プロローグ1
最近、私の好きな自重しないチート物が少ないので遂に自分で書くことを決意した作者です。
俺はここにいた。気付いたらここにいたらしい。
ここは全てが白い。白かった。
「ようこそいらっしゃい。ボクはキミを待っていたんだ」
白い世界で、
白い湯気が立つ、
白いティーカップが置かれた、
白いテーブルの向こうで、
白いチェアに座った、
白い髪の女がただただ微笑んでいた。
その海の底が映り込んだ様などこまでも深い蒼色の瞳。
そのガラス製の仮面の様な微笑み。
その深い森の奥の湖の畔から届いているかの様な怖ろしく透き通った声。
なにより腰まで伸びたその気持ち悪いくらいに真っ白な髪が。
真っ白な服が、顔が、肌が、手が、腕が、足が、存在そのものが。
その女のそんな姿の全てに対して、何故だか俺はぼんやりとした苛立ちを覚えずにはいられなかった。
思わずその苛立ちを隠す事なく、そいつに向けて俺はやっつけに言葉を投げつけた。
「この部屋、壁や床やら天井とかやら家具とかついでにあんたの髪とか。ここまで白尽くめとくれば後々かなり汚れが目立ってくるでしょう。全く何の意味があるのですかねこれ。こんな場所に住み着いている人の気が知れないです。ほんと、そいつがどんな顔をしているのか見てやりたいですね」
俺のそんな悪態に、女は一瞬だけ目を丸くした。
次には困ったような顔をしながら、片手でその長い髪をクルクルと弄ぶ。
俺の方を向いたまま。ゆっくりと、顔を少しだけ傾けた。
「えぇ?うーん、こんな顔だけどどうかな?いかがかな?満足頂けたかな?あっは」
あははは、と。そんな風に目の前の〝白髪〟の女は笑った。
これまた不愉快な笑い方だった。この白髪め。
しかし、正直どうなのだろうか。この白髪の顔に満足したかどうかと聞かれれば、それについて俺はそれなりに満足したとするべきではあると思った。
この白髪の風貌はかなり奇抜ではあるが、その容姿はおよそ美少女という言葉の権化といっても過言ではないレベルだとは認めなければいけない。
普通ならここまでの美少女が目の前にいるのだから、俺はこいつに愛の囁きの一つでも送りたくなって然るべきではあるのだ。
…ただし、何故だろうか。
そのあまりにも不自然に整い過ぎた顔はそこはかとなく俺には不気味にも思え、正直この白髪に対して俺は間違っても好感など抱ける気はしなかったのだ。
「うぇー、美少女はともかく白髪は酷いなぁ」
と、また困った顔を浮かべる。
だが、またすぐにその作り物めいた真っ白な顔に、べったりとした笑みを浮かべ、
「でもでもまぁまぁ僕というモノに対しての呼称は恐らく何処の何時にも、なーんにも存在しないからね。うんうん、だから特に支障はないから白頭でも美少女でも君の好きに呼ぶといいよ」
と、白髪は言った。
「分かりました白髪さん」
と、俺は言った。
「よしよし。ふふふ、そっかー。白髪さんかぁ」
白髪はうんうんと何度も頷き、心底楽しそうにクツクツと、静かに笑いをかみ殺している。
そのままテーブルの上のティーカップを手に取ると少しだけ、それを口元で傾けた。そして俺にチラリと視線を寄越してから、
「ほらほら。お茶でも飲みながらゆっくり話でもしようよ」
と、もう一度笑った。
だから俺は促されるまま、白髪と同じ様にティーカップを手に取り…
「………?」
ってあれ、というか俺ってこんな喋り方だっけ。
ん?んん!?あ、お茶美味しいね。
…ってじゃなくてじゃなくて!
「…んあ!?ちょっとなんで俺はこんな雰囲気系ラノベの主人公みたいな地の文と口調を使ってんだよおい」
うわーないわーどうかしてたわー俺。
最近、自重しないチート物が少ないのはみんなに需要がないからなんじゃないかと書き始めてから不安になってきた作者です。
※名前を変更しました。バタバタしてすいません…
白頭さん➡︎白髪さん