「うんうん。キミは子供の頃から凄まじい魅力をそこかしこに振り撒いていたね。その姿はもう現世に舞い降り立った天使といっても過言ではなかったね!うんうんあれは丁度君が3歳の誕生日を迎える前日の午後3時53分45秒の事だったかな?キミはお兄さん達が使ってた二階の廊下の奥から二番目左の部屋の右隅にあった2段ベッドの上にどうしても乗りたかったみたいでね?十三段もあるハシゴの一段目に左足からよいしょっ!よいしょっ!って上り始めちゃってね?あー小さいあの頃のキミからしたら…うんうん!一大決心だね!エベレスト登頂だね!それでね?始めはゆっくりながら順調に上っていけてたんだけどね?6段目まで来たところでさ、何気なく下を見ちゃってね?高かったんだね怖かったんだね!その場で泣き出しちゃったんだ!その姿が本当に愛らしくてね!!うんうん!あの時のボクってば上と下どっちの口からも涎が止まらなくってさもう困っちゃったんだよ!?もうキミはボクをどうしてくれるのさ!そしてボクはキミにどうしちゃっていいのさ!!」
「あ、はい」
「ボクはキミになら何をされたって…って、なんでまた真顔になってるのかな?あと何か遠くない?」
「あ、すいません」
「うんうん、別に謝らなくてもいいからね。だからこっち戻ってきて欲しいかな〜…とか」
「あ、すいません」
「…うんうん、え、えっとね?もしかしてももしかしてだけど」
「はい」
「…引いてるの?」
「うんうん」
「!!」
白髪さんがピシリッ…と、固まった。
いやだって…これはいくらなんでも引くだろ…。俺の行動を何フレーム単位で監視してたんだよ…なんだよ現世に舞い降り立った天子って…なんだよエベレスト登頂って…
あとカモシカって。
「うんうん!!カモシカはキミのだけどね!」
お、戻った。
「というかさっきから露骨に俺の心読むの止めてもらえませんかね」
「ふふふ、私って神様みたいなモノだし心を読むくらいご愛嬌だよ」
「あ、白髪さんてやっぱり神様だったんですね」
じゃあここは天界?神界?白髪さんがさっきここは私の部屋みたいな事言ってたからどっちにしろ神の領域って事は確かだよね。
しかし俺も遂に神域の男か…。
カッコよすぎるだろ…。
うむ、自殺もしてみるもんだな。
瞬間、白髪さんがあっ!、と今までで一番大きな声を出した。
あまりにいきなりだったから、体が思わずビクッとしてしまった。
「うんうん!!そうだよ!そういえばその話だったよ!キミと初めて直接会って会話できた事があまりにも嬉しくボクもすっかり忘れてたよ!!」
白髪さんはすーっと息を吸い込んでから、
「どうして自殺なんてしたのさ!!」
これまた今までで一番大きな声でそう叫んだ。
さっき、残り物のカレーを頑張って食べながら書いていたらそれにつられて茶番も長くなってしまい、きっとプロローグは次でお終いだと自分自身が希望的憶測を抱いている作者です。
※名前を変更しました。バタバタしてすいません…
白頭さん➡︎白髪さん