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二振りの剣と星の航跡 〜次元を越え、時を超える少年の物語〜  作者: @SsRay
少年編

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ep7.未来都市 千年前の記憶2

 ミラは、セキュリティ登録のスキャンが終わると、即座にバリアの設計図をモニターで見せてもらい、画面に夢中になっている。


「これでよし。シリウス、ミラ、そしてそっちの剣客。お主ら三人は、この施設の全セキュリティにおいて『最優先保護対象』として登録された。もう二度とガーディアンが牙を剥くことはない、未来でも攻撃されることはないだろう」


 アーサー博士が満足げに端末を叩くと、施設を包む光が柔らかく明滅した。だが、博士の表情はすぐに曇る。


「……だが、お主たちの話が真実なら、未来は変わらねばならん。この星の声を無視したツケが、その廃墟なのだ。星の力を、科学という傲慢ごうまんで歪めてはならんのじゃ。わしも、その『原因』が眠る深部へ連れてってくれないかのぉ、詳しく調べたいのじゃ」


「いいですよ、行きましょう。未来へ、この施設の入り口付近にゲートがあります」


◇◇◇◇


 一行は再びゲートに飛び込んだ。目を開けた先は、再びの夜。


「確かに、随分と時がたっているようじゃのぉ……メインコンピュータルームへいればいいんじゃが……」


「わかった、前に倒したロボットで恐らくこの施設の動くロボットは全部だろう、さっさと行こう」


「うん」シリウスがうなずいた。


 一行は1000年後の廃墟の施設の奥へと足を踏み入れた。


『警告。未登録の生体反応を検知。排除対象:アーサー、および同行者』


 博士の叫びも虚しく、奥の闇から赤い電子音が響く。1000年の月日が、プログラムを狂わせたのか、あるいは何者かが書き換えたのか。


「なっ、私自身が排除対象だと!? それに、皆の登録は済ませたはずだ」


「来るぞッ!」


「待て! なぜだ!? 私の顔認証が、この施設のセキュリティマスターが認識されないだと!? 過去未来の顔を予想し、認証できる優れものなんじゃがのぉ」


 アーサー博士の叫びが、厳重にロックされた巨大な扉の前で虚しく響いた。1000年後の未来で、自身の存在すら否定されるこの状況に、博士は蒼白な顔で立ち尽くす。


その時、地鳴りのような重低音が響き渡り、格納庫の最奥から巨大な影がヌッと現れた。


「来るぞ! 今までのとはレベルが違う!」


師匠が即座に愛剣を抜き放ち、臨戦態勢を取る。

そこに姿を現したのは、全長数十メートルはあろうかという、漆黒の謎の巨大ロボットだった。その全身は禍々しい紋様で覆われ、紅い単眼が冷酷に一行を捉える。


「あんなものをわしが作ったのか!?」


「ここは俺が!」


シリウスは即座に判断し、一歩前へ踏み出した。


「無茶だシリウス! あんなもの、一人で相手にするなんて!」


 師匠が叫ぶが、シリウスの目は既に巨大ロボットを見据えていた。


「俺は、俺の役目を果たす! ミラ、博士を頼む!」


 シリウスの胸のペンダントが、熱を帯びて激しく脈動する。光が収束し、手に『星の剣』が顕現けんげんした。その蒼い輝きは、漆黒の巨躯キョクを前にしても怯むことなく、むしろ挑戦的にきらめいている。


「はあああぁぁッ!!」


シリウスは雄叫びと共に、巨大ロボット目掛けて一直線に駆け出した。相対するは、星の剣を構えた一人の少年と、星をも砕かんばかりの破壊力を秘めた漆黒の巨人。


「くそっ、次から次へと……!」


師匠の目の前には、小型から中型までの自律兵器が波のように押し寄せていた。数十、いや数百はいるだろうか。すべてが師匠とミラを排除すべく、殺到してくる。


「博士それに、ミラ、俺から離れるな! 絶対にだ! シリウス悪いがそっちにすぐに行けそうにない」


 師匠は、双剣で怒涛の斬撃を繰り出す。流れるような動きで数体を切り伏せるが、その隙を突いて別の数体が側面からミラに迫る。


「危ない!」


 師匠は即座に身を翻し、ミラを庇うように剣を振るう。金属の装甲が砕け散るが、師匠の肩にはわずかながら衝撃が伝わった。


「くっ……っ!」


「ロボットのバリアは順番に解除していくわ!」


「ミラ!」


 ミラは、シリウスの相手にしている巨大ロボの足元のに、アンチバリアの球を科学銃で打ち込む。そして、自身の周りには、範囲型のアンチバリア爆弾を順に投げていく。


 粘着弾が敵の足を絡め取り、電気弾が動きを鈍らせる。時には、小型の爆弾で複数の敵を吹き飛ばし、師匠への負担を軽減させた。


「やるなミラ! その調子だ!」


 師匠はミラの援護を受けながら、さらに集中して剣を振るう。


だが、敵の数は一向に減る気配がない。まるで無限湧きするかのように、次から次へと現れる。


――ガキンッ!


 師匠の剣が、一体の自律兵器の鎌を辛うじて受け止める。その衝撃で、わずかに体勢が崩れた。


(まずい! このままではジリ貧だ……! いつまで持つのやら……!)


師匠は汗を流しながら、ミラを背後に庇い続ける。彼の背中は、決して破られぬ壁のように、ミラの前に立ちはだかっていた。


「くそっ、何体倒しても次から次へと……! まるで底なしの沼だな! そろそろ、シリウスの元へ行ってやりたいが……」


 師匠の叫びが、激しい金属音の中に響き渡った。

愛剣の刃は既に数えきれないほどの火花を散らし、返り血ならぬオイルを浴びて鈍く光っている。師匠は博士とミラを背中に庇いながら、円を描くような足捌きで敵の波を押し留めていた。


「師匠、囲まれるわ!」


 ミラの科学銃が火を噴き、迫りくる中型機のセンサーを打ち抜く。だが、敵の物量は絶望的だった。師匠はミラを守るために一歩も引けず、その守備範囲を維持するだけで体力を削り取られていく。


(シリウス……あっちも地獄だろうが、こっちも限界が近いぞ……!)


 師匠が奥歯を噛み締めたその時だった。

格納庫の天井を支えていた巨大な支柱に、敵の放った極太のレーザーが直撃する。


――ゴゴゴゴゴッ……ガシャアアアアン!!


 凄まじい轟音と共に、崩落した壁と天井の瓦礫が、師匠とミラの間に容赦なく降り注いだ。


「しまっ……! ミラ!!」


師匠の叫びも虚しく、爆風と分厚い埃のカーテンが二人を分断する。


 視界はゼロ。鼻を突くコンクリートの粉塵と、ショートした配線から飛び散る火花。


「ミラ! 返事をしろ、ミラ!!」


 師匠は周囲に群がる雑魚どもを、半ば狂乱気味に斬り伏せながら、瓦礫の山へと駆け寄ろうとする。その時だった。


 もうもうと立ち込める灰色の埃の向こう側から、ドォォォォォン……という、重く、腹に響くような衝撃音が響いた。


 立ち込める粉塵の奥で、「紅い光」が溢れ出す。

漆黒の粉塵の中からその光りは、瞬く間に膨れ上がり、周囲の埃を熱量で焼き払っていく。


「……」


 埃の中、そこには、無傷で立つ赤いオーラを放つミラの姿があった。


 彼女の瞳は深紅に染まり、その華奢な体からは、空間を歪ませるほどの圧倒的な圧力が立ち昇っている。以前、この力が目覚めた時はすぐに気を失ってしまったようだったが、今は違う。胸元のペンダントがシリウスの放つ蒼い光と共鳴し、彼女の意識を現世に繋ぎ止めていた。


「ミラ! お前、意識はあるのか!?」


 師匠の問いに、ミラは鋭い視線のまま短く答える。


「……大丈夫。……力が溢れてくる、今ならなんでも出来そう」


「ふっ、頼もしいな!」


師匠の言葉が終わるより早く、ミラが動いた。

武器である科学銃を腕のリングへとしまい、素手で敵の真っ只中へと突っ込む。迫りくる中型ロボットの重装甲に対し、ミラは容赦のない拳を叩き込んだ。


――ガッシャアアアアン!!


一撃。


 たった一撃で、数トンはある鋼鉄の塊が内側から弾け飛び、粉々に粉砕される。


「はあああッ!」


 次は回し蹴り。空気を切り裂く脚がロボットの胴体を捉えると、それはもはやスクラップにすらならず、ただの金属片となって周囲に飛び散った。


「すげえな……。おい、俺の仕事がなくなるぞ!」


 師匠も負けじと双剣を振るう。二人の連携により、あれほど絶望的だった雑魚ロボットの大群が、見る間に瓦礫の山へと変えられていった。


一方、その背後ではシリウスが死闘を繰り広げていた。


「おおおおおッ!!」


シリウスの手には、蒼く輝く『星の剣』と、長年使い込んだ『銅の剣』。


二刀流。


漆黒の巨大ロボットが振り下ろす巨大な鉄拳を、シリウスは紙一重で回避し、その腕に星の剣で鋭い一閃を刻む。


「軽い……。星の剣が、俺の動きを先導してるみたいだ!」


星の剣から放たれる蒼い光の粒子が、シリウスの身体能力を極限まで引き上げていた。銅の剣で敵の注意を引きつけ、本命の星の剣で装甲の隙間を切り裂く。


「あっちでミラも戦ってるんだ……。俺が、ここで負けるわけにいかないんだよ!」


 漆黒の巨人が咆哮のような駆動音を上げ、全身のハッチを開放する。そこから放たれる無数のミサイル。

シリウスは二本の剣を交差し、蒼い魔力を一気に解放した。


「――連星破・流星雨!!」


 放たれた斬撃の波がミサイルを空中で叩き落とし、爆炎の中をシリウスが突き進む。


 戦場は今、蒼と紅の光、そして師匠の白銀の剣閃によって、支配されようとしていた。

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