表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブリタニア竜騎譚  作者: 丸い石
二章:斧の反乱
33/107

2-15

 交戦開始と同時に、すぐさま加速をかけたナーシアの《ラムレイ》が、敵の軍勢へと突っ込んだ。


 元々、骸装機(カーケス)の飛行性能は《ワイバーン》を始めとした量産機を凌駕している。

 アウロは置いていかれないよう、ペダルを踏ん張り、再度アフターバーナーを噴かせて僚機を追尾した。

 眼前では、同じくルシウスの《グリンガレット》が、エンジンから炎を噴きながら敵編隊に突撃をかけている。


『ブラスト3、交戦開始!』

「ブラスト4、交戦開始」


 アウロはハーネスを握りしめたまま、右肩のガントレットを操り、ガンランスの砲口を正面の敵へと向けた。


 バイザーに表示されているのは《ワイバーン》とよく似た、しかしやや小柄でひ弱な印象を受ける機体だ。

 恐らく、これは《ワイバーン》の制式化以前に用いられていた機竜、《ファイアドレイク》だろう。

 アウロはその予測進路めがけて、ガンランスをぶっ放した。


 ――ダァン!


 乾いた砲音が戦場に響き渡る。

 アウロだけではない。他の友軍機、そして、敵機も立て続けにガンランスから砲弾を発射していた。

 アウロはその中で、自身の放った弾丸が敵に直撃するのを見た。赤い火球が騎乗者であるアーマーの右肩に突き刺さったのだ。


 たちまち派手な爆発が起き、搭乗者のガントレットが右肩から吹き飛んだ。

 更にバランスを崩してよろめいた機体は、他の騎士団員の追撃を受けてしまう。

 そうして一瞬で三、四発近い魔導弾の直撃を食らった敵機は、空中でろうそくのように燃え上がると、真っ逆さまにひっくり返ったまま地面に落ちてしまった。


「……撃墜確認」


 ごうごうと音を立てる風の中、アウロはただ機械的に呟いた。


 搭乗者が脱出した様子はない。恐らく、あれに乗っていた人間は即死しただろう。

 視界の端では、他にも二機の《ファイアドレイク》が赤い炎の塊になって墜落していた。

 反面、機甲竜騎士団の損害はゼロだ。敵は編隊の先頭にいた《ラムレイ》を狙ったようだが、ナーシアは十数発にも及ぶ魔導弾を全て回避していた。


 どうやら、あの悪趣味な装甲には敵の射線を集める効果があったらしい。

 だが、例え骸装機カーケスを用いたとしても、複数の魔導弾を避け切るのは至難の業だ。

 性格はともかく、ナーシアの腕前は本物である。アウロもそれは認めざるを得なかった。


『よしっ、食らわせてやったぜ! ポンコツどもめ!』

『こちらの被害はなし! 敵は三機が墜落した模様!』

『このまま一気に押し切ってやりましょう!』


 通信機の間を歓喜の声が交差する。


 しかし、アウロは内心で首を傾げていた。

 先ほど一瞬の間に交錯しただけだが――敵機の数が、ほんの十数機しかいないように見えたのだ。

 それも全て、一世代前の機竜(ファイアドレイク)である。養成所から強奪されたはずの《ワイバーン》が見当たらない。


「妙です、ナーシア殿。敵の数が少なすぎます」

『そうだな。本部の報告では、三十以上の敵がいるという話だったが……』

『っ――兄さん!』


 そこで、ふいにルシウスが声を上げた。


 《グリンガレット》に跨るルシウスは空を見上げていた。

 つられてアウロも頭上を仰ぐ。上空を覆っているのは、のっぺりとした灰色の乱層雲だ。

 そして、その僅かな切れ目の向こうから、なにやらキラキラと輝く物体が見え隠れしていた。


『いかん! 上だ!』


 ナーシアは慌てて叫んだ。


 直後、分厚い雲を抜けて十数機の《ワイバーン》が急降下攻撃を仕掛けてくる。

 雨あられと魔導弾が撃ちかけられ、たちどころに後方にいた騎士団の機体が燃え上がった。

 更にガンランスの穂先を揃えた敵編隊は、位置エネルギーを武器にランスチャージを敢行した。

 狙われたのは背後の小隊だ。通信機越しに僚機の断末魔と、装甲が破壊される鈍い音が響き渡った。


『グッ……だ、団長!』

『が、ガスト小隊! 三番機と四番機がやられました!』

『クソ! こっちもです! ストーム小隊、二番機、四番機が撃墜されました!』


 この不意討ちを受け、四機の機甲竜騎士(ドラグーン)が犠牲となった。

 たった数秒で、編隊の四分の一が撃墜された計算だ。ナーシアは激怒の声を漏らした。


『おのれ! ガスト小隊とストーム小隊は生き残ったもので編隊を組み直せ! これ以上、奴らの好きにさせるな!』

了解ラジャー!』


 間髪入れず反撃に転じた騎士団のドラグーンだが、既に敵の《ワイバーン》編隊は急上昇し、分厚い乱層雲の上へと逃れてしまっている。


(……やられたな)


 アウロは為す術なく、逃げていく敵編隊を見送った。


 思えば、最初から敵は編隊を二つに分けていたのだろう。

 一方は《ファイアドレイク》を中心とした、いわば囮としての部隊。

 本命は《ワイバーン》によって構成された攻撃用の部隊である。こちらは高度を上げ、雲の上に隠れていたのだ。


『ええい、アクスフォードの連中め! 猪口才な真似を!』

「どうします、ナーシア殿。あの上にいる連中、そのままにしておくと厄介ですが」

『分かっている! エドガー! ルシウス! ギネヴィウス! それにゲイル小隊は私に付いて来い! 他の者は《ファイアドレイク》を牽制しろ!』

了解ラジャー!』


 ナーシアの号令を受け、十二の機竜がそれぞれ八機と四機に別れて敵を追尾する。


 アウロはハーネスを引き、僚機と共に雲の中へと突っ込んだ。

 たちまち、吹きつける雨と氷の粒が装甲の上で激しい騒音をかき鳴らす。

 だが、それも僅かな間だった。数秒もしない内に目の前が一気に明るくなり、青々と澄み渡る空が視界いっぱいに広がる。


 現在の高度は14000フィート。

 上昇によって加速を失ってしまったため、速度は100ノット以下まで落ち込んでいる。


 さて、とアウロは素早く左右に視線をやった。

 まだ敵の《ワイバーン》はこの近くにいるはずだ。

 果たして、目的の編隊はすぐに見つかった。こちらから見て右手の方角に、陽光を受けて輝く十数個の物体がある。


「団長、三時の方角に敵編隊を確認」

『よし……旋回して奴らに攻撃を仕掛ける。後は各自の判断で格闘戦ドッグファイトに移れ』

『でも兄さん、敵の数が多い状態でこっちから突っ込むのは危険過ぎないかな?』

『分かってるさ。だから、今から少し数を減らしてやる』


 言って、ナーシアはおもむろに右腕甲に携えていた武器を構えた。


 《ラムレイ》は他の機竜と違い、ガンランスを装備していなかった。

 もっとも、これは指揮官機にとって別段珍しいことではない。

 他の兵士に対して指示を出す立場の人間が、リスクの高いランスチャージを行うことなどほとんどないからだ。


 よって、《ラムレイ》のメインウェポンはバズーカタイプの魔導砲となっている。

 竜の炎嚢からもたらされる炎を圧縮・収束し、灼熱の閃光として放つ兵器――

 その名も、〝ファイアブレス〟3.6インチ重対機甲砲ヘビーアーマーピアッシングキャノン

 現在、ログレス王国が保有するものの中では、最大級の威力を誇るドラグーン用射撃兵装である。


『さぁ、受けるがいい! 火竜の息吹よりもなお熱く! なお赤い! 《ラムレイ》の爆炎を!』


 芝居がかった口上と共に、〝ファイアブレス〟のトリガーが引かれる。

 即座に薄暗い砲口に炎が収束し、やがて、それは一筋の熱線となって虚空を切り裂いた。

 大気を焦がす紅炎。バチバチと不気味な音がアウロの耳に届く。しかし、それも一瞬のことだ。


 〝ファイアブレス〟の熱線は瞬き一つの間に1マイル近い距離を駆け抜けると、鋭い錐のように敵編隊の土手っ腹を貫いた。

 と同時に、不運な機体が炎に飲み込まれる。アウロは自らの視界の中で、小規模な爆発が二つ発生したのを見た。


『ク……二機落ちて残りは十二機か。いいじゃないか。実にいい。これで多少は私好みの数になった』


 ナーシアはうっとり呟きながら砲口を下げた。

 熱線放射時の発熱によるものだろう。漆黒の砲身からは、おびただしい量の水蒸気が吹き上がっている。


『す、すごい。この距離で相手に命中させるなんて』


 驚きの声を漏らすルシウスだが、アウロの見立ては違った。


 ナーシアの一撃は狙いをつけて放たれた訳ではない。

 間違いなく、ただの当てずっぽうだ。敵機もせいぜい熱線にかすった程度だろう。

 恐ろしいのはそれでなお、二機の機竜を撃破するだけの威力をあの〝ファイアブレス〟が秘めているということである。


(マッハに近い弾速。1マイル以上の射程。そして、かすっただけでアダマントの装甲を溶解させる破壊力……)


 これで連射機能まであったらお手上げだが、幸いこの手の兵器は冷却時間を置かないと、砲身がバカになってしまうのが常である。


『さて諸君、今の隙だ。相手は不意の一撃で混乱している。速やかに喉笛を掻き切り、トドメを刺してやりたまえ』

了解ラジャー!』


 追従していたゲイル小隊の各機がすかさず前へと飛び出る。

 それに応えるかの如く、四機の《ワイバーン》が敵編隊から分離した。

 しかし、この間に残る八機はまっすぐアウロたちの元へと直進してくる。


「ナーシア殿、相手は《ラムレイ》を先に封じ込めるつもりのようです」

『妥当な判断だな。先ほどのあれを見て、私に脅威を抱かぬ方がおかしい』


 ナーシアはそこで機体を左に傾けた。その背後にくっついたエドガー機も、左方向へと旋回していく。


『ルシウス、私は雑魚どもを焼き払ってくる。半分は任せた。落とす必要はないぞ。時間を稼ぐだけでいい』

『分かりました。なら、時間稼ぎの間にできるだけ数を減らしておきましょう』

『……ギネヴィウス、一度死にかけた貴様なら戦場の恐ろしさが分かるだろう。この新兵ニュービーが無茶をしないように見張っていろ』

了解ラジャー


 アウロは右腕でハーネスを引いた。既にルシウスの《グリンガレット》は右旋回を開始している。


 首を巡らせれば、残った敵編隊は四対四の形で散開していた。

 恐らく、それぞれ別個の小隊なのだろう。一方はナーシアの分隊へ、もう一方はこちらへと大きく弧を描きながら向かってくる。

 先頭の一機が身に纏ったマントには、カーキ色の生地の上から白いラインが引かれていた。小隊長の証だ。


「ルシウス、敵機の数はこちらの二倍だ。普通に戦っても落とすのは厳しいだろう」

『うん。なにか上手いやり方が必要だな』

「俺に作戦がある。《ホーネット》が囮になるから、お前はその隙に奴らを撃墜してくれ。《グリンガレット》の火力なら、そう難しいことではないはずだ」

『……分かった。でも、大丈夫なのかい? 相手は四機いるんだぜ?』

「問題ない。二ヶ月前に予行練習を終えている」

『そういえばそうだったな』


 ルシウスは軽く苦笑をこぼした後で、機体を減速させ、アウロの隣に並んだ。


「……さて」


 複数の機竜に追い回される展開なら、ルシウスとの決闘で既に体験している。

 ただ模擬弾を用いていたあの時とは違い、敵の騎銃槍ガンランスに装填されているのはれっきとした実弾だ。

 当たりどころが悪ければ即死である。アウロはじわりと手の平に汗が滲むのを感じた。


 慌てる必要はない、と心の中で念じる。

 模擬弾だろうが実弾だろうが、当たらなければどちらも同じだ。


 アウロは目を閉じ、一度深呼吸をした。

 敵との相対距離は5000フィート。

 3000フィートを切れば、ガンランスの有効射程圏内に入る――


 が、敵機はその前にいち早く魔導弾をぶっ放してきた。

 別に牽制という訳でもないだろう。狙いは滅茶苦茶だし、砲弾の威力が減衰して、まともにこちらまで届いていない。


 アウロはかすかに口の端をつり上げ、呟いた。


「緊張しているのはあちらも同じか」


 ガントレットを操り、敵機へと砲口を向ける。


 右旋回しながら敵編隊に迫るアウロたちに対し、同じように相手も機体を傾け、右側から回り込みつつあった。

 丁度、お互いに相手の正面を陣取るような形だ。ディスプレイに映る敵の姿が、ぐんぐん大きくなってくる。


(ここだ!)


 アウロは相対距離が3000フィートを切った所で、ガンランスのトリガーを引いた。

 すぐさま灼熱の魔導弾が射出され、赤い閃光が敵編隊の鼻先をかすめる。

 次いで、火を噴いたのは《グリンガレット》の〝ブラスターキャノン〟3.5インチ白炎収束式対機甲砲である。


 こちらはナーシアの〝ファイアブレス〟と、ほぼ同じ原理を持った魔導兵装だ。

 〝ファイアブレス〟に比べると威力が低い代わりに連射性能が高く、エネルギー効率も優れている。

 銀の砲身から放たれた白炎は、矢のように宙を駆けると先頭の少隊長機に直撃した。ぱっと閃光が弾け、弾丸を受け止めたシールドがガントレットごともぎ取られる。


『惜しい! 盾だ!』

「なら、トドメはこちらで刺させて貰おうか」


 アウロはガンランスの穂先を傷ついた敵機へと向けた。


 相手は着弾の衝撃でふらついている。おまけに盾を失ってしまったため、左側面はがら空きだ。これでは鴨と言うより他にない。

 アウロはアフターバーナーを噴かせると、敵機の胴体めがけてランスチャージをかけた。

 相手は慌てて回避運動に移ろうとしたものの、時既に遅く、アウロの突き出したランスに左翼を半ばから叩き折られてしまった。


『こいつ、翼をっ……ぐ、くそぉっ!』


 通信機越しに敵パイロットの悔しげな叫び声が響く。

 バランスを失った敵機はきりもみ回転しながら墜落すると、そのまま眼下に広がる乱層雲の中へと飲み込まれてしまった。


「撃墜確認」

『やった! あと三機だ!』


 喜びの声を上げるルシウス。

 アウロはバイザーに表示された速度を横目で確認した。


 ランスチャージを行ったことによって、《ホーネット》の速度は80ノット付近まで落ち込んでいる。

 前を行く《グリンガレット》の姿がみるみる小さくなり、逆に、反転した敵編隊との距離は詰まりつつあった。


「ルシウス、これで敵は《ホーネット》を狙ってくるだろう。お前は先行して、敵部隊の後ろに回り込んでくれ」

了解ラジャー! 死ぬなよ、アウロ!』

「そっちこそな」


 言って、アウロは左腕でハーネスを引いた。


 同時に、三機の《ワイバーン》も左旋回を行なって《ホーネット》に追撃をかけてくる。

 逆方向に旋回をした《グリンガレット》には見向きもしない。ひとまず、こちらから先に落とすつもりなのだろう。

 まずは敵の弱い方を叩く。作戦としては正しい。正しいが――


(……この《ホーネット》を舐めて貰っては困る)


 アウロは心の中で呟いた。


 無謀なランスチャージを行い、速度を落とし、狩られるだけとなった獲物。

 恐らく、相手はこちらに対してそのような認識を抱いているはずだ。

 アウロの仕事はそんな彼らの間違いを訂正することだ。

 本当の狩人がどちらかということを、連中の身に刻み込んでやる。


「ついてきてくれよ、《ホーネット》!」


 アウロは叫び、左足でペダルを踏み込んだ。


 ぐらりと真横に傾いた機体は、緩やかに旋回しながら低空へと降下した。

 当然、相手もこちらを追撃してくる。先頭にいた分隊長機がガンランスのトリガーを引き、次いで、その背後に控えていた敵機が穂先を並べて突撃を開始した。

 

 二連槍突撃ダブルチャージと呼ばれる相互連携戦術だ。

 ランスチャージを二人がかりで繰り出すだけの単純な空戦機動(マニューバ)だが、連続で襲い掛かってくる槍を避けるのは至難の業である。


 ――だが、この《ホーネット》ならば!


 アウロは手綱を緩め、更に機体を降下させた。

 絨毯のように広がる乱層雲の上を飛翔しながら、小刻みに手綱を操って旋回運動を続ける。

 敵編隊の内、先鋒を務めていた一機はその動きに惑わされ、見当違いの方角へと突撃をかけてしまった。続く二機目は《ホーネット》の動きを補足したものの、寸前でひらりと穂先をかわされてしまう。


『くっ、外した!』

『うざったい動きをしおって! 蚊トンボが!』


 通信機越しに敵兵の罵声が響く。


 だが、相手の攻撃はこれで終わりではない。

 後方に控えていた三機目の《ワイバーン》は、ランスチャージが外れたタイミングを見計らって、立て続けに三発の魔導弾をぶっ放した。

 アウロはこの内の二発を回避し、最後の一発を盾で受け止めた。眼前で砕け散った弾丸が炎を撒き散らすも、機体自体に損傷はない。


『外した!? ……いや、防がれたか!』

『こいつ、よく見れば新型ですよ!』

『ほお、できるではないか!』


 攻撃を避けられた相手は、旋回しながら三機編隊を組み直し、再び《ホーネット》へと向き合おうとしていた。


 対するアウロはアーマー内で深々と息をこぼした。

 紙一重だったものの、敵のファーストアタックはどうにかいなすことができた。

 元々、《ホーネット》の運動性は《ワイバーン》を凌駕している。例え速度が落ちた状態でも、逃げ回るだけならそう難しくはない。


(とはいえ、流石に何度も来られると苦しいが……)


 アウロはちらりと虚空に視線を向けた。

 敵の編隊は再び左側面から《ホーネット》へ攻撃をかけようとしている。

 しかし、その背後からは既に橙色の装甲をきらめかせた《グリンガレット》が、獰猛な猟犬のように肉薄しかけていた。


『ン……いけない! 七時の方角にもう一機います!』

『さっきのオレンジ野郎だ! 各機散開しろ!』


 すぐさま防御機動を取る敵機だが、《ワイバーン》の足で圧倒的スピードを誇る骸装機カーケスから逃れることはできなかった。


 直後、後方にいた敵機の胴部を白い光が貫いた。

 《グリンガレット》の構えた〝ブラスターキャノン〟が火を噴いたのだ。

 機体中枢を貫いた炎は燃料タンクに引火すると、たちまち敵機を巨大な火の玉へと変えてしまった。


『わぁぁぁっ――!』


 断末魔の声と共に、《ワイバーン》は搭乗者ごと爆発四散する。


 それを見て、アウロは敵編隊へと機首を向けた。

 編隊といっても既に残る敵は二機だけだ。突如現れた《グリンガレット》に対応し切れず、雲上を逃げ惑っている。

 アウロはその内、先頭にいた一機の正面を塞いだ。丁度、ルシウスと挟撃をかける形だ。


『ちっ、邪魔だ! そこをどけぇ!』


 急旋回しながら魔導砲を連射する《ワイバーン》。

 だが、アウロは迫る砲弾をシールドでさばくと、逆にガンランスの照準を敵機へと合わせた。


 ――ドッ!


 重低音の砲声と共に、狙い違わず《ワイバーン》の機首が打ち砕かれる。

 首なしとなった機竜はバランスを崩し、眼下に広がる乱層雲の中に飲み込まれてしまった。

 脱出ベイルアウトすれば、搭乗者の命だけは助かるだろう。が、あれではどのみち戦線復帰できまい。


「……撃墜確認」


 アウロが呟いている間に、最後の一機も《グリンガレット》の白炎収束砲に翼を射抜かれ、真っ逆さまになって地上へと墜落していった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ