ep6.未来都市 千年前の記憶1
黄金の光に飲み込まれ、視界が白く染まる。次に目を開けたとき、鼻腔を突いたのは廃墟の埃っぽさではなく、どこか甘く清潔な、人工的な空気の匂いだった。
「……っ、また夜か」
シリウスが思わず声を上げた。見上げる空は、先ほどと同じ深い群青色。しかし、決定的な違いがあった。
「シリウス、見て! 街が……街が『歌ってる』!」
ミラの叫んだ通り、そこは光の洪水だった。天を突く摩天楼は、廃墟の時のような鈍い光ではなく、血管のように走るエネルギーラインが脈動し、宝石を散りばめたように輝いている。空中を静かに滑る乗り物の列が、光の帯となって夜空を彩っていた。
「これが……千年前の姿か」
師匠も、愛剣の柄に手をかけたまま圧倒されたように呟く。だが、その感動は不意に響いた警報音によって打ち消された。
『警告。未登録の生体反応を検知。防衛プロトコル、フェーズ1に移行します』
「えっ、何!?」
地面からせり出してきたのは、先ほどの廃墟で戦ったものより一回り小さく、しかし洗練された装甲を持つ四脚のガーディアンだった。その数は三体。
「またこれかよ! ミラ、下がってろ!」
シリウスが『銅の剣』を引き抜く。だが、ガーディアンの動きは廃墟の個体とは比べ物にならないほど速い。
「ほう……一人一体ってところか、前のやつよりは弱そうだな」
師匠が腕組みをして呟く。その言葉に、シリウスはゴクリと唾を飲んだ。
「待っててシリウス! 今、バリアを無効化するわ!」
ミラが腕のリングから、複雑な文様が刻まれた『アンチバリア爆弾』を素早く取り出し、ガーディアンの足元へ投げつけた。
――パリンッ!
ガラスが割れるような音と共に、ガーディアンを包んでいた光の壁が霧散する。
「今よ!」
「くっ……!」
シリウスは腰の『銅の剣』一本を抜き放つ。まだ二本の剣を同時に操る自信はない。だが、この一本に全てを込められれば……!
ガーディアンが、金属の脚を軋ませて突進してくる。その巨体から放たれる威圧感は、シリウスの足を一瞬すくませた。
「はああぁぁッ!!」
シリウスは、恐怖を振り払うように叫び、一気に間合いを詰める。
狙うは、一体。
流れるような『袈裟斬り』、続く『横薙ぎ』、そして『突き』。
三ヶ月間、血のにじむような特訓で体に叩き込んだ基本の型を、迷いなく繰り出す。
ガーディアンの装甲は、そのたびに火花を散らし、鈍い音を立てる。しかし、決定的なダメージには至らない。
「なんだ!?」
その時、シリウスの『銅の剣』が、突如として鮮やかな青い光を放ち始めた。それは、まるで彼の内なる魔力が、剣を通して溢れ出したかのようだった。
「いくぞ……っ!」
シリウスは腰の銅の剣一本を抜き放った。三ヶ月間叩き込まれた基本の九つの型。一振りの剣に全てを乗せ、無我夢中で繋いでいく。
一撃、二撃……八撃目で敵の強烈なカウンターを間一髪で弾き飛ばし、最大出力の九撃目を振り下ろす! その瞬間、シリウスの視界が青く染まった。
「――連星破・流星!!」
シリウスが剣を振り抜いた直後、遅れて走った鮮烈な青い斬撃が空気を切り裂き、ガーディアンの胴体を捉えた。ギギィッ! という金属の悲鳴と共に、分厚い装甲が文字通り真っ二つに割れ、左右に崩れ落ちる。
「……はぁ、はぁ……。な、なんだ!? さっきの青い光は……!?」
自分の放った一撃の威力に、シリウスは剣を握ったまま硬直した。初めて出すスキル。名前をつけた覚えなんてないのに、九つの型を繋いだ瞬間に、その名が確かな感触と共に口をついて出たのだ。
「こっちも負けてられないわ!」
ミラが科学銃を構え、残る一体に狙いを定めた。まずは粘着弾で足関節を封じて動きを止め、すぐさま電気的なエネルギー弾を連射! 青白い火花が機体を包み、ガーディアンを完全に沈黙させた。
「ふぅ……。あれ、師匠は?」
シリウスが振り返ると、そこには既に切り裂かれ、光の粒子となって消えゆく最後の一体と、平然と剣を収める師匠の姿があった。
「……すごすぎる。全然見えなかった」
「フッ、お前も今のは悪くなかったぞ。初めてにしちゃ上出来だ」
師匠はいつの間にか、――双星破ツイン・ブレイクで瞬時に敵を片付けていたのだ。
シリウスが呆然としていると、建物の奥から白衣の老人が慌てて駆け寄ってきた。
「待て! 破壊はやめてくれ! すまない、本来は申請したものしか通さない作りなのだ。ガーディアンの調整不足で、君たちを排除対象と誤認してしまった……」
「やめてくれって……」
「すまないな、なにせ、前にもあったもんだからなぁ」
師匠が頭を片手で押さえながらやれやれと謝る。
ミラが、粉砕はしてない残っているから大丈夫と言わんばかりに身動きしない機能停止したガーディアンを指差す。
博士が、その現状を見てガクッと肩を落とした。一体は粉砕させ跡形もない、流石、師匠だ。一体は真っ二つに、そして、一体はバリアを破壊され起動不能なまで電撃を受け、機能停止し、謎の粘着物が足を固め取れることはない。
ミラがオリジナルの粘着弾の解除弾を科学銃から即座に発射し、粘着力を失い、ガーディアンが地面に落ちた。
「わしは、アーサーじゃ、この施設の創設者じゃ、ここで会話するより、丁度ご飯時じゃ、食事をしながら話を聞かせてもらおう、こっちじゃ、さっきのガーディアンは、施設の中のコールドスリープした人間を守るためのロボットじゃ、まだ開発途中での。中にはおらんから安心せい」
アーサー博士と名乗った老人は、一行を施設へと招き入れた。
博士が用意してくれた食事は、これまで食べたどんな料理よりも豪華だった。
「アーサー博士、この施設は何年後位にコールドスリープから目覚めるんですか?」
ミラが口を挟む
「それより、バリアの設計図が見たいわ」
「質問は順番にな! アーサー博士すまないな、なにせ、先ほどこの施設の1000年後のなれの果てを見てきたものだからな、コイツらは、早く疑問を解決したくてウズウズしているんだ、単刀直入に言うと、俺たちは未来から来た」
「ほう、この施設は、この星のエネルギーを使ってコールドスリープしながら、人々か再び住める未来へと時を超えるための施設じゃ、前にもあったと言っておったが、未来のガーディアンにでも襲われたのかの?」
「はい、そうです。誰もいない廃墟の入り口で、巨大なガーディアンに襲われ、1000年後の未来では人独り生存できないような廃墟の状態でした、装置の中に人はいましたが電源は切れ、かすかに外の一部の機関が動いているだけの状態でした」
合成肉のステーキを頬張りながら、シリウスは博士に「千年後の失敗した未来」を伝えた。
「……やはり、そうか。星の力を科学で殺してしまった報いなのだな。温暖化、か。我々は便利さを求めすぎた。星の力を科学で殺し、自然のバランスを壊してしまったのだ、だからこそ再び再生する時まで眠りにつき、星の力が戻るまでの間、生命維持装置のみ、星の力で生き残る計画じゃ、生命維持装置は既に出来ておるのじゃが、守るためのガーディアンだけはしっかりと作らないといけなくてのぉ、研究を進めているところじゃ、しかし、敵味方の判断がこの星の登録者にしたのが不味かったようじゃ、未来からか、よし、おまえさんがたを登録しようかの。こっちじゃ」
そういうと、博士は施設のコンピュータールームに案内してくれた。迷路のような通路を抜けながら、シリウスは変わりゆく運命の予感に胸を高鳴らせる。三人の足音は、静まり返った施設内に、希望の鼓動のように響き渡っていた。




