4-34
モンマス奪還の翌日、アウロは負傷したルシウスの元を訪ねていた。
空戦の最中、自ら機体を不時着させたルシウスは乗機である《グリンガレット》ともども、解放されたばかりのモンマスに収容されていた。
つい先日まで敵地だった場所とはいえ、この地に住まう人々は元々アルカーシャ――ひいては同盟軍に対して好意的だ。都市の内部に残っていた王国軍の残党も、山猫部隊ら諜報部隊の活躍によって掃討が進んでいる。
ルシウスが担ぎ込まれたのは街の中枢部に位置する領主の館だった。
モンマスには他にガルバリオンが建築した城もあったのだが、こちらは都市を巡る攻防戦で損壊し、現在は廃墟のまま打ち捨てられている。
「ルシウス、具合はどうだ?」
「悪くないよ。別に大した怪我じゃないんだし、本当はこうしてベッドに横になってる必要もないんだけど」
窓際のベッドに腰掛けたルシウスは、自嘲するかのように笑った。
その右足には添え木が当てられ、上から麻の包帯が巻かれている。不時着時の衝撃によって骨が折れてしまったのだ。
とはいえ、それ以外に怪我らしい怪我は負っていない。中破した機体で胴体着陸を強行した割には元気そうだった。
「すまないな。他に方法がなかったとはいえ、無茶な真似をさせてしまって」
「や、君が謝るのは筋違いさ。元はといえば僕の不甲斐なさが原因なんだ。それに君はナーシア兄さんを倒した訳だし、その……」
早口でそうまくしたてたルシウスだが、途中でなにを言うべきか迷ったのか口ごもってしまう。
どうも様子がおかしい。が、それも当然だとアウロは思った。
今回の戦闘は決して一筋縄で行くものではなかった。陸攻型機竜の近接航空支援が成功したおかげで、作戦目標であるモンマスの奪還こそ成し遂げたものの、戦場の舞台裏では多くの人間が命を喪っている。ルシウスはその一因が自分にあると思っているようだった。
「……アウロ、みんなの調子はどうだい?」
長い沈黙の後、ようやく口をついて出たのはそんな質問だ。
アウロは部屋の片隅に置かれていたスツールに腰掛けた。
今のルシウスは思春期の少女並みに不安定だ。あまり刺激的な発言はできない。
「みんな、というのが何を指しているのかよく分からないけどな。モンマスの制圧は順調に進んでいるよ。こちらにアルカーシャがいるおかげだろう。民衆の反発は全くと言っていいほどない」
「軍の被害は?」
「陸はリカルド殿やランドルフ卿のおかげで、ほとんど戦力が損耗していない。問題は空だ。先の戦いで航空隊に六名の死者が出た。重傷者はその倍だ。一度、この地に留まって部隊を再編する必要がある」
「……クリスの容態は?」
「今はルキが付きっきりで見ている。ここ二、三日が峠だそうだ」
「そうか」とルシウスは肩を落とした。
同盟軍は今回の作戦でガーランド家の重臣、ジュトーを喪っていた。
また氷竜伯と交戦したブランドル家の騎士たちは、その多くが戦死したか重傷を負って寝込んでいる。
更にはランドルフ家の令嬢、クリスティアまでもがジェラードの救援に駆けつけた際、氷弾の直撃を受けて撃墜され、右手右足を欠損する大怪我を受けていた。ルキの治療術によって一命を取り留めたものの、今もって予断を許さない状態である。
「くそ……なんて情けない。僕の力不足のせいでみんなにまで迷惑をかけてしまうなんて」
「あまり気に病むな。今回の作戦を立てたのは俺とカーシェンだ。お前に責はない」
「下手な慰めはよしてくれ。僕がナーシア兄さんに負けて足を引っ張ってしまったのは事実だし、軍の大将が責任を取らないでどうする」
「責任を取るのと責任を抱え込むのとでは意味が違う。ナーシアに負け――いや、追い詰められたのだって、《グリンガレット》と《ヘングロイン》の性能差を考えれば仕方がない」
「……違うんだよ、アウロ」
「なに?」
「僕は一度、兄さんの背を捉えたんだ。でも、一瞬トリガーを引くのが遅れてしまった。肉親の情に引きずられた、って言ってしまえばそれまでだけど、僕がナーシア兄さんに勝っていれば君が動く必要もなかったはずなんだ。そうさ。君がいればジュトー殿は死ななかっただろうし、クリスだって――」
「おい、ルシウス。待て。落ち着け」
アウロは思わず席から腰を浮かし、堰を切ったように喋り続けるルシウスの肩を掴んだ。
青年はびくりと身を震わせ、動きを止めた。陰鬱な顔を俯かせる姿は、母親に叱り飛ばされた子供そっくりだ。
「……すまない、アウロ」
「謝るな。お前はよくやってる」
「でも、君ほどじゃない」
ルシウスは短く告げると、ふいにアウロの右腕を掴んだ。
「そういえば、前から聞きたいことがあったんだよ」
「なんだ?」
「以前、君は養成所でダグラスに襲われた時に大怪我を負っただろう? そしてそれ以降、ずっと右腕に包帯を巻き続けてる。今だってそうだ」
「それは……」
「いくら鈍感な僕でも、一年以上同じ傷跡が残ってるってのは変だって気付くさ。いや、本当は最初から傷なんてなかったんだろ? 君はただ、その下にあるものを隠したかっただけなんだ。違うか?」
一転して、糾弾するような台詞を吐くルシウス。
だが、その表情は相変わらず崩れそうなくらい弱々しい。泣き出すのを必死に我慢しているようにも見える。
アウロは思わず、自らの右袖を掴む手を一瞥した。
青白い肌だ。骨の浮かんだ甲には竜の形をした痣が刻まれている。
王紋。竜公家の王権象徴具。赤き竜の血を引く者の証。
そして、二人の立場を明確に分け隔てていた最大の要因――
「お前はその答えを聞いてどうするつもりなんだ」
「否定しない……ってことはやっぱり、君の体には」
「確かに王紋がある。といっても、知ったのはつい最近だ。俺が生まれてすぐ、母ステラとウォルテリスは我が子の体から王紋を焼き払ったらしい。私生児の烙印を押すことで、モグホースの手から息子を守ろうとしたんだ」
「そんなことが――」
「だが、これはお前には関係のない話だ。俺は自分の出生を詳らかにするつもりはない。臣下の幾人かには伝えてあるし、ジェラードあたりはとうに気付いているだろうが、今更お前の立場を脅かそうとは思わん」
「ちっ、違うよ! 僕が言いたいのはそういうことじゃない!」
ルシウスは慌ててベッドから立ち上がろうとした。
が、治療を施したとはいえその右足は折れたばかりだ。
案の定、中腰になった途端にバランスを崩してしまう。アウロは前のめりに倒れかけた青年の体を素早く抱き支えた。
「馬鹿、なにをやっている。怪我人は大人しく座っていろ」
弟の両肩に手を乗せ、言い諭すアウロ。
しかし、ルシウスは逆に乾いた笑みをこぼした。
「ふ……はは、なんてざまだ。僕は君に助けられてばかりだな」
「ルシウス?」
「この前の戦いでナーシア兄さんに言われたんだ。お前は王の器じゃないって。でもね、僕はそう言われた時、悔しくも悲しくもなかったんだ。だって自分が王様に相応しくないなんてこと、とうの昔に知ってたから」
「やめろ。今のお前は自暴自棄になっている。もう休め」
「違う。違うんだ。僕はずっと前から思ってたんだよ。同盟の盟主って立場も、この国の王も、とても自分には務まらないって」
「それでも」とルシウスは下唇を噛み締め、
「一度は頑張ろうと思ったんだ。ただ、やっぱり駄目だった。アウロ、僕は同盟の盟主を降りるよ。じゃないとまた多くの人が死ぬことになる」
「寝ぼけたことを言うのはよせ。一度の失敗でへこたれてどうする。今の諸侯同盟はお前が頂点にいるからこそ、一つに纏まっているんだぞ」
「僕だからじゃない。元々、王族だったら誰でも良かったんだ。一番手頃な人間が僕だっただけでね。単なる消去法さ」
「……本気で言っているのか?」
アウロは思わず愕然としてしまった。
確かに。確かに、だ。
ルシウスが同盟軍の盟主という重責を任せられたのは、彼自身の能力に寄るところではない。重要視されたのはその血統と家柄だ。
また王族の中でも末席に位置し、王政から遠ざけられていたからこそ、リカルド・ブランドルも彼を頂点に据えることを決意したのだろう。
つまりは体のいいお飾りである。少なくとも、最初はそうだった。
――しかし、今はどうだろうか?
アウロが幾つもの戦場で功を上げている一方、ルシウスも着実に実績を積み重ねていた。
ブリストル海峡における空戦では十機もの機甲竜騎士を撃墜しているし、その後のペンドラコンウッドの戦いでも十分な戦果を収めている。
モンマスの決戦ではナーシアに敗れ、機体を中破させられたものの、アウロが辿り着くまで《ヘングロイン》の猛攻を凌ぎ切ったのだ。いずれも単なる凡愚にできるようなことではない。
「腑抜けるのもいい加減にしろよ、ルシウス。お前は人の上に立つ人間が完全無欠でないと気がすまないのか?」
「そんなこと――」
「昔の俺はな、お前のことが大嫌いだったよ。世間知らずのお坊ちゃんの癖に、才能だけは有り余っている。その上、こちらの立場を推し量ろうともしないで好意の押し売りをしてくるんだ。いっそ俺に対して悪意があるんじゃないかと思っていたくらいさ」
「…………」
「だが、それはあくまで昔の話だ。今の俺はお前を友と思っている。何故だか分かるか?」
「わ、分からないよ」
ルシウスは回答を拒むかのように目を逸らした。
が、安易な逃げを許すアウロではない。青年の両肩を掴んだ腕に力を込める。
ミシミシと骨が軋み、ルシウスは秀眉を歪めた。明らかな怯えの反応。アウロはそれを無視して言葉を続けた。
「お前は――お前自身の言う通り、意志薄弱で決断力に欠ける部分がある。そんなことは俺とて百も承知だ」
「だったらどうして……」
「その欠点を上回るだけの長所があるからさ。自らの血統を鼻にかけない謙虚さ。常に全力で物事に取り組む誠実さ。そして、他人の心を思いやることのできる優しさ。これらはナーシアやガーグラー、マルゴンにはないお前だけの才覚だ。俺がお前を友と呼ぶ最大の理由だ」
「そう言ってくれるのは嬉しいよ。でも」
「でも、なんだ?」
尋ね返すアウロの前で、ルシウスはしばし躊躇うかのように沈黙した。
やがて十数秒の間を置いた後で、青年は顔を上げ、決然と言った。
「アウロ、僕は君が同盟の盟主をやるべきだと思う」
「………………は?」
完全なる死角からの攻撃。
不意をつかれたアウロは、つい間抜けな声を漏らしてしまった。
「お前はなにを言っているんだ? どうして俺が盟主をやるなんて話が出てくる。いくらなんでも論理が飛躍しすぎだ」
「そんなことないよ。これも前々から思ってたんだ。盟主にしろ王にしろ、僕より君の方が上手くやれるって」
「冗談はよせ。悪趣味にもほどがあるぞ。私生児である俺がトップに立てば、それだけで反発する人間が相次ぐだろう」
「でも、君の体には王紋がある。他のみんなからも信頼されてる。必要な材料は揃ってるんだ。後は僕が指揮権を譲るって公言すれば――」
「ふざけるな。お前は同盟を破綻させるつもりか」
「頭ごなしに否定しないでくれよ。少し冷静に考えてみてくれ」
「冷静さを失っているのはお前の方だよ、ルシウス」
アウロは苛立ち混じりに吐き捨てた。
ルシウスが精神的に追い詰められていることは分かっていたつもりだ。
が、それで行き着く答えが自分に盟主を任せるというのだから理解に苦しむ。
アウロは自分とルシウスの間に、そう能力的な差異はないと思っていた。
機竜乗りとしての腕前は同等。戦果の面で差がついているのも、どちらかと言えば機甲竜側の性能によるものだ。
むしろ、カリスマ性という点で見ればルシウスの方が優れている。彼の清廉潔白な人柄は黙っていても周囲に伝わるほどだ。
結局、ルシウスの発言は安易な逃げに過ぎない。
兄に叩きのめされ、自信を失っているだけだ。つまりは単なる一時の衝動。
アウロは己の中でそう結論付けた。
「なぁ、アウロ。僕は――」
「分かった。お前の提案もきちんと考慮しよう。だが、どちらにせよ俺が今すぐ盟主の座に就くというのは現実的じゃない。なんの脈絡もなく軍の旗頭が変われば、下の人間は混乱する。王都を前に隙を晒すのは避けたい」
「それは、そうかもしれないけど」
「だからこの話はまた今度だ。カムロートを陥落させ、戦況が落ち着いてから正式に話し合いの場を設けよう。その時はジェラードやアルカーシャに同席してもらうのも悪くない。なにしろ同盟軍全体に関わることだからな」
アウロは半ば強引に話を打ち切ると、ルシウスをベッドの上へと座らせた。
「とりあえず今は休め。きちんと体を治すんだ。その間にもう一度、なにが正しい選択なのか考えてみるといい」
「……分かったよ。けど、一つだけ聞かせてくれないか」
「なんだ?」
「君自身に、この国の王になりたいって野心はあるのか?」
今まで以上に硬い声で尋ねるルシウス。
アウロは即座に答えた。「ない」
「俺は最初から王になりたいとは思っていない。俺の目的は別にある」
「アルビオンの統一、だよね」
「知っていたか」
「前にジェラードから聞いたんだ。でも君の野望を叶えるなら、君自身がこの国の王になるのが一番の近道じゃないのか?」
「必要あればそうするさ。……今までは必要ないと思っていたんだがな」
付け加えられた台詞は、明らかに感情任せの嫌味だった。
結局、アウロはその一言を最後に喧嘩別れのような形で部屋を辞してしまった。
肩で風を切り、館の長い廊下を歩く。石畳の上でコツコツと足音が鳴る。冷えた空気が頬を撫でる――
それでも、アウロの中で燃えたぎる炎は全く鎮まる気配がなかった。彼は心底頭にきていた。激情を抑え切れず、つい煉瓦造りの壁に拳を打ちつけてしまう。
「ふざけやがって……!」
アウロは自らを自制心の強い人間だと思っている。
それでも、睾丸の欠落したような腑抜けに付き合い続けるほどおおらかではない。
ルシウスに軟弱な部分があるのは知っていた。が、一度の失敗でへこたれるとは予想外だ。
幾度となく挫折を経験しているアウロからすれば、彼の態度は甘えに他ならない。怪我人でなければ頬を張っ倒していただろう。
――駄目だ。いくらなんでも頭に血が上り過ぎている。少し落ち着こう。
叩きつけた拳を見れば、皮が剥がれて真っ赤な液体が滲んでいた。
指先から広がる痛み。アウロは深々とため息をついた。
(この国の玉座だと? ルシウスめ、俺がその可能性を考えなかったとでも)
自らがログレスの王となり、レグリアの異民族を撃滅し、アルビオンの統一を成し遂げる。そして、アルトリウス王時代の繁栄を取り戻す。
それが幼い頃のアウロ・ギネヴィウスが見た夢だった。
まだ世間を知らぬ少年が、ただ純粋に追い求めた理想だ。
夢と現実は違う。アウロがそう理解したのは十五の頃だった。
力も、実績も、後ろ盾も、王族の証明も、なに一つない私生児。
そんな半端者が辿り着けるほど、玉座というのは単純ではない。
越えられない現実の壁にアウロは打ちのめされ、敗北し、膝をついた。
当時味わった絶望は今も苦い思い出として残っている。
だというのに、その一度諦めたはずの夢が再び目の前にぶら下がっているのだ。
見方を変えればこれは好機だ。ルシウスを屈伏させ、自らが玉座を奪い、覇業を成し遂げる。ルシウス本人もそれを望んでいるのだから、問題などないはずではないか。
――だというのに、
おかしな話だ。
ルシウスが盟主の座を譲ると宣言した時、アウロは微塵も喜びを感じなかった。
今でもそうだ。驚き、怒りこそしたものの嬉しいとは思わない。
それだけ期待していたということだろう。ドラク・ルシウスの治世に。彼と共に歩む未来に。
だが、
『平和な時代ならいい王になったかもしれない。けどね、わらわが目覚めたということは、近い将来この国が戦争に巻き込まれるってことでもあるんだ。今必要なのは戦に勝てる強い王なのさ』
ふいに、
『しかし、殿下はお人好し過ぎるきらいがある。もうちょっとこの国が落ち着いてたのなら、間違いなく賢良方正の王として評価されただろうさ。ただ、今は乱世だ。優しいだけじゃ君主は務まらない』
幾人かの台詞が、
『ドラク・ルシウスはこの時代において王の器ではないのです。その身に余る大願を注ごうとすれば、やがては器そのものが壊れてしまいます。それはあの方にとっても、その周囲の人間にとっても不幸でしかない』
脳裏に蘇った。
ルシウスの自己評価はあながち的外れという訳ではない。
優しいだけの王にこの国を任せるのは間違いだ。その事実を、アウロは多くの人間から指摘されていながら今の今まで無視していた。
けれど、もう限界なのかもしれない。他ならぬルシウス自身が指導者の重責に押し潰されようとしている。歪みが露呈してしまった以上、綻びが訪れるのは自明の理だ。
「考える時が来ているのかもしれないな……」
アウロは呟き、重い足取りでその場を後にした。
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聖暦八一一年、七月上旬。
モンマス攻略に成功した同盟軍は王都カムロートの喉元まで軍を進めた。
都市を巡る攻防戦で王国軍の地上部隊は瓦解。また、空では機甲竜騎士団が壊滅し、団長であるドラク・ナーシアも討ち取られた。
この時点で、国内の貴族の多くは新王マルゴンを見限っていた。王国に味方するのは宰相モグホースの一派のみ。他は同盟に与するか、戦に巻き込まれるのを嫌って中立を装うかのどちらかだ。
一方、同盟は一連の戦いで少なくない被害を出したものの、悲願であるモンマス奪還を成し遂げ、兵員、軍備、士気ともに充溢していた。
盟主ルシウスを筆頭に、その右腕と見なされている【ケルノウンの私生児】アウロ・ギネヴィウス。そして、四侯爵を筆頭とする諸侯が協調し、盤石の体制を敷いているのだ。
端から見れば、それは綻び一つない鉄の城であった。連戦連勝を続け勢いに乗る同盟軍に対し、王国はもはや瀕死の病人と化していた。
――だが、
モンマス制圧の数日後、王国に一つの変化がもたらされる。
再三の救援要請に応える形で、王弟ドラク・ガーグラーが王国軍の総大将を引き受けたのだ。
それはすなわち、彼の率いる軍勢までもが王国に加担したことを意味していた。
異民族との絶え間ない紛争で鍛え上げられた精兵五千。及び四人の辺境伯を中核とする東部方面軍――
戦争は更なる混迷の局面を迎えようとしていた。
ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
四章:双竜戦争(前編)はここでおしまいです。
次章:双竜戦争(後編)の掲載までしばしお待ちください。




