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ブリタニア竜騎譚  作者: 丸い石
四章:双竜戦争(前編)
78/107

4-5

 『オペレーション・スーパーセル』。


 大規模気象災害の名を冠したこの戦闘機掃討(ファイタースウィープ)作戦は、機甲竜騎士団(ロイヤルエアナイツ)の四分の三に加え、王国派諸侯の保有する機甲竜騎士(ドラグーン)のほぼ全てを動員することで、同盟側の航空戦力を完膚なきまでに殲滅することを目的としていた。


 戦力の集中という原則を鑑みれば、この上なく有効な作戦である。

 実際、ドラク・ナーシアから書状を受け取った同盟派の貴族たちは揃いも揃って頭を抱えてしまった。

 決戦の要求を無視することはできない。迫る敵の大編隊を放置すれば、地上の街並みがことごとく焼き払われてしまう。かといって戦いの場へ上がれば、コロッセオに投げ込まれた剣奴の如く蹂躙、虐殺されるだけだ。


 諸侯同盟の空軍大将となったアウロは、早速この問題への対処を迫られた。

 とはいえ、尻尾を巻いて逃げることができない以上、後は正面から決戦を受け入れるか、それとも奇策を講じて事態の打開を図るか、二つに一つしかない。

 貴族たちの間でも協議は続いた。会議に参加した面々からは、敵の編隊をかわして逆に王都に奇襲をかける策や、突破力の高い少数精鋭で陸攻型機竜(ストライカー)のみを狙い撃ちするプランなども提示された。


 が、やはり問題となるのは単純な物量差だ。

 百機近い機甲竜騎士(ドラグーン)を運用する機甲竜騎士団(ロイヤルエアナイツ)

 彼らを排除しない限り、同盟に勝ち目はない。


 ――最終的に、アウロはナーシアの挑戦を受けることにした。


 相手の思惑通りにことが進むのは癪だが、いずれにしろ兵力で劣るアウロたちはどこかで賭けに出る必要があるのだ。

 王国側から日時と場所を指定してくれるのなら、同盟としても対応しやすい。ナーシアの性格を考慮すれば、あえて不意討ちをしてくる危険性も低いはずだった。


 アウロには分かっていた。

 ドラク・ナーシアはなによりも華々しさを好む人間だ。

 だからこそ、機甲竜騎士(ドラグーン)同士の決戦を求め、わざわざ挑戦状を送り付けてくるような真似をしてきたのだろう。日の当たる舞台で正々堂々と敵をねじ伏せることこそ、あの男の美学に則る最適の答えなのだ。






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 決戦の朝、ブリストルには同盟派諸侯の機甲竜騎士(ドラグーン)が一堂に会していた。

 晴れ渡った秋空の下、鈍色の装甲を輝かせる機竜が駐機場エプロンを埋め尽くしている。男ならば誰しも心をときめかせるような壮大な光景だ。


 飛行場には機竜とアーマー、その操縦者が一セットに纏められていたが、お行儀よく整列しているのは意志を持たない機甲兵器だけで、人間の方は群れを作ってだべっていたり、意味もなくあちらこちらをうろつき回ったりしていた。

 中にはじっと目を閉じて瞑想に耽っている者や、戦いに備えてストレッチをしている者もいる。無論、恐怖に体を震わせている者も少なくない。戦を前にした緊張感が、ぴんと辺り一面に張り詰めているかのようだ。


 ――今回、同盟が用意した機竜は五十二機。


 動員可能な兵力を一滴残らず絞り出した、文字通りの総力戦だ。


 だが、機甲竜騎士団(ロイヤルエアナイツ)を相手取るにはまだまだ戦力不足だった。

 王国側が投入するであろう機竜の数は百機を越える。少なく見積もっても、彼我の戦力差は一対二。

 つまり、一機の機甲竜騎士(ドラグーン)につき、二機の機竜を相手取らなくてはならないのだ。ボードゲームなら明らかな負け戦である。


(まぁ、なにも馬鹿正直に真っ向からぶち当たるつもりはないが……)


 アウロは濃い青から水色に変わりつつある空模様を仰いだ。


 いつでも出撃できるよう、既にその格好は黒いインナースーツに変わっている。

 隣に控えるのは四本腕の巨人《ヘルゲスト》。正面に鎮座しているのは錆色の装甲を持つ《ミネルヴァ》だ。

 機甲外骨格(アームドフレーム)を身に纏ったカムリは、降り注ぐ陽光に【うーん】と気持ち良さそうな声を漏らした。


【それにしても今日はいい天気だね。この時期は曇ってる日の方が多いはずなのに】

【連中は今回の作戦を『スーパーセル』と呼んでいるらしい。もし本当に暴風雨が来たらどうするつもりだったんだろうな】


 基本的に機竜は悪天候の中を飛ぶことができない。

 にも関わらず、ナーシアから送られてきた書状に雨天中止の文言は見当たらなかった。

 ただ、この天気なら機竜を飛ばすのになんら問題がないはずだ。少々風が強いものの正午を前にした空はからりと晴れ上がり、朝方は空を覆っていた雲も西へ退散しつつある。絶好のフライト日和だ。


「アウロ、なにか考え事かい?」


 背後からかけられた声にアウロは振り返った。


 歩み寄ってきたのはアウロと同じく、アーマー用のスーツを着たルシウスだ。

 その隣にはアルカーシャの姿もある。彼女は前のめり気味に背を丸め、スーツの胸元をぎゅっと右手で押さえていた。


「ルシウス……と、アルカ? どうしたんだ?」

「い、いや、どうしたっていうか」


 アルカーシャは澄んだ紅色の瞳を、落ち着きなく地上にさまよわせた。


 そのスレンダーな肢体は、皮膚にぴっちりと張り付く伸縮素材に覆われていた。ごく一般的な機甲竜騎士(ドラグーン)用のボディスーツだ。

 が、その色は目が覚めるような真紅だった。生地自体も薄く、ウェストからヒップにかけてのラインが妙に強調されているように見える。

 胸が手で隠されているのが惜しいところだ。もっとも、彼女の小さな手の平は胸元の膨らみと比べて明らかな面積不足である。製作者は実にいい仕事をしてくれたな、とアウロは思った。


「このスーツ、前のと比べてなんだかスースーするんだよ。元々、下着みたいな服だけどさ。ここまで薄いと裸みたいで落ち着かないっていうか……」


 アルカーシャは顔を真っ赤にしたまま、ぼそぼそした声を漏らした。


「そもそも、なんで新しい服が必要なんだ。前のと同じでいいじゃないか」

「あれは元々、男性用のスーツを改良したものだからな。アルカ専用のアーマーを作るついでに女性用のを新調したらしい」

「だ、だからってこのデザインは……。そりゃ、シドカムの奴は耐G性能が上がってるだの、より体にフィットさせた方がストレスが溜まらないだの、もっともらしい理屈を並べてたけどさ」

「分かっているなら文句を言うなよ。第一、スーツの仕様が変わったのだってお前の胸が成長したからで――」


 言いかけたアウロは、強制的に台詞を途切れさせられた。

 鳩尾に強烈なボディブローを見舞われたためだ。がくりと膝をついたアウロは、痴話げんかに敗れた夫よろしくアルカーシャを見上げた。悠然とそびえ立つ双峰の向こうには、眉をつり上げた少女の顔があった。


「なにをする」

「セクハラだよ!」


 涙目で叫ぶアルカーシャ。男勝りな性格の彼女も、このデリカシーに欠ける発言には我慢ならなかったらしい。

 ルシウスは二人の間に入ると、荒れ狂う従姉妹を「まぁまぁ」となだめた。


「落ち着きなよ、アルカ。アーマーに乗っちゃえば外からどんな格好をしてるかなんて分からないんだから」

「ううっ。そ、そりゃあそうだけどさ」

「そもそも、今の格好が気に入らんのなら前の服を着てくれば良かっただろうが」

「……そういう訳にも行かないだろ。わざわざ専用の機竜とアーマーを用意してもらったのに、スーツの見た目に文句を付けるなんて厚かましすぎる。実際、この服が機能的なのは事実みたいだしな」


 アルカーシャはやり切れない様子でため息をこぼした。


【この子、なんだかめんどくさい性格してるね】

【年頃の娘だからな。色々と思うところがあるんだろう】


 アウロは適当に答えつつ、視線を横にスライドさせた。


 《ミネルヴァ》の隣に轡を並べているのは、紅色の装甲を纏った真新しい機甲竜(アームドドラゴン)だった。

 竜の頭部を象ったヘッドに、丘のような膨らみを持った紡錘型のウィング。流線型を描くボディの後部には双発の動力機構を有し、ボウル型のエンジンノズルの間からは細長いテールが飛び出している。

 機体サイズは一般的な機竜より一回り大きいものの、そのフォルム自体は量産機である《ワイバーン》の流れを汲んでいた。アウロにとっては養成所時代の相棒だった、《ホーネット》を彷彿とさせるデザインだ。


「そういえば、この機体。例によってシドカムが作ったんだっけ」


 ルシウスは興味深そうに紅の機竜を観察した。


「シドカムもアウロに雇われてから、タガが外れたみたいに新しい兵器ばかり作ってるね。流石にこの機竜は《ミネルヴァ》ほど突飛な形はしてないけど……」

「こいつは養成所時代に開発した《ホーネット》の発展型らしい。ケルノウン半島で鹵獲した王国の新型機を素材に、動力をチェーンアップして足回りの強化を図った上、対骸装機(カーケス)用の兵装を追加したんだそうだ」

「よく分からないけどすごいな。名前はなんていうんだい?」

「《レギナ・ヴェスパ》。女王蜂の意味だ」

「なんだか仰々しい呼び名だよね。女王なんて柄じゃないのに」


 アルカーシャはそっけない口調で言った。

 とはいえ、それが単なる照れ隠しに過ぎないことは、そわそわ後ろ髪をいじくっている仕草から見ても明らかだ。

 彼女にとっては美しい宝石や装飾品よりむしろ、自分専用にチューニングされた機竜の方が価値のある宝物らしい。


【ねぇ、主殿。この機体って……】

【アルカーシャ自身の要望でオーダーメイドされた代物だ。《ミネルヴァ》の予備パーツを流用してある】

【やっぱり。ってことは、魔導兵装を積んでるの?】

【いや、ガンランスは量産機のものと同じだよ。その代わり、竜鱗装甲(スケイルアーマー)をぶち抜くための切り札を持っている】


 アルカーシャはかつて、ヴェスター・ガーランドの駆る《ハイフライヤー》と交戦した経験があった。

 だが、最終的には武装の火力不足によって敗北を喫し、目の前で母親を射殺されるという痛ましい結末を迎えている。

 だからこそ、彼女は強敵と渡り合うための武器を求めたのだろう。最初はアウロに相談を持ちかけ、次いでシドカムを筆頭とする技師たちとミーティングを繰り返し、入念な調整と一ヶ月に渡る試験飛行を日夜こなし続けた。


 そうして、完成したのがこの機体だ。

 対骸装機(カーケス)戦闘特化型機竜――《レギナ・ヴェスパ》。

 真紅に塗られた復讐の刃。二度と悲劇を繰り返さないという少女の決意の証である。


「おー、こいつが噂の新型機か。赤いね。情熱の赤って感じだな」


 そこで見物人さながらの台詞と共に一組の影が現れる。

 がたいのいい青年の傍らには、ふわふわした茶色い髪を持つ少女の姿もあった。彼女の全身を覆っているのは、アルカーシャのそれとはデザインの違うクリーム色のスーツだ。

 ブランドル家の侯子ジェラードと、ランドルフ家の令嬢クリスティア。二人の姿を認めたルシウスは、「あれ?」と意外そうな声を漏らした。


「二人とも一緒にいたのか。どこへ行ってたんだい?」

「ん? まぁ、なんだ。出撃の前に思い出の場所を見てきただけさ」

「そういう言い方やめてよ。死神に目をつけられそうな気がするわ」


 クリスティアは冗談混じりに言った。

 顔は笑顔だ。が、頬をよぎる暗い影は隠し切れていない。よく見れば、その指先も小刻みに震えていた。


「え、その格好……。まさか、クリスもこの戦いに参加するつもりなのか?」


 一方、驚きの表情を浮かべたのはアルカーシャだった。

 アウロはクリスティアの参戦について彼女に知らせていなかった。猛烈な反対に合うことが予想されたためだ。

 が、それは結局のところ問題を先送りしているだけに過ぎない。案の定、アルカーシャは興奮気味に親友へと詰め寄った。


「おい、クリス。これはどういうことだ? 昨日は家で留守番してるって言ってたじゃないか。――私を騙したのか?」

「単に気が変わっただけよ」


 一方のクリスティアは開き直った様子だ。


「だって、仕方ないでしょ? アルカたちが戦ってる間、一人だけ地面にへばりついてるのなんて我慢できそうにないもの。ああ、心配してくれなくても大丈夫。私はこう、スナイパーみたいに後ろの方からびしばしビームを撃ってるだけだから。槍を振り回して突撃をかける勇気なんてないわ」

「で、でも、万が一ってこともあるだろ! クリスは戦いの素人なんだぞ!」

「それがどうかして? アルカだって似たようなものじゃない」


 鋭いナイフのような口撃に、アルカーシャはぐっと押し黙った。

 確かに、アルカーシャはクリスティアと同様ほとんど実戦経験がない。

 どう取り繕おうと所詮は十七の小娘。魔獣相手に鍛えた腕もたかが知れている。


(とはいえ――)


 アウロの目から見ると、二人の立場は明確に異なっていた。


 同盟軍の盟主補佐として陣頭に立とうとしているアルカーシャと違い、クリスティアはあくまでブランドル家の客人だ。本来なら、屋敷で優雅にティータイムを過ごしていてもおかしくはないはず。

 そんな彼女が戦場に立とうとする理由はひとえに友の、アルカーシャのためだ。

 大切な人のために戦う。それは誰しもが抱く普遍的かつ絶対的な論理だった。


「……でも、私はクリスを危険な目に合わせたくないんだよ」

「それは私だって同じよ、アルカーシャ」


 クリスティアは微笑むと、広げた両腕で俯く少女を抱きしめた。


 感動的な光景だった。それでも、アルカーシャの目尻から涙が零れ落ちることはなかった。

 彼女は既に誓っているのだ。涙を流すのは復讐を遂げた後でいいと。

 だからきつく唇を噛み締め、体の内側から溢れ出る衝動を堪えている。


「クリス、気持ちは嬉しいよ。でも……」

「『でも』はなしよ、アルカ。私にだって女の意地があるの。空に上るのは怖くて怖くてたまらないけど、役立たずの穀潰し扱いされる方が嫌だわ。どうせ戦いが始まったら涙目でおしっこ漏らすはめになるんだから、今の内くらいカッコつけさせてよね」


 クリスティアはふざけた台詞を並べると、最後にアルカーシャの背中をぽんと叩き、抱擁を解いた。

 アルカーシャは不満とも困惑とも違う、ひどく心苦しそうな顔をしていた。しかしやがて、その細い喉から降参のため息がこぼれ落ちた。


「分かった。でも、クリス。無茶はしないでくれよ」

「あなたもね」


 ぐっと拳骨をつき出すクリスティア。アルカーシャもそれにこつんと拳を打ち合わせることで答える。

 ほどけかかっていた友情の糸が固く結び直されたところで、アウロは空を仰いだ。じりじり空をよじ登ってきた太陽が、ようやく天頂のあたりに差し掛かろうとしていた。


「そろそろ時間だな。ジェラード、ブランドル家の側に欠員は?」

「出てないよ。あいにく、こっちは死にたがりの馬鹿ばかりだ。ガーランド家の方はどうなんだ? まだ赤槍殿の姿は見えないみたいだが――」

「我輩ならばここにいる」


 噂をし始めて早々、ジェラードの背後からぬっと黒い影が差した。


 突然現れた赤ら顔の大男に、クリスティアは息を呑み、ジェラードは頬を引きつらせた。

 不審者ではない。ガーランド家の騎士ジュトー・アプ・マシス。赤槍(バイセルゴッホ)の異名を持つエースパイロットだ。

 男の肩幅は実にアウロの倍近くあり、全身の筋肉量も常人離れしていた。そのせいで、伸縮性の高いスーツが内側から風船のように引き延ばされている。豊満な肢体を持つアルカーシャとは、別の意味で破壊力のある外見だ。


「遅かったな、ジュトー殿。どこへ行ってたんだ?」

「クソです。我輩は初の空戦で脱糞してからというものの、必ず出撃直前にクソを済ませるようにしているのです」


 重々しい声で告げるジュトー。一同の間になんとも言いがたい空気が漂う。

 アーマーの内部は密閉されている。一応、スーツの側に排尿機能はあるが排便機能はない。

 もし内部で漏らせば……後は自らの吐き出した汚物とランデブーするしかないのだ。


「わ、私も今のうちにトイレ行っとこうかしら」

「もうそんな時間はねぇよ。諦めろ」


 ジェラードの無慈悲な宣告に、クリスティアはがくりと項垂れる。

 ジュトーは落ち窪んだ目をルシウスに向け、


「ルシウス殿下、参陣が遅れて申し訳ありません。ガーランド家一同、一兵たりとも欠くことなく揃っております」

「分かった。どうやら、貴族の義務を怠った愚か者はいないらしいね」


 流石に緊張した様子で身を引き締めるルシウス。

 そこに、ジェラードが先ほどと変わらぬ軽薄な声をかけた。


「さて、それじゃあ殿下。ここで一発、気合の入るような演説を頼むぜ」

「え? 僕がかい?」

「同盟の盟主はお前だ。組織のトップが出撃する以上、激励の一つや二つはあってもいいだろう」


 とアウロも賛同すると、ルシウスは覚悟を決めたように「分かった」と頷いた。


 それからルシウスは愛機である《グリンガレット》の鞍上に飛び乗ると、アーマーの内部から引っ張りだしたスピーカーを口元に寄せた。

 これを見て、周囲の騎士たちも何事かと目を見張る。すぐさま気をつけの姿勢を取る者、慌ててあくびを噛み殺す者、不可解そうに首を傾げる者、反応は様々だ。

 遠慮のなく浴びせられる好奇の視線。それでも、ルシウスはぴしりと背筋を伸ばし、飛行場に集った騎士たちを見渡して告げた。


「――おはよう、諸君」


 妙に気取ったような口調だ。

 ルシウスは眉を寄せると、一度咳払いしてから言い直した。


「おはよう、みんな。昨日はよく眠れただろうか。……僕は眠れなかった。なにしろ、これから始まるのは王国の未来を占う決戦だ。おかげで夜の間中、色々とつまらないことを考えてしまったよ。本当にこの戦いに勝てるのか、自分に同盟軍を纏めきれるのか、盟主の座にもっとふさわしい人間がいるんじゃないか、とか色々なことをね」


 一息つき、


「それでもどうにか自力でここに立っているのは、支えになってくれた人々がいたからだ。僕には友がいるし、信頼できる仲間たちもいる。そしてなにより、この場に集ったみんながいる。言うまでもなく敵は強大だ。それでも今ここにいる全員が力を合わせれば、きっとこの苦境を乗り越えることもできるだろう。僕らは同胞だ。僕らは反逆者だ。僕らは――アルトリウスの意志を継ぐ竜の騎士だ。その誇りに恥じぬ戦いをしよう」


 ルシウスは力強い声で結びの言葉を終えた。

 すぐさま、飛行場に集った人々の間から拍手が巻き起こる。


【うーん、あんまり演説らしくない演説だね。五十点】

【ルシウスは演説するつもりなんてなかったんだろう。ストレートに自らの意志を伝えただけさ】


 アウロは自らも手を叩きながら、脳内の声に言い返した。


 ルシウスはお世辞にも口が上手い方ではない。

 しかし、根っからの善人が語る言葉にはある種の説得力がある。

 少なくとも、騎士たちは一様になにか眩しいものを見るかの如く若き盟主を仰いでいた。自らの思いをさらけ出すような直截な物言いだからこそ、人々の心を高揚させることができたのだろう。


「いい演説だった。さて、じゃあ俺もここで一つ挨拶をしておこうか」


 次いで、《グリンガレット》の背にジェラードが飛び乗る。

 驚くルシウスの肩に腕を回した青年は、円盤状のスピーカーを手にしたまま飛行場を一望した。


「あー、俺は同盟軍空軍副将ジェラード・ブランドルだ。今回の作戦では第二中隊の中隊長を務めさせてもらう。……正直、これからの戦いについては不安に思っている連中も多いだろう。俺だってそうさ。が、今ここに寝不足の者はいても、同胞を裏切って逃げ出した者はいない。だから、胸を張ってくれ。お前たち――いや、俺たちは不退転の決意を抱いた勇者だ。そんな俺たちがたった二倍程度の敵に負けるなんてありえるか?」


 ジェラードは言った。「ねぇさ」


「どうせ王国軍のタマ無しどもは勝ち戦だと思って油断してる。こんな戦いで死にたくないと思ってる。だったら、その砂糖菓子みたいに甘い考えを粉砕してやろうじゃないか。奴らがハリボテの軍勢で挑みかかってくるなら、こっちはその横っ腹を突き破ってやるだけだ。――いいか。全員、死ぬ時は三機以上の敵を落としてから死ね。そうすれば最後には俺たちの勝ちだ」


 男の口調は既に戦場の狂気をはらんでいる。


 演説が終わっても拍手はなかった。帰ってきたのは野獣のような雄叫びだ。

 骨の髄まで響く大声疾呼に、アウロはぶるりと体を震わせた。


【うひひ、いいね。こいつはわらわの知ってる戦争だ。やっぱり、戦場の雰囲気ってのは煮込みすぎたポリッジみたいにドロドロしてないと】


 カムリが気持ちの悪い笑みをこぼす中、ジェラードは鞍上から手を差し伸べる。


「ほら、アウロ。お前もこっちに来てなんか言え」

「俺もか?」

「一応、空軍大将ってことになってるんだから演説くらいしてもいいだろう。あ、いや待てよ。先にアルカーシャ姫からなにか言ってもらったほうがいいかな」

「そうだな。アルカ、手を」

「う、うん」


 アウロはジェラードの手を借りて鞍上に飛び乗ると、今度はアルカーシャの腕を引いて彼女をシートの上へといざなった。

 アーマーが騎乗するための操縦席はかなりのスペースを有している。とはいえ、流石に四人も乗ると少しばかり手狭だ。うっかり足を滑らせそうになったアルカーシャは、危ういところでアウロの腕を掴んだ。


「はうっ……」

「おい、大丈夫かいお姫様。緊張してるのか?」


 途端、茶化すような台詞を口にするジェラード。

 アルカーシャは「別に」とぶっきらぼうな返事をすると、男の手からスピーカーをひったくった。


「おはよう、みんな。私はガルバリオンの娘アルカーシャだ」


 まずは軽い自己紹介。

 が、それだけで、わぁぁぁっ! と興奮と熱狂がごちゃまぜになったような歓声が上がる。

 半分は彼女自身の人気。もう半分は裸同然の格好のせいだろう。前二人の時とは明らかに反応が違う。

 アルカーシャはわずかにたじろいだ。それでも彼女は逃げることなく、胸を張って歓呼の声に答えた。


「もう知らない者はいないと思うけど、今回は私も戦闘に参加させてもらう。実戦経験もろくにない小娘が、一体なにを考えているのかと思うかもしれない。だが、私がここにいるのは私自身の意志だ。父、ガルバリオンは卑怯な騙し討ちにあって殺された。母、リアノンは弱い私を庇って死んだ。だからこそ、私は私自身の手で両親の無念を晴らしたい。私が戦うのは復讐のためだ。私が戦うのは憎悪のためだ。――私は私自身の感情を否定しない」


 少女の声は徐々に水底みなぞこへ沈むかの如くオクターブを下げていく。


「今、ここにいる人々の中にもモーディアの裏切りと、マルゴンの策謀のせいで故郷を奪われた者が少なくないだろう。モグホースに恨みを抱く者、ガーグラーに友を殺された者もいると思う。それでも、私はこの感情を、この憎しみを、決して否定はしない。怒りを刃に変えろ。絶望で奴らの首を刎ねてしまえ。私たちの味わった嘆きと苦痛を、連中にそっくりそのままお返ししてやるんだ」


 アルカーシャは異様な輝きを宿す紅の瞳で一同を見渡した。


 人々は熱に浮かされたような表情で、しばらくの間ぼうっとしていた。

 が、やがては疎らな拍手が巻き起こり、数秒の内に大喝采へと変わる。

 特にアルカーシャと関係の深いガーランド家の騎士の中には、感極まって涙を流している者すら出る始末だ。強面のジュトーでさえ、顔をくしゃくしゃにしたまま目尻に浮かぶものを手の甲で拭っていた。


「姫様、なんとご立派な……」

「おい、泣くなよばか。戦いはこれからだぞ」


 アルカーシャは笑みを浮かべると、最後に銀の円盤をアウロへと手渡した。


 アウロは寒風に晒され、硬直しかけた手足を解きほぐすべく一度だけ深呼吸した。

 その間に、周囲の人々の視線がアウロ一人へと集中する。

 まるで無理やり舞台に引き上げられた大根役者の気分だ。アウロは奇妙な緊張感に包まれたまま口を開いた。


「最後になったが挨拶をしておこう。俺は同盟軍空戦大将アウロ・ギネヴィウス、諸君らの指揮官だ。とはいえ、ここで司祭の如く長々と説教をするつもりはない。既に諸君らは自らの意志を、目的を、覚悟を、全て理解し、統一しているはずだ。もはや余計な言葉は必要ないだろう。――槍を手に取れ、赤き竜の国(ログレス)の騎士たち。モグホースの走狗を蹴散らし、腐り切ったこの国を我々の手で変えるんだ」


 アウロは号令を下した。


「総員出撃! これより我らは決戦に突入する!」

『おおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!』


 直後、荒々しい鬨の声が蒼天に響き渡る。


 戦いの時は来た。騎士たちは次々アーマーに乗り込み、機竜を駆って戦場へと飛び立っていく。

 吹きつける風にマントが翻り、貴族の誇りを宿した紋章が、陽光を浴びて綺羅星のように輝いた。

 五十二機もの機竜で構成される大編隊。その先陣を切るのは装甲を錆色に濁らせた戦女神――《ミネルヴァ》だ。

 アウロはきつく奥歯を噛み締めたまま、空の果てを、その向こうで待ち受けているであろう敵の軍勢を見据えた。


 決戦の地はこれより10マイル先。

 王国南部とカーディフ港を繋ぐ大海原――ブリストル海峡だ。






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 今回の決戦にあたり、アウロは同盟軍五十二機を四つの部隊に分けていた。


 まずドラク・ルシウス率いる第一中隊、十六機。

 これは部隊全体の核となる集団だ。盟主であるルシウスを含むこの部隊が壊滅した場合、同盟軍の敗北は決定的となる。

 彼らに与えられた役割は敵の先鋒集団を受け止めること。が、他の部隊より数が多い分、隊員の質はさほど高くない。クリスティア・ランドルフの《ブリリアント》もこの本隊に含まれる。


 次にジェラード・ブランドル率いる第二中隊、十二機。

 これは第一中隊の直掩に回る集団である。鋼竜の骸装機(カーケス)《ブリガディア》と、ブランドル家の誇るエースパイロットたちにより構成される。

 彼らの役割は盟主を護る盾だ。それはつまり、真っ先に敵の砲火に晒される致死率の高いポジションということでもある。ジェラードは「貧乏くじを引いちまったな」と気にした様子もなく笑っていた。


 そして、アウロ・ギネヴィウス率いる第三中隊、十二機。

 敵本隊を叩く主攻。《ミネルヴァ》に先導される切り込み部隊だ。全ての機竜乗り(ドラグナー)の内、最も優れた腕前を持つ者が選抜されている。

 この突撃部隊こそが勝利の鍵だ。目的は敵の中枢機能を停止させること――すなわち、機甲竜騎士団(ロイヤルエアナイツ)団長ドラク・ナーシアの抹殺である。これは今回の戦闘における、部隊全体の作戦目標でもあった。


 最後にジュトー・アプ・マシス率いる第四中隊、十二機。

 第三中隊の援護に回る集団であり、状況に応じて遊撃の役割もこなす便利屋だ。

 隊の中核となるのは故郷を焼け出されたガーランド派の諸侯である。彼ら【槍の騎士】たちは結束力が強く、空戦の妙技に精通し、なにより主の弔い合戦とあって極めて士気が高かった。


 また、事前の策としてアウロは第三、第四中隊の各機にある仕掛けを施していた。

 といっても武装そのものに手を加えた訳ではない。ただ、装甲の色を濃い青色に塗り替えただけだ。

 今回の決戦では海上が舞台となるはずだった。その場合、海面に溶け込むマリンブルーが迷彩の役割を果たすという寸法である。効果が見込めるかはぶっつけ本番で試してみるしかない。


 なお、航空隊形の配置はルシウスの第一中隊が先頭。

 その左後方にジェラードの第二中隊が控え、右後方にアウロの第三中隊が、更に第三中隊の後ろにジュトーの第四中隊が続いている。


 アウロは鞍上で首を巡らせ、機体の整備不良を起こした者がいないことを確認した。自身の右後ろにぴったり張り付いた紅色の機竜も、問題なく水平飛行の姿勢を維持している。


「アルカ、編隊飛行に問題はないか? フォーメーションを維持できそうになければ、早めに言ってくれ」

『心配してくれなくても大丈夫だよ。この日のためにちゃんと練習したじゃないか』


 強がるアルカーシャだが、その声は緊張のためかわずかに震えていた。

 アウロの僚機は彼女の――アルカーシャの《レギナ・ヴェスパ》だった。

 アウロ自身、既にイクティス上空で何度かアルカーシャと連携戦術の特訓をしており、その実力はおおむね把握している。アルカーシャはどちらかというとアウロのように単独で力を発揮するタイプだが、簡単な編隊飛行なら問題なくこなせるはずだった。


【主殿、アルカのことを気にかけすぎじゃない? あの子、操縦の腕はそこそこいい方だよ。あんまり不安視ばっかしてると、その内『馬鹿にすんな!』って怒っちゃうと思うな】

【……まぁ、それは分かってるつもりなんだが】


 やはり、昔から兄妹のような関係だったこともあって気を使ってしまう。


「アルカ、計器の類から注意を逸らすなよ。何度もテストフライトをしたとはいえ、これが《レギナ・ヴェスパ》にとっては始めての実戦だ。ジャイロは問題ないか? エンジンの調子や燃料漏れは?」

『うん、どれも大丈夫。……その、アウロ。心配してくれる気持ちは嬉しいけど、私だって子供じゃないんだ。赤ちゃんみたく支えて貰わなくても、自分の面倒くらい自分で見れる』

「分かった。これ以上はなにも言わん」


 案の定アルカーシャ側から釘を刺されるに至って、アウロは余計な口をつぐんだ。


 正面を見る。眼下では港湾の食い込んだ海岸沿いの風景が途切れ、どこまでも続く大海原が広がりつつあった。

 敵の編隊は現れていない。指定されたポイントまでは、あと五分ほど時間がかかるはずだ。

 しばし虚空に目を凝らしていたアウロだが、途中、ふとなにかいやな予感がしてヘルムの側面に手を当てた。


「クリス。クリスティア・ランドルフ、聞こえるか?」

『えっ? あ、はいっ!』


 通信機越しに響くのはどもりかけの声だ。

 アウロは側頭部のスイッチを押したまま淡々と言葉を続けた。


「そろそろ、ブリストルのレーダー監視網から出る。《ブリリアント》の光学索敵装置クリスタルゲイザーを起動しておいてくれ」

『わ、分かりました』

「それと全軍に観測情報を共有(データリンク)して欲しい。できるか?」

「はい、もちろ――いえ、了解ラジャー!」


 力強い返答と共に、クリスティアはなにか計器を操作したようだった。

 途端、ディスプレイの端に円形のスコープが表示される。自軍をあらわす光点の集団。そして、観測距離ギリギリの位置に夜光虫のような光の塊が浮かんでいる。

 あれが敵の本隊だろう。アウロは次の瞬間、その中からたった一機だけ白い光点が飛び出してくるのを見た。


(単騎突撃……?)


 しかし、敵の速度は異常に速い。他の機竜の三倍近いスピードでこちらに接近しつつある。

 骸装機(カーケス)――その中でも間違いなく機動力に特化したタイプの機体だ。計器越しにも感じられる暴力的なプレッシャーに、アウロはたちまち背筋が粟立つのを感じた。


【ナーシアめ、先手を打ってルシウスを潰すつもりか】

【ち、違うよ主殿! あいつ、こっちに来る!】


 カムリの焦りが思考回路を伝う。

 アウロは慌てて頭上を仰いだ。遠く、太陽を背に槍を構えた機影が、一直線にこちらへと急降下を仕掛けてくる。


「敵襲! 敵は一機……だが、骸装機(カーケス)だ!」


 アウロは叫びながら、ハーネスをさばいた。


 たちまち、急旋回を開始する《ミネルヴァ》。

 アウロはのしかかってくる重圧の中、天上から降ってきた機竜が狙いを外し、自らの真横を通過するのを見た。

 敵機は独特のシルエットを有していた。四枚のテーパー翼と鏃のように尖ったヘッド。緑色に塗られた装甲が、青潮の如く海原にとけ込んでいる。

 なにより特徴的なのは、その右ガントレットに携えている魔導兵装だ。コルク抜きのような形状の穂先を持つランス。風を巻き込み、敵機を削殺する魔導兵装―― “スピレッタ” 爆砕螺旋槍である。


「《エクリプス》か!」


 アウロは瞠目した。


 風竜の骸装機《エクリプス》。

 『斧の反乱』の際、カラム・ブラッドレイが騎乗していた機体だ。

 その特徴は超機動特化。ログレス王国最速の機竜としても知られていたが、カムロート上空の戦いでアウロとナーシアの連携に敗れ、最後には搭乗者もろとも地へ沈んだはずだった。


「既に修復されていたとはな! だが一体、誰がパイロットに……!」

『待っていたぞ、アウロ!』


 通信機越しに耳朶を打つのは気合いをみなぎらせた声だ。

 アウロはその声に聞き覚えがあった。一瞬、純粋な驚きが心を覆う。


「ロゼ? ロゼ・ブラッドレイか!?」

『そうとも! 驚くことはないじゃないか。俺が王国側に回ったってことは君も知っていたはずだ!』


 歓喜の色を宿した雄叫び。ロゼは《エクリプス》を疾走(はし)らせた。

 一時、海面寸前まで急降下した敵機は、蛇のようにテールをくねらせながら再び上昇してくる。

 アウロは理解した。あの男の狙いはルシウスではない。自分だ。ロゼは誰よりも先に、この《ミネルヴァ》を抑えようとしているのだ。


「ロゼ、お前――!」

『養成所時代を思い出すな。演習で君と格闘戦ドッグファイトを繰り広げたのだって一度や二度じゃない……。だが、これは訓練じゃないぜ。正真正銘の殺し合いだ! 命を賭けろよ、アウロ・ギネヴィウス!』


 ロゼ・ブラッドレイは螺旋槍を構え、号令を下した。


『第二機甲竜騎士(ドラグーン)大隊隊長、ロゼ・ブラッドレイより全機に告げる! 「オペレーション・スーパーセル」始動! 赤き竜の旗を掲げる騎士たちよ! 王に歯向かう虫けらどもを一匹残らず駆逐しろ!』

了解ラジャー!!!』


 ヘルム内に溢れ返る、複数人の声。

 次いで、レーダーに表示された光群が前後に分かれ、その内の一方が猛然と突撃を仕掛けてくる。

 アウロは舌打ちした。機動力の高い部隊で敵の戦列をかき乱し、直後に本隊を動かす。地上の戦でもしばしば見られる戦術だが、ロゼはそれを空で、しかも撹乱役を《エクリプス》一機でやってのけたのだ。


「ヘマタイト1より全部隊に通達。総員、戦闘態勢(アームド)! 対航空戦(カウンターエア)用意! 第一、第二中隊は敵の進撃を食い止めろ! 第三、第四中隊は敵の先鋒を突破し、本隊に攻撃を仕掛ける!」

了解ラジャー!!!』


 一歩遅れで、同盟軍の機甲竜騎士(ドラグーン)たちも槍の穂を揃える。

 急速に高まる緊迫感。既に肉眼でも、水平線の向こうに沸き出た敵の大編隊が見えつつあった。

 まるで雲霞の中をうごめくイナゴの大軍だ。恐らく、相手にもこちらの編隊が同じように見えていることだろう。


 アウロはガンランスの照準を眼下の《エクリプス》に合わせた。

 対するロゼも螺旋槍の切っ先を《ミネルヴァ》へと向ける。

 大気を巻き込み唸りを上げる尖端が、陽光を浴びてぎらりと輝いた。


『さぁ、行くぞ! 決戦の開幕だ!』

「迎え撃つ! ――交戦開始(エンゲージ)!」


 そして、戦いの火蓋は切られた。

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