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ブリタニア竜騎譚  作者: 丸い石
二章:斧の反乱
25/107

2-7

 アウロが見る夢は主に三つのパターンに分けられる。


 一つ目は願望、自らが統一されたアルビオンの王として君臨している夢だ。

 二つ目は苦痛、際限のない痛みの中で延々とのた打ち回り続けている夢だ。

 三つ目は郷愁、ケルノウンの田舎町で母と共に過ごした日々の夢だ。


 アウロの母、ステラ・ギネヴィウスは白銀の髪を持つ美しい女性だった。

 ログレス公王ウォルテリスはそんな彼女を見初め、自らの王宮に招いて妾とした。アウロが生まれたのも丁度この頃だ。

 しかしその後、姦通の疑いをかけられたステラは息子共々、他の貴族たちから激しい誹謗中傷を受けることとなる。

 最終的にステラは精神を病んだ。そして、鬱病に侵された彼女は療養を口実に、アウロを連れて王宮から逃げるように去った。


 それでも、王は愛妾のために1000エーカーの温暖な別荘地を用意した。

 現在、アウロが治めている領地は元々、母に与えられたものである。

 このケルノウンで過ごした時期が、彼にとって最も幸せな時間だったかもしれない。

 アウロは自身と母、そして執事のロウエルの三人で暮らしながら、そこそこ平和で楽しい毎日を過ごした。


 ステラが死んだのはアウロが十二になった直後のことだ。

 精神の病が肉体へも影響を及ぼし、当時のステラは寝たきりになっていた。

 彼女の頬は痩せこけ、肌は青白く変わり、目からは生気が失われていた。

 そこに、王の寵愛を一身に受けたという女の面影は欠片もなかった。


 ある日、ステラは枕元に息子を呼んでこう言った。


「アウロ、私が死んでも他の誰かを恨まないで下さい。時に憎しみが人を衝き動かす原動力となることもあるでしょう。しかし、その果てにあるのは破滅だけです。怒りに身を任せてはいけません。いいですね?」


 母の言葉に幼いアウロは頷いた。

 その翌朝、ステラは眠るようにして息を引き取った。


 彼女の葬儀は密やかに行われ、近隣の住人たちが数多く参列した。

 アウロが人前で涙を流したのはあの時が最後だ。

 そして、アウロは母の棺に横たわった遺体が地に埋められた後、その墓前に一つの誓いを残した。


 母の仇討ちをすること、ではない。

 私生児と蔑まれた自分が、アルビオン島の統一を成し遂げることを、だ。


 かつてのアウロは信じていた。

 もし自分が英雄と呼ばれるような存在となれば、母の名誉も回復されるだろうということを。

 だからこそ、彼は目指したのだ。古の英雄、アルトリウス王の覇業を。ひどく幼く、個人的な理由で。




 以降、彼は十六になるまで騎士としての訓練を受けた後、カムロートの機甲竜騎士養成所に入り、機竜乗り(ドラグナー)としての修練を積むこととなる。

 その頃になると、彼はもうほとんど夢らしい夢を見なくなっていた。


 だから今日この日、まどろみの中で出会った母の姿はひどく懐かしかった。

 彼女は生前の、最も美しい姿のままでアウロの前に佇んでいた。

 その顔はどこか寂しげだ。彼女は泣き笑いのような表情のまま、自らの息子を見つめていた。


「母上……」


 アウロは懐かしさを感じて呼びかける。

 彼女との距離は遠い。近づこうにも足はまるで動かない。


 ――いや、正確には動こうと思えば動ける。


 だが、アウロには分かっていた。

 自分はまだそちらに行ってはいけないのだ。


「母上……申し訳ありません」


 アウロはどこか皮肉っぽい笑みを浮かべた。


「今でも、あなたのことは敬愛しています。けれど、俺にはやるべきことがある」


 アウロは静かに、感情を押し殺したような声で告げた。


 怒りでもなく。憎悪でもなく。

 腐り切った王国を立て直し、アルビオンを統一するという野望。

 それこそが、今のアウロを衝き動かす原動力だ。


 確かに、最初の動機は母の名誉を回復することだったかもしれない。

 だが、今は違う。少なくとも、母に対する思いが全てではない。

 祖国への愛国心、過去の英雄に向ける敬意、そして、アウロ自身の野心――

 それら全てが複雑に絡み合って、アウロ・ギネヴィウスという男を形成している。


「だから、母上……あなたの側にはいられない」


 告げて、アウロは自らの郷愁に背を向けた。


 肩越しに、母がどんな表情を浮かべているのかは分からない。

 悲しんでいるのかもしれないし、呆然としているのかもしれない。


 いや、それでもあのステラ・ギネヴィウスならば。


 こんな時は必ず笑って、アウロを送り出してくれたはずだ。


「アウロ――」


 刹那、アウロは自らを呼ぶ声を聞いた。

 母のものではない。その声は正面から響いている。

 アウロは誘われるかのように前へと歩き出した。


 やがて、歩き続けている内にふと視界が広がる。


 夢が醒め、また現実が始まるのだ。







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 アウロは意識を覚醒させると同時に、強烈な喉の渇きを感じた。


「う……」


 体がだるい。上半身を起こそうとしても、全身の筋肉に力が入らない。

 周囲は暗闇に包まれ、半開きになった木窓から青白い光が注いでいる。

 どうやら、今は深夜のようだ。アウロはシャツにズボンという格好のまま、宿舎のベッドに横たわっていた。


(夜……? まさか、あれから丸一日経ったのか?)


 アウロはうめき声を漏らしつつ、どうにか右肘を支えに起き上がった。

 と、そこでシーツの上に乗っかっている赤い頭髪に気付く。

 視線を横に向ければ、ベッドサイドに膝をついたカムリが、マットレスに顔を埋めたまま寝息を立てていた。


「む……ぐぅ……う……」


 悪い夢でも見ているのか、ひどく息苦しそうな表情を浮かべている。

 アウロはおもむろに手を伸ばすと、その鼻先を人差し指でぴんと弾いた。

 たちまち、カムリは「ふにゃあ!」と尾を踏んづけられた猫のような声を漏らして、勢い良く地面から立ち上がった。


「て、敵襲か! くそっ、また野蛮なサクス人どもが来たのか!」


 寝不足らしく、血走った目で周囲を見回したカムリは、そこではたと動きを止めた。

 真っ赤に揺れる瞳には、ベッドから体を起こしたアウロの姿が映っている。


「あ、主殿……?」


 呆然とした様子で呟くカムリ。

 アウロはなにか答えようとしたものの、からからに乾いた喉では声を出すことができない。

 結果、二人の間に奇妙な沈黙が流れた。カムリの目に浮かんだ涙が頬を伝い、雫となって滴り落ちた。


「う……あ……主殿、ほ、本当に……」


 ぼろぼろと涙を流しながら、カムリはよろめくように身を乗り出すと、アウロの首根っこに抱きついた。

 憔悴したアウロにそれを受け止める力はなく、二人は揃ってベッドの上に倒れこんでしまう。


「うっ、うう……良かった。本当に良かったよ……。主殿、全然起きないからもう二度と……二度と目を覚まさないんじゃないかって……」


 切れ切れの台詞と共に、カムリはぎゅっと腕に力を込めた。

 血を失い、冷たくなった体には少女の肌がひどく温かく感じる。

 アウロはカムリの肩を叩いた。が、彼女はそれに気付いた様子もなくアウロの胸に頬をこすりつけた。


「本物だ。本物のアウロだ。ちゃんとここにいる……」


 感触を確かめるように、主の体を抱きしめる少女。

 結局、アウロはカムリを振りほどくことを諦めた。

 青白い顔のまま、ぼんやりと天井を見上げる。一体、あれからどれだけの時間が経ったのだろうか。


(……そういえば)


 アウロはふと己の右肩に目を向けた。


 あの時、自分はダグラス・キャスパリーグの剣で肩を貫かれたはずだ。

 だが、今は完全に傷が塞がっている。カムリが治してくれたに違いない。

 代わりに、怪我をしていない右腕に包帯が巻かれていた。これは王紋を隠すためのものだろう。


「主殿……そういえば、怪我は大丈夫? もうどこも痛くない?」


 おずおずと聞いてくるカムリに、アウロは口を開いて答えようとした。

 が、乾き切った喉は思うように動かず、逆にげほげほと咳き込んでしまう。

 カムリは慌ててベッドから離れると、デスクの脇に置いてあったピッチャーを手に取り、コップに水を注いでアウロの元へと持ってきた。


「はい、どうぞ。ゆっくり飲んでね」

「ん……」


 アウロは苦労して身を起こすと、一息にコップの中の水をあおった。


 それからアウロは水差しの水を三度コップに分け、体中に染み渡らせた。

 しばらくすると思考が晴れ、体のだるさも多少はマシになってくる。

 やがて、アウロは三杯目の水を飲み干したところで尋ねた。


「カムリ、あれから何日が経った?」

「三日だよ。主殿、三日間もずっと起きないから……」


 そこで再び、じわりとまなじりに涙を滲ませるカムリ。

 アウロは無言のまま、少女の頭にぽんと手をやった


「すまなかった」

「あ、謝らないでよ。わらわが間に合わなかったのが悪いんだし」

「それより事の顛末について聞きたい。詳しいことを教えてくれるか?」

「うん。でも、主殿お腹空かない? わらわがなにか作ってきてあげようか?」

「……作れるのか?」


 カムリは「勿論!」と胸を張り、


「ちょっと待っててね! すぐ用意してくるから!」


 と、止める間もなく室内を後にしてしまう。


 残されたアウロは、力尽きたようにベッドへと転がった。

 相変わらず体が重い。まるで全身が鉛に変わったかのようだ。

 カムリの回復術も、流れ出た血を元に戻してくれる訳ではないらしい。

 恐らく、自分はかなり危うい場所をさまよっていたのだ。一歩足を踏み外せば、死の断崖に転落していてもおかしくなかった。


(しかし、カムリの奴。宿舎の中を歩き回ってて大丈夫なのか……?)


 床を見れば金属製のタライと、水につけられたタオルが置かれていた。

 カムリがここで自身の看病をしてくれていたのは間違いない。

 ただ、気になるのは宿舎内で彼女の扱いがどうなっているのかということだ。

 特にカムリとルシウスは面識がある。とても誤魔化し切れるとは思えないが……


「おまたせ!」


 そんなことを考えている内に、カムリが外から戻ってくる。


 彼女は両手に陶製の皿を抱えたまま、片足で器用に扉を閉めた。

 深皿の中に入っているのは湯気を立てたポリッジだ。ひき臼で挽かれた燕麦に羊の乳を加えて、柔らかく煮込んだ麦粥の一種である。

 本来は北部アルバニー王国の人間が朝食として食べる代物だが、ログレス王国内でも別に珍しいものではない。


「このレシピ、ここにある食堂のおかみさんから習ったんだよ。体の弱ってる人には丁度いいって」

「養成所の? カムリ、お前ここではどういう扱いになってるんだ?」

「アウロお抱えの治療師。今は宿舎にある用務員用の部屋を借りて、食堂とかも使わせて貰ってるんだ」

「……ルシウスとは顔を合わせたか?」

「ううん。普段はフードを被ってるしね。ちゃんと顔を見せたのはシドっちと、ちょっと前に白い仔羊亭で会ったロゼって人。それから、アルヴィン、カーシー、チャールズ、ブライアンだけだよ」


 後半の四人は開発科の訓練生である。シドカムと同じ《ホーネット》の開発チームに所属している面々で、キャスパリーグ隊が養成所に襲撃をかけた時もハンガー内にいたはずだ。


「ま、とりあえずご飯にしようよ。主殿だって腹すいてるでしょ?」


 カムリはベッドの脇に腰を降ろすと、膝の上に深皿を乗せた。

 そして、木の匙ですくった麦粥をアウロの方へと差し出し、


「はい、どうぞ」

「……ちょっと待て。生まれたての雛鳥じゃないんだ。自分一人で食える」

「む、死体みたいな顔色してる癖になに言ってるのさ。主殿、自分が三日間寝込んでたってこと忘れてない?」

「覚えているさ。だがな――」

「つべこべ言わない。病人は大人しくしてなさい! これ以上、抵抗するようなら無理やり口をこじ開けちゃうぞ!」

「……分かったよ」


 いつになく強気なカムリに、アウロはなすすべもなく降参した。

 たちまちカムリはぱっと笑顔になると、匙ですくった麦粥に「ふーっ」と息をふきかけ、


「はいっ、あーん」

「………………………………」


 にこにこ顔で差し出された匙を前に、アウロはしばし沈黙する。

 戦略的撤退は不可能。既に退路は断たれている。後はもう、覚悟を決めて前へ進むしかない。

 アウロは長い躊躇の時間の後で、湯気を立てた麦粥をぱくりと口にした。


 途端、口の中に心地よい甘みが広がる。

 元々、空腹だったためだろう。羊乳でとろとろに煮こまれたポリッジは、滑るように胃の中へと消えてしまった。


「主殿、味はどう?」

「……おいしいよ。でも、少し甘いな。砂糖が入ってるのか?」

「蜂蜜だよ。昨日、シドっちから貰ったんだ。アウロが起きたら食べさせてやって欲しいって」


 現在、ログレス王国において蜂蜜はかなりの貴重品だ。

 国外からの輸入された蜂蜜は、主に貴族や豪商の間で甘味料として扱われている。

 もし庶民が手を延ばすことがあったとしたら、それはちょっとした贅沢か、もしくは薬品としての効用を求めてのことだ。栄養価の高い蜂蜜には、病を癒す力があると信じられていた。


「後でシドカムに礼を言っておかなくっちゃな」

「そうだね。シドっちには色々助けられたし」

「あの後、お前はハンガーに来たのか? ダグラス・キャスパリーグはどうなった?」

「いま説明するよ。まずこっちを片付けるのが先だけどね」


 言って、カムリは再び麦粥をすくった。






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 それから、アウロは「はいっ、あーん」を十数回ほど繰り返して食事を終えた。

 腹がいっぱいになると眠くなるのは、人間の習性のようなものだ。

 しかし、アウロは襲い来る眠気に耐えた。今は一刻も早く事態を把握しておかなくてはならない。


「えっと、それじゃあどこから話そうか」

「俺が意識を失った後のことを聞かせて欲しい。ライフルで頭を撃たれたような気がしたが……お前が助けてくれたのか?」

「ギリギリだったけどね。わらわは外にいた黒いの――《グレムリン》を倒した後、ハンガーの中にいたもう一機も撃破したんだよ」

「どうやって?」

「魔法を使ったんだ。ドラゴンの持ってる魔力は人間より遥かに高い。あれくらいのアーマーだったら一発で倒せるよ。まぁ、外にいたすばしっこいのは倒すまで時間がかかっちゃったんだけど」


 カムリは自分自身の不甲斐なさに肩を落とした。


 それから、彼女は自身がアーマー越しにアウロの怪我の応急処置をしたこと。

 《ワイバーン》が全機飛行場から離陸した後で、ダグラスと魔術師の二人がハンガーから撤退したことをアウロに語って聞かせた。


 《センチュリオン》の中で気絶したアウロを助けだしたのは、メカニックであるシドカムだったらしい。

 彼は外部から人造筋肉繊維ファイバーサルコメアをアーマーに接続し、パイロットを強制排出イジェクトしたのだ。

 その後、アウロはカムリの手当を受けて一命を取り留めた。

 教官たちがハンガーへやって来たのは直後のことだ。


 この時、カムリは一度ハンガーから脱出し、敢えて外からやって来たかのように見せかけたのだという。

 そうして治療師という名目で、アウロの看護を買って出たのだ。やり口としてはかなり強引である。


「よくもそんな無茶がまかり通ったな」

「んー、シドっちとロゼが味方になってくれたからね。それに他の人たちも機竜が強奪されてすっかりパニックになってたし」

「俺の右腕は誰かに見られたか?」

「それは大丈夫。真っ先に包帯を巻いて、その後の手当も全部わらわがやったから」


 その言葉にアウロは安堵した。


 彼の右腕に刻まれた竜の紋章は、正統な王位継承者としての証だ。

 いずれ時が来れば、他の人間に見せることもあるだろう。が、今これを明らかにするのは得策ではない。


「お前が撃破した《グレムリン》の扱いはどうなったんだ?」

「ハンガー内にいたのはシドっちたちと口裏を合わせて、主殿が倒したことにしといたよ。こう、相手の武器を奪って撃ち殺したんだって理由付けてね」

「外にいた一機は?」

「キャスパリーグ隊に回収されてた。多分、連中の側に魔術師がいたから、魔術でどっかに移したか隠したかしたんだと思うけど――」


 カムリはそこでちょっと眉を寄せた。


「……ごめん。結局、ダグラスとエルフの魔術師は取り逃しちゃったよ。《ワイバーン》も全部奪われちゃったし」

「仕方あるまい。だが、機甲竜騎士団ロイヤルエアナイツの部隊は出なかったのか?」

「追跡に出た人たちは途中で撃墜されちゃったらしいよ。わらわも詳しいことは知らないんだけど」


 「ただ」とカムリは言葉を続け、


「あのネコミミ男、ちょっと気になることを言ってたんだよね。『我々は今、政府を打倒するための力を必要としている』だとか、『今のログレス王国は腐り切っている。我らはその膿を取り除くのだ』とか」

「まさか……連中め、モーンの反乱をやり直すつもりか」

「どうだろう。でも、革命を起こすつもりはないらしいよ」

「賊の言うことなど信用できないさ。だが、一つだけ言えることがある」

「っていうと?」


 首を傾げるカムリに、アウロは自分の考えを述べた。


「恐らく、連中の標的は養成所そのものじゃない。戦力として機竜が欲しかったから《ワイバーン》を強奪したんだ」

「そうだろうね。今までの義賊ぶったやり方とは随分違うけど」

「連中はもう、義賊の皮を被るつもりなんてないんだろう。今のキャスパリーグ隊は放たれた矢だ。目標を仕留めるか、途中でへし折られない限り止まらない」

「うーん。でも、あいつら機竜を使ってどこを襲うつもりなのかな」


 カムリは難しそうに眉を寄せている。

 しかし、アウロはもうおおまかな見当がついていた。


 そもそも、彼らは最初から四機の《グレムリン》を保有していた。

 更にエルフの魔術師サンバイルと、人間離れした戦闘力を持つダグラス・キャスパリーグの存在もある。

 これだけの戦力があれば、大半の拠点は奇襲で制圧できるはず。

 つまり、キャスパリーグ隊の狙いは最低でも、この竜騎士養成所以上の警備網がある場所ということになる。


(それに、カムリが聞いたというダグラス自身の発言――)


 彼らの狙いは間違いなく、政治の中枢で亜人迫害を推し進めている貴族たちを排除することだろう。

 となれば、考えられる攻撃目標は一つしかない。


「奴らの狙いは王城か」


 窓の外から差し込み始めた朝日を見ながら、アウロはぼそりと呟いた。

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